表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼月の軌跡  作者: チョコレ
第三章 黒銀の断罪機
96/190

(24)蒼翼疾風

 タイガーマークが沈黙し、戦場に一瞬の静寂が訪れた。けれど、それは束の間の休息に過ぎない。次の瞬間、空気が張り詰めた。ドイツ代表の中距離型機体「アークトライデント」がゆっくりと動き出し、エネルギーキャパシターが赤い光を放ちながらチャージを開始する。その光の強さが、次の一撃の威力を物語っていた。


 「次は、あれですね…」

 通信越しに聞こえたルナの声は、いつも通り冷静だった。でも、その奥には闘志が燃えているのが伝わる。ディスプレイ越しに映る彼女の瞳には、一切の迷いがなかった。


 「ルナ、下がれ!」

 俺は思わず叫んだ。でも、ルミナスフローラは微動だにしない。


 「大丈夫です、リュウトさん。ここは私が引き受けます。」

 ルナの声ははっきりとしていた。その確信に満ちた言葉に、俺の中に渦巻いていた不安が、少しずつ霧散していくのを感じる。


 「お前か…」

 オープンチャンネル越しに、ドイツ代表の通信が入った。冷笑交じりの声が響く。


 「ルナフロント最強と評されたゼファーの機体と戦ったというのは…だが、恐るに足らない。リミッター解除だと?出力を一時的に引き上げるだけの手法で、何ができる?」


 その挑発に応えるように、アークトライデントが赤い光を纏ったビームを放った。空間を裂くような閃光がルナを狙う。


 「仰る通りかもしれません。」

 ルナの声は静かだった。次の瞬間、ルミナスフローラのスラスターが唸りを上げる。閃光が迫る――けれど、ルナの機体はまるで光そのものになったように横へと跳び去り、ビームは虚空を切り裂いた。


 「確かに、リミッター解除は諸刃の剣です。短期決戦を強いられる不安定な手法――百も承知です。でも…」


 通信越しのルナの声が、鋭さを増す。

 「あなたは、本当に私を狙い撃つことができるのですか?」


 「な、何を言っている…?」

 ドイツ代表の声がわずかに震えた。


 「リミッター、解除。」

 ルナが静かに告げた瞬間、宇宙そのものが波打ったような錯覚を覚えた。ルミナスフローラの背部から、青白い光の翼が展開される。その輝きは暗闇を切り裂き、戦場の空気を変えた。


 「オーロラウィング、展開。」

 ルナが言葉を発すると同時に、ルミナスフローラが残像を伴いながら高速で移動を開始した。その軌跡が、まるで幾何学的な模様を描いていく。


 「な、なんだこれは……?!」

 ドイツ代表の驚愕の声が通信越しに響く。センサーが攪乱され、ルミナスフローラがまるで何機にも分裂したかのように錯覚させる。その数は二体、三体…いや、それ以上。もはや本体を見極めることなど不可能に思えた。


 「くそっ!センサーが狂っているのか!」


 焦燥に満ちた叫びが響く。アークトライデントは必死にビームを乱射するが、そのすべてが虚しく光の残像を切り裂くだけだった。


 ルミナスフローラはさらに速度を上げ、旋回しながら敵機の周囲を取り囲む。すべての動きが、敵の死角を突く完璧なものだった。俺はその光景を見て息を呑んだ。


 「宇宙の無重力環境だからこそ、この機体の真価が発揮されます。」

 通信越しに聞こえるルナの声は、まるで勝利を確信しているかのように落ち着いていた。


 「どれが本物だ!?どれだ!?」

 ドイツ代表の叫びが響く。その混乱を見逃すルナではなかった。


 ルミナスフローラが一気に加速し、アークトライデントの背後に回り込む。その軌道にはもはや迷いの欠片もない。


 「終わらせます。」

 その言葉が、静寂を切り裂く合図だった。

ページを下にスクロールしていただくと、広告の下に【★★★★★】の評価ボタンがあります。もし「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、評価をいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!


@chocola_carlyle

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