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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
第三章 黒銀の断罪機
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(25)蒼刃双舞

 「今…!」

 ルミナスフローラが光の翼を広げると同時に、プラズマブレードが展開された。青白い光刃が漆黒の宇宙を切り裂き、戦場全体が一瞬、その輝きに包まれる。


 アークトライデントは即座に反応し、赤い光の軌跡を描きながらビームを放った。その狙いは正確だったが、ルナの動きには迷いがない。スラスターを吹かし、まるで風に舞う羽のようにひらりと回避すると、そのまま敵の懐に突っ込んでいった。


 「私の勝ちです。」

 冷静な声とともに、プラズマブレードが一閃した。鋭い閃光が敵機の装甲を切り裂き、ビーム砲の砲身が真っ二つに割れる。爆発の余波が宇宙空間に広がり、アークトライデントはそのまま沈黙した。漂う機体からは、もはや戦闘の意志は感じられない。


 「二機目、撃破。」

 ルナの静かな報告が通信越しに響く。いつも通りの冷静さだったが、その声の奥には確かな達成感が滲んでいた。


 「ナイスだ、ルナ!」

 そう叫んだ直後、俺の背筋が凍りつく。遠距離から、バルディスが狙い澄ました一撃を放ってきた。眩い閃光が宇宙空間を裂き、ロードラストの右肩に直撃する。


 「くっ…!」

 激しい衝撃がコックピットを揺るがし、警告音がけたたましく鳴り響く。ディスプレイには赤い文字が浮かび上がる。


― RIGHT SHOULDER ARMOR DAMAGED ―


 「リュウト、大丈夫!?」

 アヤカの焦った声が通信越しに届く。だが、右肩の装甲がやられたぐらいで止まるわけにはいかない。歯を食いしばりながら操縦桿を握り直す。


 「まだやれる!アヤカ、援護を頼む!」

 俺の指示にアヤカが即座に反応する。だが、バルディスの動きは緻密で計算され尽くしていた。距離を取りながら正確に射撃を重ね、じわじわと俺を追い詰めてくる。


 「リュウトさん、相手が撃つ際に一瞬の間があります。そこを狙ってください!」

 ルナの冷静な声が通信に入る。その言葉に背中を押され、俺は必死にバルディスのエネルギー充填パターンを見極める。ディスプレイ越しに狙いを定め、息を飲んだ。


 「今だ!」

 全力でスラスターを吹かし、ロードラストを横へ跳躍させる。直後、バルディスが放った光線が眼前をかすめた。宇宙の闇を一瞬だけ白く染める閃光。ギリギリの回避だった。


 「危ねぇ…!」

 背筋に冷や汗が伝う。だが、ここで終わらせるわけにはいかない。


 左腕のスターリス・ランスを起動。青白い光が槍の先端を包み込み、視界の端で輝く。ディスプレイの中心には、バルディスが映っている。狙いは定まった。


 「ランス、発射!」

 俺は操縦桿を押し込み、スラスターで一気に距離を詰める。ランスは一直線にバルディスへ飛び、鋭い金属音とともに肩部装甲を貫いた。衝撃で敵機がよろめく。


 「おっしゃ!命中だ!」

 ワイヤーを巻き取り、ランスを回収しながら姿勢を整える。その瞬間、アヤカの声が通信に飛び込んできた。


 「ナイスよ、リュウト!あとは任せなさい!」

 バスターディガー改がスラスターを噴かし、バルディスに向かって突撃する。その巨体が光を背負いながら迫る姿は、まるで隕石のようだった。


 「くらえぇぇぇ!!」

 アヤカが振り上げたマグネティックハンマーが、バルディスの胴体に炸裂する。重たい衝撃音が宇宙に響き、装甲が砕ける。火花が舞い、敵機の動きが止まる――かと思われた。


 だが、その時。


 バルディスの機体がわずかに動き、スラスターを吹かした。瀕死の状態でも、まだ戦う気でいるのか。俺たちは思わず息を呑む。


 「なんてタフな奴だ…!」

 焦燥感が胸を締め付ける。だが、その緊張を打ち破るように、ルナの静かな声が響いた。


 「私が仕留めます。」

 その一言が戦況を決めた。ルミナスフローラが青白い光を纏い、彗星のように駆け抜ける。その速度は圧倒的で、まるで宇宙の闇に道を切り開くかのようだった。


 「プラズマブレード、最大出力。」

 ルナの声が響いた瞬間、光刃がさらに輝きを増し、バルディスの中央を鮮やかに切り裂いた。


 敵機が完全に沈黙し、宇宙空間に漂い始める。最後の爆発の閃光が戦場に幕を下ろし、静寂が訪れた。


 「バルディス、撃破。」

 ルナの報告が静かに響く。その声を聞いた瞬間、ようやく俺たちは息をついた。


 「終わった…」

 アヤカが深く息を吐く。ディスプレイに映る敵影は、もうどこにもない。戦いの終わりを示すように、観客席から大歓声が沸き上がる。


 セレナの解説が会場に響き渡る。「ルミナスフローラの制御技術も見事でしたが、ロードラスト・ヴァルクスの宇宙戦仕様への進化には目を見張るものがあります。ワイヤードリルアームと回収可能なランスという二つの武装が、無重力環境下での立体的な戦略を可能にしました。この結果は、技術者たちの努力の結晶と言えるでしょう。」


 拍手と歓声が、コックピット越しにも伝わってくる。その熱気に包まれながら、俺は操縦桿を握り直した。


 「宇宙での初勝利って…こんなにも胸が熱くなるものなんだな。」

 次の戦いが待っている。そう思うと、疲れが吹き飛ぶ気がした。

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