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3-04 大広間ができた


 新たにスコップや一輪車を手に入れて、大広間の池作りが急ピッチで進んでいる。

 スケルトンやゴブリンを池作りに投入し、ホムンクルス達には回廊作りを頼んでいるから、来春には一気にダンジョンを広げられるだろう。

 現在の大きさは、東西150m、南北200mの広さに6つの部屋を持つダンジョンだが、来春には東西250、南北300mほどの大きさになり、部屋も大広間の外に12部屋を持つ広さになるのだ。

 西への拡張は今年で終了して、来年は東へと掘り進んでいく予定だ。できれば広さを2倍にしたいところだけどね。部屋をあまり作らず回廊を多くすれば何とかレベルを上げられるんじゃないかな。


「2年でレベルを上げられると思ったにゃ」

「長い道だけど、ホムンクルスが休まず掘り進んでいるから来年には何とかだ」

「ホムンクルスの数を増やす?」

「今のままでいいよ。やはり食料自給が問題だ。ゴブリン達が頑張ってくれたから、雑穀の袋も10袋以上倉庫にあるし、鹿肉の燻製だってあるからね」


 無いのは生鮮野菜や果物だけど、干果を2袋も手に入れられたから、これでゴブリン達の食料事情も改善できるだろう。


「来春は、こんなに大きくなるの!」

「そうだよ。東への通路を3カ所塞げば、拡張工事も続けられる。今度はスケルトンにも頑張って貰えるよ」

「そうなると、レベルの高い魔族がもう1種欲しいにゃ」

「タダで派遣して貰えるのはスケルトンだけだよ。それも個体数が限られてるし。ゴブリン達は兵士じゃないからね。狩りはしてもらってるけど冒険者と命のやり取りは問題だと思うけど?」

 

 俺とミーナさんの会話を聞きながら、クリスが魔族のリストを眺めている。安くて強い魔族なんて早々いないと思うんだけどねぇ。


「順当ならゴブリンにゃ! でも予算的には厳しいにゃ」


 ミーナさんが、クリスが見ていたリストを覗き込みながら呟いた。

 クリスが残念そうな表情でミーナさんを見上げてるけど、レベルが上がれば少しは派遣してもらえる魔族のレベルを上がられるんだけどねぇ。


「でも、ダンジョンを広げて、ところどころに宝箱を置けば冒険者もやって来るだろうから、マナを貯められそうだ。そうしたら強い魔族を派遣してもらえるんじゃないか?」

「宝箱?」

「何を入れるにゃ? 銀貨数枚じゃ呆れられてしまうにゃ」


 俺なら銀貨数枚でも嬉しいんだけどねぇ。

 

「そうだなぁ……、クネリさんから貰ったお土産で良いんじゃないか? 少しは換金したいけど、あれって、正規軍の装備品だから、町に入りに行ったら色々と質問されそうなんだよな」


 鉄製の籠手やヘルメット類なんだが、かなりへこみや傷がある代物だ。ダンジョンの奥にあるなら魔族の品ということも出来るだろうけど、俺達は猟師という触れ込みだからね。そのまま持って行ったら、出所を問われるのは間違いないだろう。


「それなら、ゴブリン達に木箱を作ってもらうにゃ。釘や道具はマナで手に入れるにゃ」


 クリスと一緒に道具のリストを眺め始めたけど、またマナが減ってしまいそうだ。

 だけど、上手く行けばスケルトンの装備よりは高く売れるんじゃないかな。


「300マナで購入したにゃ。仕掛け作りに使えそうにゃ」

「仕掛けって、クリスが言ってた可動壁みたいなもの?」

「先ずは、落とし穴にゃ。それに、クリスが廃棄ダンジョンで見つけたものも使えるにゃ」


 落とし穴って、あまり深く作ったらそれで命を落としそうだぞ。それにクリスが見つけたものって何だろう?


