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3-03 お下がりを貰える?


 どうやら数人を捕虜にしたようだ。

 ロープで括られた盗賊達はダンジョンの外に連行され、石像にロープの端を括られているみたいだな。

 レアに焼かれた死体と一晩過ごすのは討伐隊も嫌に違いない。

 ダンジョン前の冒険者が焚き火を作る場所に、同じように焚き火を作って休息するようだ。

 俺達も今夜は寝ることにしよう。明日は後片付けが待ってるからね。


 翌日。朝食を取った討伐隊は、盗賊を小突きながら荒れ地を西に向かった。

 やはり死体はそのままなんだな。冒険者達が嫌がるだろうにね。


「スライムは何でも食べるんだよね? 死体もかな」

「食べるにゃ。使えそうな衣服は婆さん達にあげるにゃ。骨はアビスにあげるにゃ」


 クー・シーと言ってたから、イヌなんだよな。やはり骨は好物ってことか?


「魔族の魔導士がスケルトンにするにゃ。新鮮な骨なら喜ばれるにゃ」

「スケルトンさんって、そうやって増やすんですか?」


 ちょっと驚いたような表情でクリスがたずねている。

 俺も驚いたからね。それなら遥か西の戦ではたくさんスケルトンが作られてるに違いない。


 討伐隊が仮想スクリーンから姿を消したところで、スケルトンを使ってスライムが待機していた部屋に死体を移動する。

 回廊で、ホグ・ゴブリンのお婆さん達が衣服を剥いでカゴに入れている。中にはバッグの中に魔法の袋を残していた者もいるようで、結構丁寧に分類しているようだ。

 十数体の死体を片付けたら、今度は部屋の片付けなんだが、かなり適当にやってるな。

 盗賊がアジトにしていた痕跡は残しておくようだ。

 その辺りは、ミーナさんお任せだから、彼女の判断が入ってるんだろう。


 どうにか後始末を終えたのは昼をかなり過ぎたころだった。

 お茶を飲みながら今後の話をしていたら、ミーナさんが思い出したように腰のバッグから小さな革袋を取り出した。


「盗賊の持っていたお金にゃ。ほとんどを討伐隊が持って行ったけど、2人のバッグに魔法の袋が入ってたにゃ。魔族は人間のお金は必要が無いにゃ」


 革袋の中身をテーブルに取り出すと、銀貨だけで20枚近くあるようだ。これは頂いておくに限るな。

 

「マナもたくさん手に入ったよ。ダンジョンで長く暮らしてたからかな? 死んだ盗賊の分は出ないけど、捕虜にした6人分について、5日分が出るみたい。それと討伐隊もね。討伐隊や盗賊で怪我したものも、冒険者と同じようにでてるし、スライムさんも数は少ないけど戦ってくれたから……」


 現金で2,235バイト。マナの総計は555マナになるようだ。それ以外に武器や防具を残してくれたから、武器屋に売れば銀貨2枚ぐらいにはなるんじゃないかな?


「討伐隊が町に着いたなら、知らせを知った西の村から再び冒険者が来るかもしれないな」

「早く来るといいね」


 クリスは明日にでも来るかと楽しみにしてるみたいだけど、早くとも数日後になるんじゃないかな。

 まあ、今年は新たな部屋と回廊を使って凌ぐしかないんだけどね。

 大広間を作るのは、少し速まったのかもしれない。頑張って削ってはいるんだが、先は長く感じられる。

                 ・

                 ・

                 ・

 広間がどうにか形を現したのは、秋が過ぎてからのことだった。

 東西南北とも80mほどの四角い広間の天井は4つの円柱で支えられる構造だ。天井まで30mもありそうだから、入り口から見る広間は創玄さが感じられるほどだ。

 この部屋の壁と天井を石造りに変えるだけで、マナを600も使ってしまった。現在は4本の支柱の間の山を削っているんだが、これが終わるころには年が明けてしまいそうだ。


「それでですね。この真ん中に噴水があったら良いと思いませんか?」

「突き当りの壁面に像が欲しいにゃ。その方が雰囲気が出るにゃ」


 そんなことを言いながら、ミーナさんとクリスでお茶を飲みながら仮想スクリーンに映し出された画像を見ている。

 確かに、その方が雰囲気は出そうだけど、マナも出て行きそうだ。

 あまり余裕が無いんだけどねぇ。また、特売品を見繕っているんだろうか?


「噴水はどれも高いんだ……」

「広間に合うとなれば、これぐらいの像が欲しいにゃ……。最低でも3000マナは、痛いにゃ」


 痛いどころか、その後のダンジョン作りに支障が出そうだ。

 諦めるという選択肢はないのかな?


「これって! 良いかも」

「これにゃ? でも、小さいにゃ、それに周囲の池は付いてないにゃ」

「ですから、作るんですよ。ほら、まだ掘ってる最中でしょう。真ん中にこの部屋の半分ぐらいの池を作れば、この噴水が使えますよ」


 クリスが、ソファーの前にあるテーブルの上に、紙を広げて鉛筆で描き始めた。

 4つの支柱の真ん中に円形の池を作るのか。その中に入れる噴水は……、これだな。

 ワイングラスが2つ重なったような代物だけど、大理石で作られたものらしい。魔道機関によって対になる球体の周囲から水を引き寄せると書かれている。

 値段は300マナだから、他の噴水から比べれば確かに破格ではある。


「池がちゃんとできるかな?」

「それらしく形を作って、【ビルド】を使えば良いにゃ。天井や壁と一緒にゃ」


 言われてみればその通りだけど、漏れないかな?

