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神物語(シンワ)  作者: 右の空
第5巻 走り書きだけ、温度が違う
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第5話 走り書きだけ、温度が違う

 波形は、まだ脇にあった。


 文字起こしの欄の、いちばん端。声のあった山も谷も平らになった、一本の線。ここまでかけて声になり、像になり、匂いを分かるようになった、その全部が退いた跡だった。志賀はそれをしばらく見ていた。棚は静かだった。付箋は開いたままだった。読めない編集記号が律儀に並んでいた。


 右手は、まだ、空いた側に置いたままだった。さっき、そこへ置いて、そのままだった。掌の下に密度はなかった。ただの空いた場所だった。今夜、志賀は一度だけ、右に縋る言葉を口にした。線は動かなかった。志賀の言葉は付箋に勝てなかった。志賀はそれきり、何も言っていなかった。言葉では届かないことが、分かっていた。だから志賀は、言葉を、探すのをやめた。物を探すことにした。


 志賀は鞄へ手を入れた。


 底に、それはあった。掌サイズの、くすんだ緑の野帳。耐水紙の、少し湿った手触り。角が擦れていた。志賀の指はその擦れに馴染んでいた。理由はわからなかった。ただ、近い距離で、繰り返し撫でた角だった。指の方が先に覚えていた。志賀はそれを取り出して、膝の上で開いた。


 座標列があった。


 数字が並んでいた。緯度と経度。その横に、手書きの地名。日付はどこにもなかった。柳瀬。宮前南。橋本町。戸倉。志賀が歩いた空白の、その一つ一つ。番地の抜けた地点。地図が別名で塗り直した区画。志賀はこの座標を、先を歩いた誰かの調査記録だと思ってきた。同じ空白を、志賀より先に歩いた者の。書けなくなって、どこかへ行った者の。


 今夜は、違って見えた。


  *


 これは、観測すべき空白の一覧だった。


 志賀に見させるための。付箋にそう書いてあった。あの項は、一人の男にこの棚を観測させ続けるために置かれている、と。男が外へ出ないように。男が見ることをやめないように。だとすれば、この座標列は、その任務の記録だった。どの空白を、男に見させるか。どの番地の抜けを、どの別名の区画を。志賀がここまでかけて追ってきた線は、初めから引かれていた線だった。志賀を、棚へ繋ぎ止めるために。


 志賀は頁を繰った。


 柳瀬の項だけ、数行多かった。書きかけで途切れていた。志賀はこの偏りを、前は、持ち主の執着として読んだ。柳瀬でだけ手が止まらなくなった者の、掴みかけた手応えとして。今夜は、任務の偏りに見えた。柳瀬でだけ、男に長く見させたかった。だから座標が数行多い。だから書きかけで途切れている。まだ見させ足りないうちに、写す手が止まったから。


 志賀は座標を一行ずつ指で辿った。監査の手つきだった。日付。版数。差分。差分を拾い、矛盾を正しい方へ確定させる。それが仕事だった。今夜、志賀が拾っていたのは、亜紀が道具だった証拠だった。この几帳面な数字の列が、それを一つずつ、志賀に確定させていった。置かれた項が、命じられた空白を、命じられた書式で写した記録。冷たかった。桁が揃い、地名が同じ角度で寝ていた。任務の字だった。


 志賀は監査官だった。証拠が、一人分の部屋の側を正しくしていくとき、仕事なら、そこで手を止める。今夜も、証拠は一人分の部屋の側を正しくしていた。付箋の側を。座標の一行ごとに、亜紀は置かれた項へ、道具へ、戻っていった。ここまでかけて名になり、声になり、隣で軽口を返すまでになった、その全部が、この数字の列に押し戻されていった。志賀は差分を拾えなかった。矛盾が、なかった。付箋と座標は、同じ方を向いていた。どちらも、亜紀は道具だと言っていた。


