第6話:ロミオ×ロミオ
これもだいぶ昔書いたやつです。
「はぁ?! ドウイウ事?!」
父の言葉に啼石玲 は素っ頓狂な声を上げた。
「だから、そのぅ……会社潰されそうだから、潰される前に反撃しようって話だよ。まあ、正確には乗っ取られそうてのが正しいんだけど」
「そりゃ父さんの会社が潰されたら僕だって学校通えなくなるし、色々困るけど……反撃したい気持ちも解らなく無い。けどさ、何で僕がその敵会社に入社しなくちゃいけないんだよ! しかも僕高校生なんだけど!」
玲はそう言ってダイニングテーブルに憤るまま拳をダンと振り下ろした。
「年齢のや履歴の事はどうにかする。厎 ホールディングスはウチをM&Aするために人手が足りないのか、ちょうど中途採用の募集を出してるから頼むよ! ちょっとそれでウチの事なんか構ってられ無い状況にしてくれるだけで良いからさ?」
そう言って玲の父である章 は頬に人差し指を当ててウインクをした。
「何サラッとドラ○もんにすがるのび太みたいな口調で恐ろしい事言ってんだよ! ウチに構ってられないような状況って犯罪的な匂いしかしないし! それに履歴詐称の時点で犯罪だし! 僕を巻き込まないで自分の啼石商事の所の社員使えばイイじゃん!」
「え、犯罪だから他人引き込むわけにはいかないからお前に頼んでるんじゃないか」
「自覚アリかよ! もっとタチ悪りぃ! やだよ僕、そんな事絶対やんないからね」
玲はやってられないと言わんばかりに章に背中を向けてダイニングのあるリビングを立ち去ろうとすると、その背中に再び声が掛かる。
「あれれー? 行っちゃうのかぁ? 俺、この話のついでにちょっとお前の私物らしい拾い物したから渡そうと思ったのにぃ?」
章の言葉にふと足を止め振り返る玲。
「僕の……私物?」
嫌な予感がしつつ意味ありげに笑う父の顔を見ていると、章はおもむろにA4サイズの茶封筒を取り出して机に置いた。
「これ、お前のだろ?」
「はっ……?」
そして茶封筒の中から何枚もの『紙』を取り出す。どうやら写真のようだ。
それに嫌な予感を覚えて青褪める玲。
机の上に広げられた写真――そこにはノリノリで女装する玲が写っていた。それは玲の密やかな趣味の自撮り写真だった。
「いやぁ、父さんビックリしたなぁ。息子にこんな趣味があるなんて。ん? 父さんは別にこういうのに偏見は無いぞ? 寧ろ良く撮れてると思って皆に自慢したいくらいだよ。女装も見事にこなす……寧ろ女の子並みに可愛くなれるイケメン息子とか、俺と母さんの遺伝子イイトコ取りだな。俺親馬鹿だから部下や友達に自慢したくなっちゃう」
「止めて」
さっきの態度は何処へやら。掌を返して咄嗟に涙目で父に縋る玲。
「どうして? 自分の子供が可愛いって自慢するだけだよ? 写真付きで」
「ヤダヤダ。俺の人生終わっちゃうし、て言うかどこでそれ手に入れたの?!」
「玲と父さん、同じ機種の携帯使ってたよな? 先日ソファに置きっぱなしになってるのを自分のだと思って開いたら……こんなかわいい写真がいっぱい写ってて母さんと……」
「見たの?! 二人で!!」
「いや、母さんと見ようと思ったけど……息子の私物だから見なかった事にしようと思ってね」
「じゃあ、そこに写真があるのは?!」
「個人的に欲しかったから、つい……ね? しかし自慢したくなるほど可愛いなーきれいだなー。メイクも完璧じゃないか。ウチの秘書課にもこんな可愛い子居ないぞぉ?」
「脅してんのか?」
「んー? 何の事?」
「止めろよ。止めてくれよ。頼むから……」
玲が戦慄しながら懇願する。
「そうそう、さっきの話の続きなんだけど……男のままだと顔が割れてるから、女の子として面接受けたら良いと思うんだよね。だって、厎ってお前の同級生に居る厎耀司 くんのお家の会社だから」
「はっ……耀司?! そういえばあいつの苗字“厎”っ……いつも名前呼びだからすぐに気付かなかった……!」
親友と言って良い程仲良くしている友人の存在を思い出し、玲はハッとする。
「……耀司くんはお前の趣味知ってるのか?」
章はそう言ってニヤリと笑った。いや、耀司に玲の女装趣味は明かしていない。どんなに親しくても話せる事と話せない事がある。
「っ……糞親父。僕は、これからどうすれば良いんだ?」
「良い子だ」
玲は父の脅しに屈した。
それから一ヶ月後。
女性用の黒いリクルートスーツに身を包み、栗色のロングヘア姿になった玲はビジネス街にそそり立つ『厎ホールディングス』本社前に立っていた。
これから中途採用の面接を受けるのだ。
【続…かなかった】
昔、シリーズ予定で考えた話は、大体エタってます。
何故なら、その頃の私は、連載小説は掲載直前に書かれていると思ったからです!
毎日執筆し公開できない自分はダメなやつだと思っていました…