 ゴブリン達の食料である魚が飼えるかもしれない。冬には魚とりの罠も使えないから喜ばれそうだ。


「それじゃあ、購入するよ。池が出来るまでは広場の片隅に置いとくね」

 

 クリスがミーナさんが頷くのを見て、直ぐに手続きを始めたようだ。

 俺も基本は賛成だから、黙っていよう。そうなると、今度はミーナさんの欲しがってた石像がどうなるかだな。

 確かにアクセントとしては申し分ないのだが、入り口のお飾りのようなと特売品が出るまで待つしかなさそうだな。


 今年7度目の冒険者達がやって来たのは、東の頂が雪で覆われたころだった。

 スケルトンと一戦したところで直ぐに帰って行ったけど、部屋の隅に隠しておいた山賊の武器の一部を見付けて喜んでいたな。

 彼らが帰って数日後の朝。ダンジョン前の荒れ地が雪で覆われていた。

 

「クリスにキューブを使ってアビスを呼んでもらったにゃ。ホブ・ゴブリンの婆さん達やゴブリン達を冬は雇いきれないにゃ」

「食料は何とかなるんじゃないか?」

「マナが問題にゃ。本来ならゴブリン10体で100マナにゃ。今は半年30マナにゃ」


 1年でも60マナってことだよな。となれば春分の日までは有効に思えるんだが、ミーナさんはその後のことも考えてるってことなんだろうか?


「年間100マナなら問題ないんじゃないかな。今年は、狩りと草刈りや魚獲り頑張って貰えたからね」

「それだと、半減してしまうにゃ。ダンジョン内でも土砂運びやホムンクルスの世話を手伝ってもらえたにゃ」

「お婆ちゃん達、帰っちゃうの?」


 心配そうな顔をしてクリスが俺達に顔を向ける。

 身を乗り出しているから、とりあえず頭を撫でてあげた。


「そうならないようにと、ミーナさんが交渉してくれるんだ。せっかく仲良くしてるんだからね」


 うんうんとクリスが頷いている。お婆ちゃん達と仲良くしてるんだから、帰るなんてことになったらクリスがかわいそうだ。


 さて、どうやって交渉をしていこうかとミーナさんと話を始めたら、管理室の一角に魔方陣が現れて光を放ち始めた。

 その光が納まると、アビスが俺達の方に向かって歩いてくる。


 とりあえず立ち上がって挨拶したところで、空いてる場所に座ってもらう。

 クリスがお茶を用意してくれたところで、ミーナさんが俺達のお願いを離し始めた。


「……というわけで、今まで通りのマナでゴブリン達をこのダンジョンにおいて欲しいにゃ」

「半年で30マナで20体の兵士前の少年達と、その食事を作るお婆ちゃん2体はこれまで通りで良いでござる。他の出来立てダンジョンも同じような適用を受けてるでござるよ」


 どうやら、問題なかったみたいだ。考えすぎだったのかもしれない。


「入れ替えも無いってことかな?」

「来年の春分に見直すでござるよ。もっとも、食事のお婆さん達はそのままでござる」

「戦闘に参加はさせていないんだが?」

「弓や槍の腕が上がって、体力が付けば兵士の初等教育を短縮できるでござる。兵站局としてもありがたいでござるよ」


 直ぐに兵士として前線に送るわけじゃないんだ。人間族の方は、徴兵したてをすぐに送る場合もあると、聞いたことがある。

 魔族の方が兵站と教育を重視してるんじゃないか?


「そういえば、古いダンジョンがもう直ぐ崩落するでござる。欲しいものがあるなら、運んであげるようにクネリ殿から仰せつかったでござるよ」

「どんなダンジョンかにゃ?」

「5階層でレベル40のダンジョンでござる。かろうじてキューブが動いているでござるが、来年には動きを止めて崩落するでござる」


 なら! と言ってミーナさんとクリスが備品リストを見ながら色々とおねだりを始めた。

 火の消えない松明とか、清浄な水が出る像なんかが狙い目だな。


「大きな像があるかにゃ? こんなのが欲しいにゃ」

「壊れかけがあったように思うでござる。欲しいのでござるか?」


 うんうんと頷いてるけど、俺としては像を見てから決めるべきだと思うな。それよりもだ。


「ヒカリゴケみたいなものがあるかな? ダンジョン内で生育する植物みたいなものが欲しいんだけど」

「それならたくさんいるでござるよ。魔道機関の疑似太陽を外してくれば、ダンジョン内での成長も期待できるでござる」


 お願いしますと言ったのは、少し速まったかもしれない。

 まさか、攻撃的な植物まで持ってくるとは思わなかったんだよな。


 とりあえず一通り俺達の願いを聞いてはくれたけど、果たしてどこまで対応可能かは、クネリさんの判断1つらしい。

 だけど、アビスはメモを取ってないんだよな。ちゃんと俺達の願いを覚えているんだろうか?



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