(33)覚醒対話
鋭い痛みが頭を貫く。
「くそ…なんだよこれ…」
目を開けると、視界を突き刺す白いライト。ここは、医務室か。体を起こそうとした瞬間、全身にずっしりとした重みと鋭い痛みが走る。
「アヤカは!?ルナは!?」
混乱と焦りで心臓が暴れ回る。
「ちょっとリュウト!動くなって!」
隣からアヤカの声。視線を向けると、少し疲れた顔で椅子に座っていた。でも、その目には安心したような光が浮かんでいる。
「テロリストは…どうなったんだ!」
さらに問いかけると、アヤカが静かに微笑んだ。
「無事に退けられたよ。あんたのおかげでね。」
「俺の…おかげ?」
混乱がさらに深まる。俺がどうこうできたってのか?
「報告を先ほど受けたのですが、敵機は無人機だったようです。」
ルナの冷静な声が響く。
その言葉に、俺はしばらく呆然とした。
「無人機…?」
暴走したロードラストで、ネザーファングに立ち向かって、そして爆発して。
でも、相手は人が乗っていなかった。
「そうか…」
思わず息を吐き出す。
テロリストとはいえ、人を殺さずに済んで、本当に良かった。
人殺しなんて、絶対にごめんだ。
「二人とも無事で、本当に良かった…」
体の重さを感じながら呟くと、アヤカとルナが小さく頷いた。
「そういえば、ゼファーは?」
ふと浮かんだ疑問を口にする。
「付き人二人と一緒に、北海道の軌道エレベーターで月に帰っていったよ。」
アヤカが肩をすくめながら答える。
「そっか…」
自然と胸が軽くなる。
共闘した三人が、無事に生き延びていたことが何より嬉しかった。
「で、全国大会の結果はどうなったんだ?」
テロが乱入する前は決勝戦の真っ最中だった。
その結末がずっと気になっていた。
「テロで大会が中断されたこともあって、あたしたちとゼファーのチーム、両方とも世界大会に進出決定だってさ。」
「え、俺たちも?」
思わず声が裏返る。
「それで、賞金は半分ずつって話になったんだけど、ゼファーのチームは辞退したんだって。」
「辞退?」
「まあ、そりゃそうでしょ。ルナヴァルド社の次期CEO候補、世界一の大金持ちが賞金なんて気にするわけないじゃない。」
その言葉に、思わず苦笑する。
確かにゼファーが金なんか必要とするとは思えない。あいつが欲しがるのは、月や地球をひっくるめた壮大な未来とか、そんな規模の何かだろう。
「兄とは、世界大会で決着をつけます。」
ルナが静かに、でもはっきりとそう言った。その瞳には強い決意が宿っている。
「兄には兄の正義があり、守るべきものがあると分かりました。でも、次に会った時には父を止めるよう説得します。私を認めてもらい、ヴァルド家の一員として対等に向き合うために。」
ルナの言葉に、俺は小さく頷いた。
彼女が抱える覚悟の一端が見えた気がする。
でも――
(ルナリウム解放計画って、結局なんなんだろうな。)
月で彼女が見たデータのことが気になるけど、今はいいか。ゼファーが言っていたように、ただの次世代ルナドライブ開発計画の可能性もあるし。
にしても、あのルシウスCEOのスピーチ、毎回壮大すぎるんだよな。
マジで詩集か何かかよ。
「何はともあれ、次は世界大会だな。その前に、全国大会の優勝賞金で、スペースポートのみんなに、アヤカのバスターディガーを作るために使った重機を新品で買い戻さなきゃ。」
俺は苦笑しながら言った。
「人生で一番高い買い物になりそうでワクワクするわね!」
アヤカが明るく笑う。その笑顔に、少し緊張がほぐれる気がした。
「もし次の世界大会で優勝したら、これまでお世話になった皆様にもっと大きな恩返しをしないとですね。」
ルナも柔らかく微笑む。その表情が、どこか安心感を与えてくれる。
(よかった。本当に――よかった。)
こうして笑い合える今があることに、心の底から安堵する。
あのテロリストを食い止められた。それだけで、十分だと思えた。
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