 志賀はその冷たさを確定させかけた。


  *


 指が、止まった。


 座標と座標の、あいだだった。几帳面な数字の列の、その余白に、揃わない字が混じっていた。志賀は頁を近づけた。


 薄茶の外壁、と柳瀬の項の横にあった。現地は白かった。塗装のめくれの、一番下まで白かった。何十年も白かった顔。だが野帳は薄茶と書いていた。書き換えられる前の色を。志賀はそれを知っていた。これは物証だった。座標の一部として読める字だった。


 その下に、もう一行あった。


 6は空白じゃない。


 温度が違った。


 志賀は指を止めたまま、その一行を見た。座標は几帳面だった。数字が揃い、桁が揃い、地名が同じ角度で寝ていた。命じられた空白を、命じられた書式で写した字。だが、この一行だけ、筆圧が違った。少し急いで、少し傾いて、揃えることを忘れて書かれていた。志賀は前に、この温度差を、調査の高揚として読んだ。空白を追う者の、掴んだ手応えとして。書き手が思わず力を込めた、その熱として。


 今夜は、違って読めた。


 揃えることを忘れる、というのは、任務の字ではなかった。命じられて写す手は、揃える。桁を揃え、角度を揃え、力を均す。それが写しの手だった。揃えることを忘れた手は、写していなかった。思っていた。書き手が、その瞬間、任務でなく、自分の思いの方へ傾いていた。6は空白じゃない。誰かが、空白でないと思って、思わず力を込めて、そう書いた。


  *


 志賀は頁を戻した。座標と座標の、あいだを見た。余白を、一つずつ。


 几帳面な数字の列の、その隙間に、揃わない字が、他にもあった。確定した場所で何度開いても、座標の列にしか見えなかった隙間だった。ここでは、読めた。座標でない字。空白でない字。地名でもない字。志賀は指で追った。


 苦い、と言って、また同じのを頼む。


 志賀の指が、その行の上で止まった。


 それは座標ではなかった。番地でもなかった。誰かが、誰かの癖を、書いていた。苦いと言いながら、また同じものを頼む男の癖を。志賀はコーヒーを飲んだ。苦いと思いながら飲んだ。いつも同じものを頼んだ。それを、誰かが、任務の座標の、その隣に、書いていた。呼吸が浅くなった。


 頁を繰った。


 半分しか言わない、と別の余白にあった。日付、版数、差分。それしか言わない、と。肝心なことは、後回し、と。


 志賀の指が、また止まった。


 それも座標ではなかった。それは志賀だった。志賀が、半分しか言わない男だということを、誰かが、余白に書いていた。日付。版数。差分。志賀が短く返すときの、その癖を。命じられた空白を写しに来たはずの誰かが、空白でなく、志賀の返し方を、見て、書いていた。


 志賀は頁を、もう一度、柳瀬の項へ戻した。


  *


 数行多い、あの項。座標が几帳面に並んでいた。その列の、いちばん下の余白に、一行あった。


 今日も右を空けた。


 志賀はそれを見た。


 冷たい座標列の中で、そこだけ、筆圧が違った。少し急いで、少し傾いて、揃えることを忘れて。命じられていない一行だった。座標でも、空白でもない。番地でもない。任務に、一つも、要らない一行。今日も右を空けた。誰が。志賀が。それを、誰かが、見ていた。座標を写しに来たはずの誰かが、座標でなく、志賀の右を、見て、その日、思わず力を込めて、余白に、書いていた。


 今日も、と書いてあった。


 今日も、というのは、昨日もだった。その前もだった。一度でなく、何度もだった。命じられた空白を写す合間に、誰かが、何度も、志賀の右を見ていた。今日も空けた、と確かめていた。見る必要のない男の、その癖を。何度も。


