あの時の3人は繋がらないまま
あれは、都留野さんが会社を辞めてから数ヶ月後の秋の始めのことだった。
少し離れた席へ移動した、三芳さんのデスク周りの雰囲気に、それまでとの変化を感じた。
三芳さんの趣味が変わったのか。絵画を趣味としていた三芳さんは、とてもセンスがよく、趣のあるデスクだったが、なんだか少し女の子女の子した感じが見受けられた。
私は、周りをそうっと見渡して、誰も見ていないのを確認すると、ちらっと三芳さんのデスクの下を覗いた。あら、なんと、まぁ、可愛らしいサンダルが。新調したてのようだった。
その時、私は気付いた。「あ、そうだった。そういえば、三芳さんには、最近、歳下のSEさんと付き合っているという噂があったのだっけ」
三芳さんは、最近、仕事の腕も格段に上がって、上司の大迫さんからもお墨付きをいただいていた。
私は、羨ましくて仕方がなかったが、その上、恋愛の方もうまくいってるのね。
「あの時、都留野さんの背中を押した三芳さんの強引さが、今は自分自身の恋を掴み取るエネルギーに変わっているのかしら」と私は分析してしまった。
ある日の午後の休憩時間、私は見てしまった。
エレベーター前の一角の休憩スペースで、三芳さんと噂の青年SEが、人目もはばからず、笑顔で見つめ合いながらふざけ合っているのを。
二人の笑い声が、静かな廊下に反響して、私の鼓膜をチクチクと刺すようだった。
その時の出来事を回想し、「角田さんと都留野さんも、今こんな風に笑い合っているのだろうか」**と、私はその様子を妄想するのをやめられない。思わず、見たくない幻影を重ねてしまい、胸が締め付けられる思いがした。
その時、なんという偶然か、ぼーっと考え事をしていた私の肩を誰かが叩いた。振り返ると、三芳さんだった。
「木内さんのおかげで、あの時みんな一歩踏み出せたよね。都留野さんも、今頃どこかで新しい自分を楽しんでるんじゃないかな?」
この言葉が、事実(都留野さんが角田さんと繋がっていること)を知っている私の胸を抉る《えぐる》……
結局、あの時の私たち3人は、やっぱり、繋がらないままなのね。なんとも不思議と寂しさと虚しさで胸がいっぱいになった。




