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23話 全力で恋のサポートさせていただきます!

【今回の再登場キャラ】

■ローランド・エンバークラウン … エンバー王国の第二王子で庶子の王子。お人好しな性格。

「それではお二人とも、ごきげんよう」


 ソレイユに見送られ、レイヴンとアネットは公爵家の屋敷を後にする。

 馬車での送迎を勧められたが、二人は徒歩で帰ることにした。

 まだ日も高いし、話し足りないこともある様子。

 それに貴族街の中であれば安全だろうと判断しての事だ。


「ありがとうございます、レイヴン様」


 帰宅の道すがら、アネットから感謝されるレイヴン。


「あれからソレイユ様が楽しそうなんです。誰にでもいい顔するのはやめたと言って、取り巻きの方たちとも距離を置くようになりました。全部レイヴン様のお陰です」

「い、いえ、そんな事は……」


 謙遜するレイヴンに、アネットは尚も言い募る。


「私にソレイユ様を救う事は出来ませんでした。寄り添う事は出来ても、変える事は出来なかったんです。ソレイユ様が変われたのは、レイヴン様が強く言ってくださったから。レイヴン様のお陰でソレイユ様も、そして私も救われたんです」


 アネットから伝わる感謝の気持ちに、レイヴンも嬉しい気分になる。


「本当にありがとうございました、レイヴン様」

「ど、どういたしまして……」

「――ところでひとつお聞きしたいんですけど」

「切り替え早っ!」


 謝辞から一転、好奇心に満ちた目で質問してくるアネット。


「レイヴン様とローランド様って、いったいどういう関係なんですか?」


 思いがけない名前が出た事に戸惑うレイヴン。


「……へ? ローランド様ですか?」

「はい! 以前お二人が話しているのを見かけたのですが、何だかローランド様に言い寄られているように見えたもので」

「話してるときって……」


 最近レイヴンがローランドと話したことなんて一度しかない。

 母親の影を重ね、苦手意識をこじらし、彼に失礼な態度を取ってしまったあのときの事だ。

 どうやらその時の光景を見られていたらしい。


「それは勘違いですよ、アネットさん。婚約破棄を聞きつけたローランド様が、心配して声をかけてくださっただけです」

「そうなんですか?」

「まぁあの人は誰にでも優しい人ですからね。私にも気を使ってくれただけですよ」


 レイヴンはローランドの親切をそう見ていたのだが……。


「ん-、それは違うんじゃないですかね?」


 アネットがその見解に疑問を呈す。


「え? それってどういう……?」

「確かにローランド様って、王族なのに誰にでも親切ですし、皆から親しまれている方ですけれど……。だからこそ誰とも一定の距離があって、本当に親しい方というのは少ないんじゃないかと思うんですよね」

「そ、そうなんですか?」

「ええ。ですからレイヴン様のときのように、ローランド様がグイグイ迫るのは珍しいなぁって」

「へ、へぇー……」


 どうやらレイヴンの思っていたより、ローランドという人間は複雑のようだ。


「く、詳しいんですねアネットさん」

「はい! こう見えて私、学園の情報通なんです! 特にイケメンの情報収集は自信がありますよ!」

「そ、そうなんだ……」

「ちなみにローランド様は、常にイケメン人気トップ3には入ってきますね。気さくで優しい性格だけでなく、騎士学科でも共通学科でも常に10位以内には入る好成績で、文武両道の高スペック。出生の問題で王族としての地位には期待できないものの、婿に迎え入れて家を継いでほしいと考えている令嬢はたくさんいるみたいです」

「べ、別に聞いてないんだけど……」


 情報通を自称するアネットにタジタジのレイヴン。


「ともかくレイヴン様。もしこの先、恋愛で悩むようなことがあれば、是非ともこのアネットにご相談ください。全力で恋のサポートさせていただきます!」

「あ、あはは……そうね、機会があればぜひ……」


 笑って誤魔化し、ローランドの話題を切り上げる。

 そうこうしている内に、別れの交差点に到着したようだ。


「それではレイヴン様、これで失礼します。私の家はこちらですので」


 去っていくアネットを見送り、レイヴンも帰宅の途につく。


『友達ができて、これでレイヴンもボッチ脱却かぁ~! いやぁ、良かった良かった!』


 頭の上で喜びのダンスを披露するメイプルを無視し、レイヴンはローランドについて考える。


(思い返してみれば私、ローランド様にかなり失礼な態度だったよね。勝手に母親の面影を重ねて、勝手に苦手意識を拗らせて……。メイプルには反抗期って笑われたけど、我ながらホントにバカみたいだよ)


 当時の態度を振り返り、反省するレイヴン。


(今度会う事があったらちゃんと謝ろう。原因も分かったことだし、もう苦手意識は無くさないとね)


 謝罪の意思を固めながら石畳の道を歩いていると、突然何者かから声がかけられる。


「あ、いた、黒髪。アンタひょっとして聖女さま?」


 聖女のファンかなぁ、などと呑気な事を考えながら、声のした方へ振り向くと――。


「よう聖女さま。いいご身分だねぇ、アンタ」

「元は俺たちと同じ平民だってのに、こんな街で贅沢に暮らしやがって」

「俺たちの税金で食う飯は美味いか? あぁん?」


 ――そこにいたのは見るからにガラの悪い連中だった。


(な、何この人たち? なんでこんなゴロツキが貴族街にいるの?)


 想定外の状況に戸惑っているうちに、彼らはレイヴンの方に詰め寄って来ていた。


「なぁ聖女さま、ちょっとオレ達に付き合ってくれや」

「そうそう、悪いようにはしねーからよぉ」


 そんな危険な状況に慌てるレイヴン。


『レ、レイヴン! 逃げよう、早く逃げようよ!』

「う、うん――!」


 メイプルに急かされ、背を向けて駆け出す。


「おい待てこらぁっ!」

「逃がすな! 捕まえろ!」


 怒声が飛び、ゴロツキ達が迫って来る。

 女性の足では到底敵わず、あっという間に距離が詰められてしまった。


(ダメ、捕まっちゃう――っ!)


 すぐ背後まで迫った男が、手を伸ばしレイヴンを捕まえようとし――。


「待て、貴様ら!」


 レイヴンを庇うように、ゴロツキ達との間に割り込んできた一人の影。

 その男は――。


「ロ、ローランド様!?」


 先ほどまで話題に上がっていた、ローランド王子その人であった。


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