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4-04 金平糖があった


 ホブ・ゴブリンのお婆さん達は、現在大広間の東に作った通常の4倍ほどの部屋を拠点にしている。

 将来的には、部屋から4方向に回廊が延びていくのだが、現在は大広間に向かう回廊は土砂で封鎖している。現在は南に向かって掘り進み、末端部に部屋を作っている最中らしい。


「昨夜はおもしろかったのう。久しぶりで【メル】を放ったが、まだまだ使えそうじゃ」

「はあ、あまりご無理はしないでくださいよ。それにしても転移魔法が使えるとは驚きました」

「土砂を捨てるにしても、纏めるにしても便利じゃからのう」


 驚くことは無かろうと言ってくれたんだが、キューブの力に頼らないんだよな。


「まさかスケルトンをダンジョンの外から回廊に突入させるとは思いませんでした」

「一番使える方法じゃったぞ。砦の内側に一気に送り込むのは、我等の得意とするところじゃったな」


 3人で顔を見合わせながら、ニヒヒヒと笑っている。今の姿からは想像もできないような過激なお婆さん達だようだ。

 クリスがよく遊びに来るんだけど、教育上はどうなんだろうかと悩んでしまうな。


「子供達も結構うまく立ち回ってくれたよ。お前さん方で何か褒美を渡してくれるとありがたいのう」


 俺が持ってきたワインを美味しそうに飲んでいるから、お菓子を持って来ればいいのかな?


「あいつらが持っていた武器や防具は宝箱で良いのかな?」

「それでお願いします。直ぐにやって来るかどうかは分かりませんが、また別な場所に置いといてください」


 ちょっとした宝探しゲームというところだな。お婆さん達も、宝箱をどこに置くか話し合うのを楽しみにしてるんじゃないか?

 そんな話をしたところで、クリスと一緒に管理室に戻ることにした。


「新たにやって来たスケルトンさん達を大広間に配置すると言ってたよ」

「その上、100体ほどのスライムを指揮系統から一時外してくれと言ってたよね。ダンジョン内の通路を徘徊させるつもりのようだ」


「残った150体で、上手く冒険者達とやり合えるのかな?」

「人間族と長く戦った経験を生かすんだろうね。次もお婆さん達の作戦を良く見ておくんだよ。それと、終わった後で疑問があったなら、お婆さん達に聞けば詳しく解説してくれるはずだ」


 自分達の知的な立ち位置をくすぐるようなものだから、親切に教えてくれるだろう。

 ゴブリン達は食欲以外に興味を示さないようだからね。


 冒険者達がダンジョンを去って3日過ぎたところで、村に行ってみることにした。

 いつも通りクリスはお留守番だけど、お婆さん達の昔話を聞きに行くと言っていたから、寂しくはないだろう。

 

「狩りの獲物があるし、山賊の装備も持ってきたにゃ」

「高く売れたら良いんだけどねぇ」


 にこにこ顔のミーナさんが、ともすれば俺の先になって歩いていく。今回は鹿が2頭だと言ってたから、雑貨屋で色々と買い込む気だな。

 村を半周するように、南の門から村に入ると、先ずは鍛冶屋へと向かう。


「こんにちは!」

 元気な声で扉を開けると、奥から返事が返って来た。


「なんだ、お前達か。猟師なんだからあまり冒険者の縄張りを荒らさんようにしとけよ。それで?」

「これなんです。ダンジョンで見つけたものですが、冒険者が持つ物ではありませんよね」


 バッグから袋を取り出して中身をカウンターに並べると、鍛冶屋の爺さんが1つずつ武器の状態を確かめ始めた。


「持ってる者もいるだろうが、かなり使い込まれてるなぁ。打ち直さずとも、研いでそのまま売りに出せそうだ」

「俺達は獣相手ですから、今の装備でじゅうぶんです。いくらいただけますか?」


「片手剣が3本に短剣が2本、それと斧だから……、銀貨24枚でどうだ? そうそう、忘れるところだった。去年買った装備だが、あれは余り鍛え直さずに売れたんじゃった。お前さん達には、魔族の錆びた武具の買取値を渡したから、その差額も必要じゃな。銀貨5枚を上乗せするぞ」


 思わずミーナさんと顔を見合わせてしまった。それなら3か月ほどの食事ができるぞ。まだ、ダンジョンにはあったはずだから、ほとぼりが冷めたころに再び売りに出してみるか。


 鍛冶屋の次は肉屋に向かう。鹿を2頭で銀貨3枚になったが、野ウサギも頼むと頼まれてしまった。

 ミーナさんが笑みを浮かべて請け負っていたけど、ゴブリンの少年達はこうやって鍛えられるんだろうな。


「最後は雑貨屋にゃ。婆さん達から色々と頼まれてるにゃ」

「こっちも手伝ってもらってるんだから、なるべく応えてあげたいね」


 雑貨屋に入ると、ミーナさんが店員の娘さんにリストを手渡している。まさか魔族の文字じゃないだろうな?


