(27)雪崩激闘
昼間の雪山。
澄み渡る青空に、反射する雪がキラキラと輝いている。
本来なら、心奪われるほど美しい景色だ。
でも、今は違う。
この光景は、破壊の予兆だ。ネザーファングと名乗ったテロリストの巨大な機体。灰色の装甲を鈍く光らせながら、雪山の斜面をゆっくりと下りてくる。その足音は、地鳴りそのものだった。まるで、全てを踏みつぶす警告のように。
純白の雪山に刻まれる、深く濁った傷跡。装甲の分厚さ、異様な重厚感。腕に備えられた無数の武器。 映画で見たような重火器の数々。ただひとつ、確信できることがある。あれは破壊のために作られた悪夢だ。
「ゼファー様のお手を煩わせるわけには参りません。」
通信が入る。冷静で、それでいて揺るぎない決意を秘めた声。ゼファーの付き人機のパイロットたち。
「ゼファー様こそ、ルナフロントの、いや、人類の未来を担うにふさわしい御方。我らが先に参りましょう。」
その言葉が、胸に突き刺さる。
「待て!アイリス!エレスティ!」
ゼファーの声が響く。冷静なはずの彼が、明らかに焦っていた。だが、二人は振り返らない。彼女たちの背には、ゼファーへの揺るぎない信頼と忠誠、そして彼を守ろうとする強い覚悟が滲んでいた。
「おい!無策で突っ込むなんて――!」
言葉が喉で詰まる。操縦桿を握る手に力を込めても、どうすることもできない。ただ、見ているしかない。その無力さが、体中に苛立ちとなって広がる。
「あら、私たちが簡単にやられると思って?」
「無思慮なのはどちらかしら?」
煽るような口調。普段なら、ムカつく一言だ。
でも、今は違う。これは、心配させないための言葉だ。
「……頼むぞ。」
自分に言い聞かせるように、呟く。
だが、現実は容赦なく期待を裏切る。
ネザーファングが動いた。両腕のガトリングガンが火を吹く。弾丸が雪を切り裂きながら轟音を響かせる。アイリスの機体が回避行動をとる。だが、ネザーファングの砲撃は執拗に追尾し、少しずつ追い詰めていく。
「くそっ……!」
思わず声が漏れる。
しかし、それで何かが変わるわけじゃない。
ディスプレイに映る二機の奮闘。
俺には、ただ歯噛みすることしかできない。
エレスティが側面に回り込む。反撃を試みるが、ネザーファングの装甲は、すべてを弾き返した。
「装甲が…厚すぎる!」
エレスティの叫びが通信越しに響く。
その声が、戦況の絶望そのものだった。
次の瞬間――
ネザーファングがエレスティに向けてランチャーを発射する。
爆音。
雪煙が舞い上がる。
エレスティの機体が――その中で、消えた。
「エレスティ!」
アイリスの声が悲痛に響く。
彼女もまた、バランスを崩していた。
雪山の縁へと追い詰められていく。
最後の抵抗。
脚部の爪型武器を繰り出す――
しかし、ネザーファングの装甲には、まるで歯が立たない。
それどころか――
逆に蹴り飛ばされ、崖下へと消えていった。
ディスプレイから、二機の反応が消える。
その瞬間――
胸が締め付けられるような痛みが走る。
「アイリス…エレスティ…」
通信越しに、微かな声が聞こえた。ゼファーの声。
その声には、抑えきれない悲しみが滲んでいた。
ページを下にスクロールしていただくと、広告の下に【★★★★★】の評価ボタンがあります。もし「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、評価をいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
@chocola_carlyle