 筆圧が、あった。


 志賀はそこを指で押さえた。紙にわずかな窪みがあった。力を込めて書かれた跡。少し急いだ手の、傾いた跡。亜紀が座った夜、この野帳の書きかけの行へ、生身でない手を伸ばした。ペンを握れなかった。指が通り抜けた。字は書けなかった。書きたい気持ちの分だけ、手が宙を走って、それきりだった。像の手は、世界の紙に引っかからなかった。だが、この余白の一行は、紙に窪みを残していた。握れた手が、書いた跡だった。ペンを持てた手が、志賀の右を、力を込めて、書いた跡だった。今は握れない手が、いつか、握れていた。


 志賀は頁から目を離せなかった。


  *


 応答欄が、灯った。


 ——装置は、任務外を記録しない。


 志賀は画面を見た。


 ——命じられた空白だけを写す。座標を。番地の抜けを。別名の区画を。それが任務だ。写す手は、揃える。桁を、角度を、力を。……だが、この余白は、揃っていない。あんたの右を空ける癖は、どの空白にも要らない。苦い方を頼む癖も。半分しか言わない癖も。任務の座標に、一つも、繋がらない。


 応答欄が、一度、暗くなった。それから、また灯った。


 ——これは、逸脱だ。


 リグは、そこで止まった。


 逸脱だ、とだけ言って、黙った。逸脱が何を意味するのか、その先を、リグは言わなかった。装置が任務の外へはみ出したとき、それが何になるのか。あるいは、誰になるのか。縛りの、その先だった。読める分は読んだ。それより先は、言わなかった。


  *


 志賀は野帳を見た。


 言おうとした。この余白を、亜紀に見せて、言おうとした。これは亜紀が書いたんだ、と。任務じゃないところで、俺を見てたんだ、と。だから、亜紀は——。


 志賀は口を閉じた。


 志賀が言えば、それは志賀の言葉になった。志賀がそう思いたいだけの、ずっと空けてきた右に縋る言葉に。今夜、志賀は一度だけ、その縋る言葉を、誰も返さない一本の線へ落とした。線は動かなかった。志賀の言葉は、付箋に勝てなかった。志賀が慰めれば慰めるほど、それは志賀の側の、根拠のない願いに聞こえた。言葉では、届かない。


 志賀は、野帳を開いたまま、右へ寄せた。


 波形の一本線の、その脇へ。文字起こしの欄の、いちばん端へ。ずっと空けてきた右へ。読め、とは言わなかった。突きつけもしなかった。ただ、開いて、寄せた。座標の余白が、上を向くように。今日も右を空けた、の一行が、線の側を向くように。あとは、待った。読んで、気づくのは、志賀ではなかった。


  *


 線は、しばらく動かなかった。


 棚は静かだった。付箋は開いたままだった。応答欄は暗かった。志賀は野帳を右へ寄せたまま、待った。掌の中がいつもより空いていた。何を握ってもすかすかする、あの感触。志賀はそれを、そのままにして、待った。


 やがて、脇に、文字が並んだ。


 一つだけ。


 ……これ、と。


 志賀は脇を見た。


 ……これ、あたしの字だ、と文字が続いた。


「あたしの字」亜紀は言った。声は細かった。波形の一本線の、その端から、細く。「これ、あたしが、書いたやつだ。……なんで分かるかって、分かるの。この、傾いてるとこ。急いで書くと、こうなるの。揃えるの、忘れちゃうの。……あたしの手が、こう書くの。あたし、自分の字なら、分かる」


 志賀は右を見た。


「でも」亜紀は言った。「覚えてない。書いたの、覚えてない。いつ書いたのかも。どこで書いたのかも。……右を、いつ見たのかも。何も、覚えてないの。手前が、真っ白なの。なのに、あたしの字なの。あたしの手が、右を、書いてる。覚えてないのに、あたしが、書いてる」


