(2)護送絆旅
護送列車に乗り込むと、そこには全国大会で戦った面々がずらりと並んでいた。広い車内は活気に溢れ、あちこちで笑い声が響いている。列車は日本を横断するルートで運行されていて、全チームが一斉に帰れるスケジュールになっているらしい。どうやら旭川市としても全国のメンバーを滞在させることでプロモーション効果を狙ったとかなんとか。それもあって、俺たち以外のチームは大会後にスキーやスノボを満喫したらしい。
「くそ、俺たちも滑りたかったなぁ。」車窓の外に流れる雪山を見ながら思わずつぶやく。あの雪原で散々戦ったってのに、遊ぶ余裕なんてまったくなかったんだから。
「何、スノボでも始める気?」隣のアヤカが俺の表情を見て笑う。「でもリュウト、板に乗るの下手そうじゃん。」
「うるせぇ。」俺は軽く肩をすくめた。「アヤカだってスノボとか絶対無理だろ。」
「は?あたしにできないことなんてないの!」彼女は鼻を鳴らして自信満々だ。その様子に思わず笑ってしまう。
車内では他のチームとも会話が弾んだ。特に関東ブロック代表のアイドルグループみたいな若手女子三人のチームが盛り上がっていて、ルナに話しかけている姿が目立つ。
「ルナさん!ルミナスフローラ、ほんっとに美しかったです!戦闘中でもあの流線形、荘厳さを感じました!」
「私たちの次のPVにぜひ出演してほしいんです!」
彼女たちの勢いに、ルナは困惑したように目を丸くしながら、控えめに答えていた。
「あ、ありがとうございます…」
ルナの顔が少し赤くなっているのを見て、アヤカが腕を組んでふんっと鼻を鳴らした。
「機体の見た目が綺麗だからって、ムーンギアバトルで勝てるわけじゃないんだから!」
その拗ねたような口調に、俺は肩をすくめるしかなかった。
列車の中では、他にもいろんなやり取りがあった。行きの護送列車では煽りまくってきた大分チームが、今回はやけに穏やかだ。
「スペースポート同士、今後は仲良くやろうぜ。」
そんな風に握手を求められて、俺は少し照れ臭くなりながらも応じた。
また、中四国エリアの代表だった鳥取チームからは熱い誘いがあった。
「もし世界大会で三位までに入ったら、次はルナフロントでの月面大会が待ってるだろ!その時は鳥取砂丘で月面環境を再現して試験しようぜ!」
俺は軽く笑いながらも心の中でツッコんでいた。砂丘で試験って、そりゃお前らにメリットがあるだけだろ。でも、なんだかんだでこういう提案も悪くないのかもしれない。
そして同時に、俺の心の中では気持ちがもう一つ渦巻いていた。宇宙ステーションでの世界大会、もし勝てば、その先にある月面大会。ただスペースポートでジャンクをいじっていた日々が、なんだか遠い過去のことのように思える。いつの間に俺たちはこんな大きな舞台に立つようになったんだ?
ふと、隣でアヤカが窓の外をじっと見ているのに気付いた。
「なぁ、アヤカ。」俺は思い切って口を開いた。「俺たち、本当にここまで来たんだよな。」
「何、今さら。」アヤカは俺を振り返り、呆れたように笑った。「でも、まだ終わってないでしょ?世界大会も、月面大会も待ってるんだからさ。」
その言葉に、俺は自然と笑みを浮かべた。そうだ、まだ終わりじゃない。俺たちの旅は、まだ始まったばかりだ。
列車が次第に減速し、車内放送が次の停車駅を告げた。「次は第二神戸駅です。」アナウンスの声に、俺は少し背筋を伸ばした。ここからまた、新しい挑戦が待っている。それでも、今は一瞬だけ、この穏やかな時間に身を預けておこうと思った。
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