「殺しちゃダメだよ。怪我を負わせるのが最上だ」

「ちょっとしたいたずらにゃ。落とし穴の深さもこれぐらいにゃ」


 ミーナさんが両手を使って深さを教えてくれたけど、それって50cmにも満たない深さだ。足をくじくのが目的ってことなんだろうか?


「この部屋に仕掛けるにゃ。奥に宝箱を置けば引っ掛かるにゃ」


 クリスと顔を見合わせて笑みを浮かべてるんだよな。

 今までは、スライムとスケルトンが頼りだったけど、今度はダンジョン自体をつかっての反撃ということになるんだろう。

 スケルトン以上に強力な魔族を召喚出来ない状況では、それが一番なんだろう。罠は下階で試したかったんだけどね。


「そういえば、クリスが見つけたものって?」

「ローリングストーンにゃ!」


 思わず、クリスに顔を向けてしまった。

 エヘン! と小さな体を反らしているようにも思えるけど、かなり物騒な品だぞ。どこで使うんだ?


「この一番奥の回廊で使おうと思ってる」

「確かに長いけど、分岐路がいくつかあるよね」

「分岐路に飛び込んでも問題ないにゃ。出口には戻れるし、下階への階段にも行けるにゃ。ちょっとしたイベントにゃ」


 イベントねぇ……。アトラクション的な仕掛けと思えば良いんだろうか?

 俺が昔潜ったダンジョンには、落とし穴はあったけど、さすがにローリングストーンは無かったなぁ。


「致死的な罠は、今後とも止めとかないか? 怪我を狙うのが一番に思えるよ」

「死んだら、マナが手に入らないにゃ。でも魔族と戦闘すれば弱い冒険者は死んでしまうにゃ」

「魔族だって同じことだろう? それは両者の腕次第だし、片方だけに益があるようでも問題だと思うよ。現在は軽く当たって直ぐに引き上げているけど、冒険者が弱いからそうしているだけだ。ダンジョンの拡張が進めば相手を全滅させることも考えないとね」


 魔族だって、新兵を鍛えるために派遣してくれるのだ。逃げるのだけが上手くなるようでは困るだろう。

 それに、魔族以外に冒険者を狙う輩もいるのだ。同じ人間族として恥じ入る行為なのだが、ダンジョン内の冒険者狩りは大きなダンジョンでは当たり前のように行われていたからな。

 そんな連中の活動を、俺達のダンジョン内では制限しなければなるまい。上手い具合にダンジョン内の平面図に魔族と冒険者達の動きが輝点として管理室では見ることが出来る。冒険者狩りをする冒険者を見付けるのはそんなに難しくはないんじゃないかな。


「魔族の全体を指揮するのは難しくなるにゃ」

「ダンジョン全体を見張るのも難しくなっていくよ」

「そうだね。それは少しずつ慣れないといけないと思うんだ。上手い具合に、ホブ・ゴブリンのお婆さん達がいつもいてくれるから、お婆さん達に魔族の指揮を任せることだってできるんじゃないか?」

「魔族軍から退役してるけど、レベルは12もあるにゃ。魔族の魔導士部隊を率いてたと言ってたにゃ」


 ホブ・ゴブリンのレベルは6から10だったんじゃないか? それが12だとすれば1階の魔族の指揮なら簡単に出来るはずだ。20体のゴブリン達が素直にお婆さん達の指示を聞いているのは、料理の腕だけじゃなかったんだな。


「そうなると、来春からお婆さん達に頼むことになりそうだ。このダンジョンの責任者はクリスなんだから、頼んでくれないか?」


 ミーナさんと顔を見合わせて頷いているから、了承したってことかな?

 俺達は、今のままでダンジョン全体を見ていれば良いだろう。ん? 待てよ。そうなると、お婆さん達への連絡はどうするんだ? それにお婆さん達だって魔族に指示を出すとなればダンジョン内を動かなければならなけど、あのふくよかな体形では少し無理があるんじゃないかな?