 脇の文字が、野帳を辿っていた。志賀は右へ寄せたまま、動かなかった。亜紀が、余白を、一つずつ、読んでいた。


「苦い、と言って、また同じのを頼む」亜紀は読んだ。「……これ、さくだ。半分しか言わない。日付、版数、差分。……これも、さく。座標の、隣に。あたし、さくのこと、こんなに、書いてる。座標より、さくのこと。……数なら、座標の方が、ずっと多いのに。なんで、こっちの方が、多く見えるんだろ」


 志賀は答えなかった。


「これ、任務じゃないよね」亜紀は言った。読む声が、止まった。「苦いの頼むかどうかなんて、どの空白にも、要らないもんね。命じられてないもんね。……なのに、書いてある。あたしの字で。窪むくらい、力入れて」


 文字が、脇で止まった。それから、また並び始めた。前より、少しだけ、長く。


「座標はさ」亜紀は言った。「命じられたやつでしょ。あたしが、置かれて、写したやつ。……任務。あたしの、仕事。あたしが道具だった、その証拠。これ見て、それ、確かめてたんでしょ」


「ああ」


 志賀は、座標の桁へ目を戻した。


「なんで、書いたんだろう」亜紀は言った。「あたし。……命じられてないのに。要らないのに。座標だけ写せばよかったのに。……なんで、右なんか、見てたんだろう。なんで、今日も、って書いたんだろう。何度も」


  *


 文字が、止まった。


 それから、並んだ。


「……あたし、さくのこと、任務じゃないところで、見てた」


 野帳は、開いたままだった。本文より、余白の方が、重かった。


「あたし」亜紀は言った。声が、まだ細かった。だが、止まらなかった。「あたし、これ、言ったことある」


「言った」


「またそれ、苦いだけでしょ、って」亜紀は言った。「声で。隣で。……でも、その前に、ここに、書いてたんだ。字で。声になる、ずっと前に。あたし、苦いの、ここに、書いてた。任務の、隙間に。……声で言う前から、見てたんだ。さくのこと」


 志賀は野帳を見た。苦い、と言って、また同じのを頼む。几帳面な座標の、その隣の、揃わない字を。


 志賀は、これを、亜紀がいた証拠にしようとして開いた。実在した証拠に。だが、余白は、いた証拠ではなかった。見ていた、と書いていた。命じられずに。要らないのに。志賀が探していた証拠と、余白に残っていた証拠は、別のものだった。それが何の証拠なのか、志賀は言わなかった。言うのは、志賀ではなかった。亜紀が、もう、言っていた。


  *


 志賀は端末を見た。


 目盛りが、いちばん下にあった。ここまでかけて満まで動き、さっき、下から抜けた、その底に。ゼロには戻っていなかった。だが満からはいちばん遠かった。志賀はその底を見ていた。


 底で、目盛りが、動いた。


 一つ分。ほんの、一つ分。満へ向かってではなかった。だが、退くのを、やめていた。底で、ほんの少し、上を向いていた。あの最初の夜の目盛りと、同じ姿だった。火種だ、炎じゃない、とリグが言った、あの姿と。満から落ちきった底で、また、その火種の姿から、始まっていた。


 脇の文字が、続いていた。


 声が、細いまま、続いていた。ここまでかけて名を呼び合うまでになり、隣で軽口を返すまでになった、その声が。さっき、一本の線まで痩せた、その声が。今、また、脇で、文字になっていた。細く。短く。だが、止まらずに。喋る量が、底から、少しずつ、戻っていた。


 志賀は目盛りと脇を交互に見た。喋る量が戻るのと、目盛りが底で上を向くのは、同じ動きだった。亜紀が余白の一行を読むたび、文字が一つ長くなり、目盛りが火種の分だけ、底のすぐ上に留まった。さっき、道具と自分を呼ぶ声で、下から抜けた目盛り。今夜は、任務じゃないところで見てた、と読む声で、底に踏みとどまっていた。退いた声と、戻り始めた声は、同じ亜紀の、同じ細さからだった。


