表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼月の軌跡  作者: チョコレ
第二章 双月の覚醒機
65/190

(27)雪崩激闘

 昼間の雪山。

 澄み渡る青空に、反射する雪がキラキラと輝いている。

 本来なら、心奪われるほど美しい景色だ。


 でも、今は違う。


 この光景は、破壊の予兆だ。ネザーファングと名乗ったテロリストの巨大な機体。灰色の装甲を鈍く光らせながら、雪山の斜面をゆっくりと下りてくる。その足音は、地鳴りそのものだった。まるで、全てを踏みつぶす警告のように。


 純白の雪山に刻まれる、深く濁った傷跡。装甲の分厚さ、異様な重厚感。腕に備えられた無数の武器。 映画で見たような重火器の数々。ただひとつ、確信できることがある。あれは破壊のために作られた悪夢だ。


 「ゼファー様のお手を煩わせるわけには参りません。」


 通信が入る。冷静で、それでいて揺るぎない決意を秘めた声。ゼファーの付き人機のパイロットたち。


 「ゼファー様こそ、ルナフロントの、いや、人類の未来を担うにふさわしい御方。我らが先に参りましょう。」


 その言葉が、胸に突き刺さる。


 「待て!アイリス!エレスティ!」


 ゼファーの声が響く。冷静なはずの彼が、明らかに焦っていた。だが、二人は振り返らない。彼女たちの背には、ゼファーへの揺るぎない信頼と忠誠、そして彼を守ろうとする強い覚悟が滲んでいた。


 「おい!無策で突っ込むなんて――!」


 言葉が喉で詰まる。操縦桿を握る手に力を込めても、どうすることもできない。ただ、見ているしかない。その無力さが、体中に苛立ちとなって広がる。


 「あら、私たちが簡単にやられると思って?」

 「無思慮なのはどちらかしら?」


 煽るような口調。普段なら、ムカつく一言だ。

 でも、今は違う。これは、心配させないための言葉だ。


 「……頼むぞ。」


 自分に言い聞かせるように、呟く。

 だが、現実は容赦なく期待を裏切る。


 ネザーファングが動いた。両腕のガトリングガンが火を吹く。弾丸が雪を切り裂きながら轟音を響かせる。アイリスの機体が回避行動をとる。だが、ネザーファングの砲撃は執拗に追尾し、少しずつ追い詰めていく。


 「くそっ……!」

 思わず声が漏れる。

 しかし、それで何かが変わるわけじゃない。


 ディスプレイに映る二機の奮闘。

 俺には、ただ歯噛みすることしかできない。


 エレスティが側面に回り込む。反撃を試みるが、ネザーファングの装甲は、すべてを弾き返した。


 「装甲が…厚すぎる!」


 エレスティの叫びが通信越しに響く。

 その声が、戦況の絶望そのものだった。


 次の瞬間――

 ネザーファングがエレスティに向けてランチャーを発射する。


 爆音。


 雪煙が舞い上がる。

 エレスティの機体が――その中で、消えた。


 「エレスティ!」


 アイリスの声が悲痛に響く。

 彼女もまた、バランスを崩していた。

 雪山の縁へと追い詰められていく。


 最後の抵抗。

 脚部の爪型武器を繰り出す――

 しかし、ネザーファングの装甲には、まるで歯が立たない。


 それどころか――

 逆に蹴り飛ばされ、崖下へと消えていった。

 ディスプレイから、二機の反応が消える。


 その瞬間――

 胸が締め付けられるような痛みが走る。


 「アイリス…エレスティ…」


 通信越しに、微かな声が聞こえた。ゼファーの声。

 その声には、抑えきれない悲しみが滲んでいた。

ページを下にスクロールしていただくと、広告の下に【★★★★★】の評価ボタンがあります。もし「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、評価をいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!


@chocola_carlyle

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