「私が連絡するにゃ」

「ミーナさんは狩りの指導もしてるからなぁ。ゴブリン達の移動もあるだろうから、ミーナさんがいないと連中も困るだろうし」

「なら、魔道具を渡すよ。クロードさん達に渡したバングルより劣るらしいけど、話すこともできるみたい」


 簡易版ということなんだろうか? それがある程度用意されているということは、ダンジョンの管理者から各階層の指揮官への指示・連絡は想定されているということになる。

 あの婆さん達がやって来たのも、このダンジョンの指揮官候補にしたいというのが魔族の考えかもしれないな。


「1階のダンジョン拡張は続いているから、そっちの指揮も併せてお願いしてくれないか?」

「ついでに宝箱と中身もお願いしとく」


 クリスの言葉に、思わず笑みが浮かんだ。

 これで、当座の仕事が無くなったぞ。後は管理室で広間の仕上げをゆっくりと皆で考えれば良いだろう。


 翌日。クリスがミーナさんと一緒にお婆さんにところに出掛けていった。

 あの婆さん達だから、喜んで聞いてくれるに違いない。

                 ・

                 ・

                 ・

 年が明けて、一か月も過ぎたころにどうにか大広間が出来上がった。

 中央の池も何とか間に合ったようだが、池の深さは1mほどだからちゃんと魚が育つのだろうか? 中央の噴水から2mほどの高さに噴き上げられた水は、東の尾根から東に流れる沢筋から取ったものだ。冬でも凍らぬほどの水量があるから、噴水が枯れることは無いだろう。

 天井には魔気を吸って輝く大きな光球があり、その真上には、魔気のジェネレーターを新たに設けた。

 クリスの話しでは、これだけで現在のダンジョンの隅々にまで魔気を満たすことができるらしいけど、中央広場の東に作った部屋に入り口近くに設けたジェネレーターを移動しておいた。今年は東を拡張する予定だから、こちらにも魔気は必要だろう。

 大広間と中央回廊の間には大きな青銅の扉を設けたが、これは今年中には崩落すると言われているダンジョンから貰ったものだ。良い具合に錆びている。

 その扉の反対側の壁には崩れかけた女神像が設置された。

 大理石の土台だけで横幅8m奥行き3mもある。高さは俺の腰ぐらいだな。その土台に2mほどの像が3体あるんだが左右の像は上半身が欠けているし、中央の像も顔の半分が削られていた。

 

「中々良い感じにゃ。魔族の神かもしれないにゃ」

「かなり古い神だと思うよ。たぶん、モイライ像だ」


 生きる者達の運命を司る3女神だったかな。紡ぎ車を中央の像が持ってるし、左手の像が持っているのはハサミだからね。


「この場にふさわしい神様なの?」

「問題ないと思うよ。知る人は少ないかもしれないけど、運命を司る3女神だからね」

「良いことがあるように、花の季節にはお花を摘んでくるにゃ」


 それぐらいしといた方が俺も安心できる。

 俺達をここに運んだのは天使だけど、その天使に指示を与えた至高の存在がモイライ神かもしれないんだからね。


「ところで、この広間の何カ所かに床板が張っていないのはなぜなの?」

「洞窟サボテンを植えるにゃ。このぐらいの明かりがあれば十分に育つにゃ。たまに野ウサギの内臓を上げれば元気に育ってくれるにゃ」

「肉食なの?」

「ゴブリン並にゃ。根に近づかなければ安心にゃ」


 話を聞くと、動きまわるサボテンらしい。不定期に花をつけ実を結ぶということだが、その実は濃縮食料としても使えるということだ。

 魔族ではかなり普及している食べ物らしいけど、少しずつ人間族にもその存在が知られていると教えてくれた。

 ちょっとした、御褒美にもなるってことなんだろう。

 地下だから花畑を作ることもできないからね。花が咲くサボテンなら、少し物騒だけど場に即した植物ということにもなるんだろうな。


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