痩せる薬(3)
清佳は、大きくなったお腹をさすった。
「体重、やっぱり赤ちゃんの分が増えちゃったな。それか、漢方が効いてなかったかもしれない。幸太君は、無事に六十キロになったから、あの薬屋さんの薬は、本当に効果があるのかもしれないけど。こればっかりは、どうしようもないね」
彼女は、もう一度大きなお腹をさすると、ゆっくり立ち上がった。
「清佳。大丈夫?」
「大丈夫。ありがとう」
立ち上がった清佳を支えるのは、幸太。彼は、健康的に程よく引き締まった体型になっていた。
「幸太君は、綺麗に薬の効果が出たね」
「まぁな。頑張って、通勤で歩くようにしたのも良かったのかもな」
「あの人、運動しなさいって言ってたしね」
「とりあえず、来年の健康診断は、引っかからないことを願うよ」
「そうね」
ふうっと、清佳は息を吐くと、玄関へと向かった。
「赤ちゃんが生まれるまでもう少しだし、入院中も無理はするなよ?」
「わかった」
「ちゃんとご飯は食べるんだぞ?」
「わかった」
「それから……」
清佳はクスリと笑うと、幸太の心配を止めた。
「大丈夫。私には、幸太もついているし、病院の看護師さんや先生もいる。大丈夫よ」
幸太は、清佳の言葉にどこか腑に落ちない顔をしつつも、心配というものを引っ込めた。
二人は、仲良く玄関を出ると、荷物を幸太の車のトランクに乗せて、幸太は運転席に、清佳は助手席に座った。
ゆっくりと発車する車。その車は、二人の軽くなった心と、ほんの少しの心配と、小さな命を乗せて、新しい生活への道を進みだしたのだった。
読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、薬を飲んだ彼女たちのその後の生活の一ページでした。
無事に、赤ちゃんが生まれてくるといいですね。
さて、次はどんな物語が待っているのでしょう?
ぜひ、続きもお楽しみいただけますと幸いです。




