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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
第二章 双月の覚醒機
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(30)雪闘巨影

 ネザーファングの巨大な影を睨みつける。あの重装甲の機体は、雪山の静けさと美しさをぶち壊す異質な存在だ。戦場の冷たさは気温のせいじゃない。あいつが放つ圧倒的な威圧感が、周囲の温度をさらに下げているようだった。


 「行くぞ!」


 俺はロードラストのショルダーカノンを構え、砲撃を放つ。

 

 轟音。


 雪煙が舞い上がり、砲弾がネザーファングの装甲を直撃する。

 しかし、奴は微動だにしない。


 「どんだけ硬いんだよ、こいつ…要塞かよ…。」


 「リュウトさん、援護してください!」


 通信越しにルナの声が響く。

 ルミナスフローラが青白い光を纏い、熱振動ブレードを構えて突進。


 「アヤカ、今だ!側面を取れ!」


 俺の叫びと同時に、アヤカのバスターディガーが大きく回り込み、ランスクレーンを突き出す。狙いはネザーファングの脚部。


 「これでどうよっ!」


 アヤカの叫びと共に、ランスクレーンが奴の脚部に食い込む。


 「無駄だ。」


 冷徹な声が通信越しに響いた瞬間、ネザーファングが体をひねる。絡みつくバスターディガーを、無造作に振り払った。


 アヤカの機体が雪に沈む。


 「アヤカ、大丈夫か!?」


 ディスプレイ越しにバスターディガーが姿勢を立て直すのが見えた。


 「まだまだいけるっての!」


 アヤカの強がる声。

 少しだけ、ほっとする。

 だが、油断はできない。


 その間にも、ルナのルミナスフローラが、接近戦を仕掛けていた。熱振動ブレードが唸りを上げ、ネザーファングの肩部装甲を狙う。しかし、奴の装甲は異常に硬い。ブレードを押し込んでも、傷一つつかない。


 「くっ……!」

 ルナが悔しそうに呻く。


 「なら、これだ!」


 チェーンソーアーム、起動。

 奴の脇腹を狙う。歯車のような刃が、装甲に食い込む――その瞬間。


 奴が反応した。


 「しまっ――!」


 振り上げられた巨大な腕が、ロードラストを襲う。間一髪でかわしたものの、急旋回で機体がバランスを崩す。その隙に、ネザーファングの砲口が俺を捉えた。


 「危ない!」


 アヤカのバスターディガーが猛スピードで突っ込む。

 ロードラストを横に押し飛ばした――同時に。


 轟音。


 ネザーファングの砲撃が、アヤカの機体を直撃。黄色いパーツが吹き飛ぶ。バスターディガーは、そのまま雪に沈んだ。


 「アヤカ!」


 叫ぶ。だが、応える声は、ない。ディスプレイに映るバスターディガーのランプが、次々と消えていく。黄色い機体が、完全に沈黙した。


 「くそっ…アヤカ!応答してくれ!」


 返ってくるのは、ノイズだけ。

 胸が、ぎゅっと締め付けられる。


 「残るは…ルナヴァルドの小娘だけか。」


 冷たい声が、通信越しに突き刺さる。

 その言葉が、俺の焦りに火をつけた。


 「くそっ…動け!動けよ!」


 必死に操縦桿を引く。だが、ロードラストは動かない。それどころか、モニターに、赤い警告が次々と浮かび上がる。


 "WARNING: LUNAR DRIVE UNSTABLE

 "ALERT: OUTPUT NEAR LIMIT"

 "EMERGENCY: FAILSAFE OVERRIDDEN"


 「なんだこれ…!」


 画面を睨みつける。

 何が起きているのか、全くわからない。


 ただ、ヤバい。


 それだけは、本能でわかる。

 警告音が鳴り響く。


 さらに赤いメッセージが追加されていく。


 "CRITICAL: ENERGY CORE DESTABILIZED"

 "OVERRIDE: EMERGENCY POWER SHIFT"


 「マジでどうなってんだよ!」


 機体全体が、激しく振動する。

 操縦桿から伝わる感触が、異常だ。

 まるで、生き物が暴れ出しているような。

 そんな嫌な予感が、全身を駆け巡る。


 "DANGER: OUTPUT EXCEEDING LIMITS"

 "OVERRIDE: DRIVE EMERGENCY MODE"


 エネルギーメーターが振り切れる。

 ディスプレイ上の針や数字が暴れ回る。

 ロードラスト全体が、脈打つように震えた。


 まるで――

 何かが、目覚めたかのように。

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