「わぁ、綺麗な文字ですねぇ。私もこれぐらいの文字が書ければいいんですけど……」

 

 奥の棚から箱を引き出しているけど、ここまで独り言が聞こえてくるぞ。


「クリスが書いてるから問題ないにゃ」

「そういうことか! クリスなら家庭教師にしっかりと教えて貰ったはずだからね」


 スパルタ教育に近いものもあったに違いない。どこに嫁に出しても自分達の矜持が保てるようしっかりと両親はクリスを教育したはずだ。


「細々したものが多いので、この木箱をサービスします。お得意さんですからね」

「ありがとう。ところで、お菓子はあるかな?」


 俺の問いに、カウンターの向こうから娘さんが大きな笑みを浮かべた。


「ありますよ。王都で人気だそうです。でも値段が高いんです。これで銀貨1枚なんですよ」


 奥の棚から取り出して来た小箱を、カウンターに置いて蓋を開けて見せてくれた。


「綺麗にゃ! これがお菓子なのかにゃ?」

「ヘぇ~、珍しいね。金平糖だ」


「知ってるんですか?」

「前に食べた時は、外国から買ってきたと商人が言ってたよ。どうにかこの王国でも作れるようになったんだな。高いのは、それが砂糖の塊だからだ。砂糖はまだまだ高いからね。だけど、山では重宝するな。2箱買えるかな?」


 糖分は疲労回復の良薬だ。それに高カロリーなのが丁度良い。もっともこれは理由付けだけだけどね。


「ありがとうございます。10箱仕入れて、売れたのが2箱だけだったんですよ。お父さんは分割して売ることを考えてたぐらいです」


 まあ、そうなるだろうな。値段が値段だ。でも10個単位で売るなら、懐に余裕がある冒険者が買うんじゃないか?

 最後に、大きな雑穀の袋を手押し車で運んできたところで、リストの商品が揃ったらしい。


「全部で、430バイトになります。ところで猟師さんですよねぇ。焼き畑を作るんならギルドに断っておいた方がいいですよ。魔族だと思って冒険者が畑を荒らすかもしれません」

「分かったにゃ。そうそう、これを忘れるところだったにゃ!」


 ミーナさんが野ウサギの毛皮をカウンターに並べた。お姉さんが丁寧に確認しながら枚数を数えている。

 

「17枚ですね。85バイトになります。購入した金額から引きますから……、345バイトですね」

 

 昔から比べると、扱う金額が増えた感じだな。

 銀貨を4枚出して、銅貨で55バイトを受け取った。

 購入した品を魔法の袋に詰め込んで、バッグにしまい込む。ギルドに顔を出す口実が出来たから丁度良い。


「煙が見えるとは思えないにゃ」

「世間体は大事だよ。俺達が焼き畑を作っていると思い込ませればいいんだ」


 面倒だとミーナさんは思っているんだろう。

 俺達が焼き畑を作っているのは東の尾根の東側だ。あの尾根を越えようなんて考える物好きはいないはずだからね。

 

 ギルドの扉を開けると、ホールにいた冒険者達が俺達に視線を向ける。値踏みするような視線に慣れたのはいつのことだったかな。

 直ぐに興味を無くして視線を外すんだが、最初はいつもドキドキしてたものだ。


「あら、ようやく冒険者になる決心がついたのかな?」

「こんにちは。俺達には冒険者は向いてませんよ。獣相手で十分です。たまにダンジョンには入りますが、深入りするような冒険はしませんよ」


「それでも、盗賊の武器を見付けたんでしょう?」

「たくさんありましたからね。皆で分けました。ところで、山で焼き畑を作るならギルドに話をしておくように雑貨屋の娘さんに言われたんですけど」


「そうねぇ。確かにその方がありがたいわ。でも、山火事には気を付けて欲しいわ」

「そんなに大きくは作りませんよ。鍋の具材を増やすぐらいの考えですし、川沿いに作るつもりですから森からは距離があります」


 テーブルに広げられていた地図におおよその場所を指差しておく。これでこの辺りに冒険者が来ることは無い。

 俺達は猟師という触れ込みだから、焼き畑付近に居を構える必要もない。


「了解よ。ところで、一昨日若い冒険者が軍の装備を持って帰って来たんだけど、その若者達に少し遅れてもう1つのパーティが出掛けたの。貴方達、森で見かけなかったかしら?」

「獣だけですね。やはりダンジョンに向かったのであれば、深入りしたということですか? 俺達は入り口近くを仮宿代わりに使うこともありますが、たまにスケルトンを見掛けますよ」


 俺の言葉に笑みを浮かべる。

 俺達の裏事情が分かるのかな? だとしても、口には出さないだろう。俺達はこの世の者ではないんだからね。一応体を持ってはいるが、あくまで仮の姿らしい。

 

「そうね。猟師では入り口で諦めることになるでしょう。今年は、かなり冒険者が出掛けるみたいよ。ダンジョンにはあまり近づかない方が、余計な争いを防げるわ」

「少し、西に狩場を変更しましょう。とはいっても、焼き畑の面倒も見なければなりません」

「貴方達の狩場を荒らさないように伝えておくわ。それと、ダンジョンに魔族が住み着いてるようだから、狩場でも注意してね」


 俺達を王都から派遣された監察官だと思っているようだ。

 猟師として村に接してるんだけど、どこか不自然なのかもしれないな。だけど、そんな思い込みを持っているなら冒険者と諍いが起きるのを、未然に防いでくれるんじゃないかな。


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