(28)金輝絶壁
ゼファーの付き人、アイリスとエレスティの反応がディスプレイから消えた。その瞬間、戦場を覆うのは、沈黙と喪失感。無力感が胸に重くのしかかる。
だが――
静寂を切り裂くように、黄金の閃光が走った。ゼファーのソレイユヴァンガードが、黄金の光をまとい、突進する。まるで太陽が、その輝きを具現化したかのように。その姿は、戦場のすべてを圧倒していた。
しかし、胸の奥に渦巻く不安は、消えない。
「ゼファー…!」
呼びかけようとした言葉は、喉元で詰まる。視界の先にそびえ立つのは、灰色の巨影、ネザーファング。その無傷の装甲。その圧倒的な存在感。ただ立っているだけで、絶望を、現実へと変えていく。
「貴様あああ!!」
ゼファーの怒声が、通信越しに響き渡る。
その叫びには、覚悟と執念が宿っていた。
黄金のブレードが光を帯び――
一閃。
一瞬の閃光が、ディスプレイを染める。
その鋭さに、希望の火が灯る。
だが――
「効かない……!」
ネザーファングの灰色の装甲に弾かれ、火花が散る。巨体は一歩も動かない。まるで、その存在が無敵そのものだと宣言しているかのように。
「くそっ……!」
操縦桿を握る手に力が入る。
何もできない自分への苛立ち。
ゼファーは命がけで戦っている。
なのに、俺は、ただ見ているだけ。
ソレイユヴァンガードはなおも突進と回避を繰り返す。その黄金の光は、戦場を切り裂こうとするが、ネザーファングの反撃は、容赦なく正確だった。戦場全体が、灰色の巨影に呑まれていく。
「逃げろ!!」
思わず叫ぶ。
だが、コックピット内に虚しく響くだけ。
ネザーファングの砲口が、静かに光を集め始める。
ゼファーを狙い撃つ――。
「シールド展開!!」
ゼファーの冷静な声が響く。ソレイユヴァンガードの胸部から、眩い光が放たれる。エネルギーシールド、展開。それは砲撃を受け止めるはずだった。
しかし、シールドは砲撃に触れるや否や、一瞬で砕け散る。炸裂音が戦場を揺るがす。ソレイユヴァンガードの機体が、大きく揺れた。
「動かない…!」
ゼファーの震える声が、通信越しに漏れ出す。
灰色の巨体、ネザーファング。
その砲口が、再び光を集める。
狙いは完全にソレイユヴァンガード。
「これが…私の限界か…」
ゼファーの呟きが、通信越しに届く。
その声には、諦めと静かな後悔が滲んでいた。
「アイリス、エレスティ…すまない…」
その言葉の重みが、胸に鋭く響く。
そして――ネザーファングの砲撃が、炸裂した。
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