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22話 たとえ罠だとしても、正面から乗り込んで粉砕する!

【今回の再登場人物】

■ソレイユ・バーナード … バーナード公爵家の令嬢。レイヴンが悪役令嬢ムーブで説教した人物。

■アネット・グランヴィル … グランヴィル子爵家の令嬢。ソレイユの幼馴染で、一番の親友。


「どうしてこうなった……?」


 自室で呆然と呟くレイヴン。原因は手に持っている招待状だ。

 差出人はソレイユ。バーナード公爵家の令嬢である。

 昨日教室でレイヴンが、悪態をつき倒したあのお嬢様だ。

 そんな因縁の相手から、何故かお茶会の招待状が届いたのだという。


「メイプル、これ罠だよね……?」

『かもね。だけどたとえ罠だとしても、正面から乗り込んで粉砕する! それでこそレイヴンだよ』

「どこの少年誌の主人公よ! そんなノリ求めてないんだけど!?」


 求めていたのはキラキラな青春だったはずなのに――と頭を抱えるレイヴン。


(お茶会にはソレイユ様の取り巻き軍団がいて、全員でフルボッコにされるのでは……)


 だが断るわけにもいかず、重い足取りで公爵令嬢のお茶会へと参加するのであった。


 * * *


「アネット、やっぱりわたくし、王妃になんてなりたくありませんわ! 特にあのクリフォード殿下は無理、性格悪すぎですもの!」

「そうですよ! あんな男はソレイユ様にふさわしくありません! もちろんレイヴン様にも! ですよねレイヴン様!」

「は、はぁ……」


 曖昧な返事を返しながら、頭の中で『?』がたくさん浮かんでいるレイヴン。

 罠かと思って来てみれば、お茶会にいたのはソレイユとアネットの二人だけで、気付けば女子会トークの真っ最中。

 キャピキャピとはしゃぐ二人についていけないレイヴンは「どうしてこうなった?」と再び頭を抱える事となった。


「それでレイヴン様、貴女の方はどうなんですの?」

「えっと、ソレイユ様、どう……とは?」


 突然ソレイユから話を振られ、曖昧な笑顔で返すレイヴン。


「クリフォード様の事ですわ。婚約破棄までされたんですもの、いったい何があったのか、教えてくださいまし」

「あー、それは……」


 問われたレイヴンは、戸惑いながら素直にこれまでのいきさつを話すと――。


「し、信じられませんわ! 婚約者に対してそんな扱いを!?」

「酷い! 許せません! 元気出してくださいレイヴン様!」


 ――二人にとても同情されてしまった。


「いやぁ~、そんなに心配してくれなくても、もう全然気にしてないんで……」


 恐縮するレイヴンに、さらに二人は言い募る。


「ダメですよレイヴン様。そうやって我慢していたから、きっと相手を調子に乗らせちゃったんです」

「アネットの言う通りですわ。レイヴン様は尊き聖女です。例え相手が王族だからって、そこまで気を使う必要はなかったはずですわよ」


 持ち上げられたことで、逆に居心地の悪さを感じてしまうレイヴン。

 

「は、はぁ……まぁ聖女って言っても、ハズレスキルの『嫌がらせの聖女』ですけどね……」


 そう言って自虐で誤魔化そうとしたのだが……。


「そんなことありませんわ、レイヴン様!」


 逆にソレイユに怒られてしまった。


「レイヴン様は紛れもない聖女ですわ! あの教室での出来事、今でもわたくしの心に残っておりますもの」


 教室の出来事というのは当然例の、ソレイユにドヤり散らかした悪役令嬢なりきり事件の事だろう。

 レイヴンにとってはもはや黒歴史。

 だが当時を思い出すソレイユの瞳は、キラキラとまるで子供がヒーローを見るような輝きをしていた。


「わたくしのために怒ってくださったあのお姿、本当に神々しゅうございました。お陰で私は自分を見つめ直し、本当に大切なものに気付き直す事が出来ましたもの。私にとってレイヴン様は、歴代最高の聖女様ですわ!」

「い、いやその……ち、ちょっと持ち上げ過ぎでは……?」


 恥ずかしさと居たたまれなさで小さくなるレイヴン。

 そんな様子を隣で見ていたアネットが、何かに気付いた様子で彼女に尋ねる。 


「そういえばレイヴン様、最初の頃より随分と喋り方が気兼ねなくなりましたよね?」

「あ、いや、これは……」


 どうやら意識しないうちに、お嬢様言葉から素の喋り方になっていたようだ。

 話し方の変化を指摘され、思わずしどろもどろになってしまうレイヴン。

 ソレイユもその変化にようやく気付いた様子で相槌を打つ。


「確かにアネットの言う通りですわね。ひょっとして今の方が、レイヴン様の普段の姿ですの?」

「す、すみません。気に入らないなら元に戻しますが……」


 今さらかなとは思いつつ、相手は王族の次に偉い公爵家のご令嬢、失礼があってはいけないとレイヴンも考えたようだが……。


「いえ、やめないでくださいまし」


 ソレイユの方からそう止められてしまった。


「今の方がちゃんと友達な感じがしていいですわよ。ね、アネット」

「はい、ソレイユ様。私も友達は気安く話してくれる方がいいです」


 二人の突然の友達発言に、目を丸くするレイヴン。


「と、友達ですか……?」

「はい、友達ですわ! ……ってレイヴン様、ひょっとしてご迷惑でしたか?」

「い、いえソレイユ様、そういうワケではなく……」


 レイヴンが戸惑っていると、ずっと彼女を見守っていた精霊のメイプルが姿を現した。


『良かったじゃんレイヴン! いきなり友達二人もゲットだよ!』


 自分ごとのように嬉しそうなメイプルを見て、レイヴンもようやく実感がわく。


(友達……この世界で初めての……)


 なんだか急に恥ずかしくなって、顔を赤くし小声で答える。


「……はい、友達です。よろしくお願いします」


 その照れた様子に場が和み、ソレイユやアネットも自然と笑みがこぼれる。

 暖かな空気に包まれながら、お茶会は進んでいくのだった。


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