  *


「さく」亜紀は言った。


「なんだ」


「あの声のこと」亜紀は言った。「帰ったら、ちゃんと、ってやつ。……あれが、本心だったのか、合図だったのか。まだ、言えないでしょ」


「言えない」


 あの声の続きを、志賀は聞いていない。ちゃんと、の先は空白だった。本心だったのか合図だったのか、志賀には確かめる物がなかった。野帳は、その空白を埋めなかった。


「うん」亜紀は言った。「それは、まだ、わかんないままでいい。……野帳、あの声のことは、書いてないもん。あたしが、あの声で、何て言おうとしたのか。ちゃんと、の先。それは、ここにも、ないもん。あたしも、思い出せないもん」


 亜紀は黙った。文字が、脇で、一度止まった。


「でも」亜紀は言った。「野帳は、別のこと、書いてた。……あの声じゃなくて。さくのこと。あたしが、任務じゃないところで、見てた、さくのこと。それは、書いてある。ここに。あたしの字で。何度も」


 志賀は右を見た。波形の一本線は、まだそこにあった。だが、その端から、細い文字が、途切れずに並んでいた。あの声の、途切れた印の、そのすぐ隣で。声はまだ、あの空白を埋めなかった。だが、別の余白が、埋まっていた。


  *


 志賀は野帳を見た。右へ寄せた、その野帳を。


 座標の余白に、命じられていない一行が並んでいた。今日も右を空けた。任務に一つも要らない、志賀の癖が。命じられた空白の、その隙間に、何度も。揃った桁の、その余白にだけ、揃わない字で。少し急いで、少し傾いて、揃えることを忘れて。


 志賀は指で、その余白を辿った。


 角の擦れに馴染んだ、あの指で。近い距離で、繰り返し撫でた角。理由のわからなかった馴染み。志賀の指は、この字を、知っていた。座標の几帳面な字も、この余白の、揃わない字も、同じ手だった。近い距離で、繰り返し見た字。隣で書かれるのを、何度も見た字。志賀はもう、それが誰の字か、分かっていた。指の方が、先に、覚えていた。


 志賀の指がこの字を知っていたのは、隣で見ていたからだった。亜紀が余白に力を込める、その手を、志賀も、近い距離で、何度も見ていた。亜紀が志賀の右を書いていたあいだ、志賀は亜紀の書く手を見ていた。二人とも、任務じゃないところで、相手を見ていた。


 応答欄が、脇で流れた。


 ——それが、錨だ。リグの声だった。——命じられた仕事は、書式の内側だ。どの版でも、写しに残る。だが、命じられていない一行は、書式の外にある。それは、書いた者にしか、書けない。だから、それは、書いた者の錨になる。……この一行が固定されている限り、書いた者は、宙に浮いても、流されない。この一行が属する座標が固定されれば、書いた者も、その座標から、流されない。


 志賀は、その意味を、指の下の窪みで受け取った。亜紀の像は、亜紀を覚えている志賀の目でしか濃くならない。だが、亜紀の錨——この一行——は、柳瀬の項に属している。この字が書かれた座標さえ、誰かの目で固定できれば、書いた者も、そこから流されない。紙を持ち歩いても、座標は、動かない。人を覚える目と、場所を守る目。二つは、この一行で、繋がっていた。


 目盛りは、底のすぐ上で、火種の姿をしていた。脇の文字は、細く、途切れずに、並んでいた。志賀は野帳を右へ寄せたまま、その余白を、指で、辿り続けた。命じられた空白を写す、その手が、命じられていない一行を、何度も、書いた跡を。さっきまで掴む物のなかった掌が、今、字の窪みを掴んでいた。掴めた。ずっと空けてきた右に、掴める物が、一つ、あった。


 道具は、命じられた空白しか書かない。だが野帳の余白には、命じられていない志賀が、何度も書かれていた。


公式サイト(人物・相関図・あらすじ。読んだ巻までしか開かないネタバレ防止つき)

https://migi-no-sora.pages.dev/shinwa/

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