(6)宇宙契約
そっから先は、まさにカオスの宴だった。テーブルには豪華な料理が並び、飲み物が次々に注がれ、あちこちから笑い声と乾杯の音頭が飛び交う。雰囲気だけは高級パーティーっぽいけど、実態はみんな自分たちの話題で盛り上がってるだけだった。まあ、俺たちの優勝を祝うって名目はどこへやら。
特に目立ってたのが京都チームの西園寺。酔っ払った勢いで、ルナに何度も「一緒に写真を撮るんやさかい!」って絡むもんだから、こっちは見てるだけでハラハラした。ルナは困ったような笑顔を浮かべてたけど、その表情からして限界が近いのは明らかだった。
「西園寺、その辺に!」
その声とともに現れたのは、西園寺のタッグパートナーで剣道と合気道の達人、藤堂だ。噂に違わぬ動きで見事に酔っ払いを押さえ込む様子に、会場から「おおー!」と感嘆の声が上がる。でもまあ、こうやって他人の泥酔を抑えるのって、想像以上に大変そうだな。
そんな賑やかな時間もやがて終わり、俺たちは荷物を持って移動しようとした時だった。会場出口で待ち構えていたのは――御影。神戸重工業の御曹司にして、このパーティーを企画した張本人だ。
アヤカが一歩前に出ると、落ち着いた声で切り込んだ。「今日はありがとうございました。おかげでいい時間が過ごせました。でも、御影さん。この祝賀会を企画した本当の狙いは何なんですか?」
ストレートすぎる問いかけに、俺は少しヒヤッとしたが、御影は肩をすくめながら笑みを浮かべた。
「関西の誇りを祝いたい…というだけではダメかな?」
その言葉にアヤカがじっと視線を投げかけると、御影は苦笑いを浮かべて続けた。
「わかった、もう少し素直になろう。実はスポンサーの申し出をする場を作りたかったんだ。」
「スポンサー?」俺は思わず心の中で反応する。でた、金持ち特有の「支援」という名の条件付き提案だ。
御影はさらに続ける。「次の世界大会は宇宙ステーションの無重力アリーナだろう?これまでの地球環境とはまるで違う、新しい機構が必要になる。君たちがそこで戦う姿は、神戸重工業の未来を象徴するものになる。そして、その技術力を示す絶好の機会でもある。」
その言葉には、悔しさも含まれていた。タイタンギアで俺たちに負けたことが、彼にとってどれだけ痛手だったのかが伝わってくる。でもその感情を隠しながら、御影はさらに提案を続けた。
「だからこそ、君たちの機体改修を全て無償で引き受けたい。ただし、条件がある。」
「条件?」アヤカが腕を組んで問い返す。
「君たちが世に出る時、神戸重工業の名前を前面に出してほしい。そして、機体にも弊社ロゴを刻ませてもらいたい。それだけでいい。」
俺は思わず口を挟んだ。「え、ロゴ載せるだけで、そこまでやってくれるの?」
御影は静かに頷く。「その通り。宇宙開発へのアピールとしてこれ以上のチャンスはない。君たちの活躍が、私たちの未来を切り開く手助けになるんだ。」
その言葉には妙な説得力があった。アヤカは疑い深そうな表情を浮かべながらも、少しだけ頷いた。
「…でも、それって本当に無償?あとで何か裏があるとか…」
御影は軽く笑った。「その疑り深さも悪くない。でも安心してくれ。これが全てだよ。ただ、時間が惜しいから一つお願いがある。」
「お願い?」ルナが小首を傾げると、御影は少しわざとらしく肩をすくめた。
「君たちの機体をここから弊社神戸工場に直送させてほしい。今は十二月、世界大会は三月だ。一秒でも早く始めないと間に合わないからね。」
俺たちは顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。「結局、全部計算づくかよ。」そう呟きながらも、その提案に感謝せずにはいられなかった。
「…わかった。よろしくお願いします。」俺がそう答えると、御影は満足そうに頷いた。
これで俺たちの次の戦い――宇宙での無重力アリーナという新たな挑戦が、本格的に動き出した。夢の続きが始まる。この胸の高鳴りを、俺はずっと忘れないだろう。
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