表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
21/34

21話 SIDE:クリフォード王太子(ポンコツ王子)

【今回の再登場キャラ】

■クリフォード・エンバークラウン … エンバー王国の第一王子でレイヴンの元婚約者。

■セドリック&ロザリンド・エンバークラウン … エンバー王国の国王夫妻。

■ルシアン・ヴァンキッシュ … ヴァンキッシュ家の長男でレイヴンの義兄。父であるヴァンキッシュ伯爵の回想でちょっとだけ登場。


 レイヴンへ婚約破棄を言い渡した翌日の事。

 クリフォード王子は国王夫妻に謁見の間へ呼び出しを受けていた。


「クリフォードよ、お前には一週間の謹慎を言い渡す」


 父親であるセドリック国王にそう告げられ、クリフォードは声を荒げる。


「なっ! ち、父上、どうして私が!?」

「聖女との婚約を勝手に破棄したのだ、罰があるのは当然だろう!」

「たかがそれだけで? 聖女という立場を得て調子に乗っている平民を、ちょっと懲らしめただけでしょう! 私は何も悪くない!」


 それがクリフォードの本音だ。

 どんな場面でも尊重されるべきは王太子である自分であり、周囲の人間は自分の思い通りに従ってしかるべき存在だと、彼は本気で考えている。


「そもそも聖女なんて、格式ばった伝統だけの存在! そんなものをいつまでも有難がっている方がおかしいんだ!」

「こ、この愚か者が……っ!」


 伝統と精霊教を軽視した発言に、流石の国王も絶句する。


「いいから謹慎して反省していろ! 王太子の身分も一旦はく奪する!」

「そ、そんなバカな!」


 王太子ではなくなる――。

 自分を選ばれた人間だと考えるクリフォードにとって、それは耐えがたい屈辱だと感じられた。


「私を王太子から外してどうするつもりなのですか!? まさかあのローランドを――っ!」


 その想像は、クリフォードをさらに不愉快にする。

 半分は平民の血である弟が、自分の立場を奪うなどあってはならない。


「一旦と言っておるだろうが! まったく、我が子で王太子の資格があるのはお前しかおらん。だがこのままでは示しがつかんのだ、我慢しろ!」

「ぐぬぬ……どうして俺様がこんな屈辱を……!」


 かつてない怒りを感じ、体の震えが収まらないクリフォード。

 その様子を見かねた様子で、国王の隣にいたロザリンド王妃が息子に声をかける。


「クリフォード、私達も貴方が憎くてやっているわけではないの。だけど聖女との婚約破棄というのは、それほど大きな問題なのよ」

「は、母上、しかし……」

「これは貴方を守るためなの。お願いだからしばらくは自重して、おとなしくしておいてちょうだい。いずれほとぼりが冷めれば、また貴方を王太子に戻すから」

「くっ……わ、分かりました。言われた通りにします……」


 母親にそうまで言われ、無理やり納得するしかなくなったクリフォード。

 噴出しそうになる怒りを抑え、謁見の間を退出したのだった。


 * * *


「くそっ! くそっ! くそっ!」


 激憤冷めやらぬまま自室に戻ったクリフォードは、手当たり次第に物に当たる。

 机の上の物をぶちまけ、棚から花瓶を落とし、本を手に取っては周囲に投げつけた。


「きゃあっ!」

「お、おやめ下さい殿下!」


 飛んできた本に当たりそうになったメイドが悲鳴を上げ、他のメイドがクリフォードを制止する。

 だが――。


「うるさいっ! 俺様に口答えするな!」


 クリフォードは落ち着くどころかさらに興奮が増したようだ。


「おのれ、許さんぞレイヴン! どうにかしてアイツを懲らしめなきゃ気が済まん! 何か方法は……そうだ!」


 何かを思いついた様子で、彼がメイドに命令する。


「おい誰か、ルシアンを呼んで来い!」

「は、はいぃいっ!」


 怒鳴られ慌てて飛び出していくメイドたち。

 そして十分後――。


「お呼びでしょうか、クリフォード殿下」


 やってきたのは――痩躯でアッシュブロンドの、無表情で感情を読み取りにくい印象の青年。

 どうやら彼が、クリフォードの言うルシアンという人物のようだ。 


「おいルシアン! 何なんだお前の妹は!?」

「妹というと……レイヴンが何かしましたか?」


 ルシアンと呼ばれた人物から、レイヴンの名前が出た。

 妹――という発言通り、彼はレイヴンの義兄に当たる人物である。

 フルネームはルシアン・ヴァンキッシュ――ヴァンキッシュ伯爵家の長男だ。


「アイツのせいで俺様は謹慎処分を受けたんだ! ふざけるな! 絶対に許さんぞ!」

「さようでしたか。それで……私に何をお望みでしょう?」


 表情をピクリとも動かないまま、淡々と尋ねるルシアン。

 対照的にドスドスと足を踏み鳴らし、怒りを隠さないクリフォード。


「決まってるだろう、アイツを何とかしろ!」


 抑えきれない感情と共に、ついにレイヴンに対する報復の指示を出した。

 とはいえその内容はまだ曖昧だ。


「何とか……とは?」

「何でもいい! 俺様が感じてる屈辱を、あの女にも味あわせないと気がすまん! どんな方法でもいいから俺様と同じ、いや、それ以上の罰を与えるんだ!」


 ルシアンが詳細を尋ねるも、クリフォードは「何とかしろ」と繰り返すのみ。


「そうですか……でも、本当に構わないのですか? 仮にも義妹は聖女なのですが……」


 いまだ何の感情も見せないルシアンが、事に及んだ際に発生する当然の心配を口にする。


「構わんといってるだろう、ルシアン!」


 だがクリフォードは何も意に返さない様子。


「だいたいそれも気に食わんのだ! 黒い髪に生まれただけでちやほやされやがって! いいからやれ! 何でもいいからアイツを酷い目に合わせてやるんだ!」

「……初めてですね、殿下が直接害を与えるよう指示するなんて」

「何だ? 気に食わんとでもいうつもりか?」


 自分に意見する気なら許さん!

 そんな不遜な気持ちでルシアンを睨むクリフォード。

 だが――


「――いえ、望むところです」


 今まで無表情だった彼が、ニヤリと笑った。

 口角をねっとりと歪ませたその笑顔は、陰湿な喜びに満ちているかのようで――。


「――――っ!」


 流石のクリフォードも思わず息を呑む。

 だが――それも一瞬の事。

 気付けば元の無表情に戻り、恭しく頭を下げるルシアン。


「私にお任せくださいませ、必ずや妹に鉄槌を下してみせましょう」

「おっ、そ、そうか……」


 先ほどの笑みが引っかかった様子のクリフォード。

 だが――


「ま、まあいい。頼んだぞルシアン」


 ――結局あまり追及する事もなく、クリフォードは全てルシアンに丸投げする。

 何処まで行っても自分本位で、深く考える事ができない人間のようだ。


Wiz~ニセ魔法使いの事件簿~ 第2巻が発売中!

【あらすじ】

超能力者が生まれ始めてから20年経った日本。

誰よりも超能力者に憧れ、だけどなれなかった少年が選んだ未来は――。

己の優れた推理力を超能力と言い張り、ニセモノの超能力者になる事だった!

正体がバレたら一発アウトの『超能力×コメディ×ライトミステリ』!!!


https://tobooks.jp/contents/21680

Amazonや各電子書籍サイトでも購入できます!

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