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後日談『結婚式に招かれかつての親友と再会』

残暑厳しいある日、遠くで鳴り続ける室外機のうなりを聞きながら帰宅した私は、郵便受にキラキラ輝く白い封筒を目にした。


宛名は私、差し出し人を見てびっくり仰天した。

「これは、角田さんと都留野さんの結婚式の招待状だわ。ゴールインしたのね。」

複雑な思いもあるが、都留野さんが結婚式に私を招待してくれたことで、私はどこか肩の荷が下りたようなほっとした気持ちになれた。


「都留野さん、おめでとう。そしてありがとう。」



結婚式当日、久々に会い対面した都留野さんは、相変わらず綺麗だった。純白のウェディングドレスがよく似合う。


「都留野さん、おめでとう!よかったね。私もすごく嬉しい。幸せになってね。

そして、角田さんも、おめでとうございます!お二人末永く仲良しでお幸せに。」


「木内さん、今日は来てくれてありがとう。

ほんとうに久しぶり。元気そうでよかった。」


すると、どこかから、

「おめでとう!都留野さん、角田さん」

と叫ぶ声が。振り返ると、三芳さんだった。

嬉しそうに満面の笑みを浮かべている。


「三芳さんも、彼氏とうまくいってるのね。次は、三芳さんの結婚式かしら。」


「木内さん! 久しぶり!」

駆け寄ってきた三芳さんは、以前より少しふっくらして、幸せのオーラに包まれている。彼女の指先には、新しい生活を予感させる輝きがあった。


「三芳さん、元気そうですね。……次は、三芳さんの番かしら」

私が何気なく口にすると、彼女は頬を染めて、少しだけ困ったように笑った。

「どうかな。でも、今は毎日がすごく穏やかなの。木内さんも、仕事頑張ってるみたいだね」


「ええ、まあ。それなりに」

三芳さんの笑顔はどこまでも眩しく、かつて同じ職場で苦楽を共にしたはずの彼女が、今はもう別の世界に住む住人のように見えた。


「お互い、自分たちの場所で頑張ろうね」

三芳さんはそう言って、また別の招待客の元へ蝶のように去っていく。

彼女の言った「自分たちの場所」という言葉が、私と彼女の間に引かれた境界線のように感じられた。



盛大に開催された二人の結婚披露宴は、都留野さんの美しさに、只々あちらこちらから溜め息が漏れ、角田さんとの仲の良さのアピールに当てられっぱなしのうちに終わりの時間が近づく。


私は、もう少し、都留野さんと話したかったが、彼女はずっと取り巻きに囲まれていて、そんなチャンスはなかった。


「みんな、幸せを掴んでいるのね」

私は披露宴の間、終始一人で手持ち無沙汰で、グラスを手に突っ立っていた。シャンパンの泡が静かに消えていくのを眺めながら、自分の3年間もこうして形を変えていったのだと思う。


大迫さんご夫妻も見かけたが、ずっと角田さんと話していた。


「私は、結婚より仕事を選んだけれど、それがほんとうの幸せだったの?」

自分に問いかける。

「私は、片意地を張って生きてきただけなのかな。仕事もそれなりにしか上向いてはいないじゃない。」


一人、ぽつんと、置いていかれた感を拭い去ることも出来ずにいたが、私は思った。

「人は皆一人よ。誰かの言葉ではないけれど、人は一人で生まれ一人で死んで行く」


そうよ。私はここに一人で立っている。

私たちは繋がらない。

何処にいても、何をしていても、私たちは決して繋がらない。


拍手の中、新郎新婦が両親へ花束を捧げている。

寄り添う二人を見て、私はふと思った。あんなに密着していても、彼らもまた、それぞれの魂を持って生きる個体でしかないのだ。結婚しても、家族になっても、結局は一人。


私はシャンパングラスをテーブルに置き、誰に告げるでもなく背を向けた。

人はそれぞれ、他者から独立し、繋がらない道を行く。


孤独ではない。これは、自由だ。

私は私の「正しさ」だけを携えて、この乾いた街を、一人で過不足なく生きていく。





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