(26)鋼鉄誓約
「ねぇ…あれって…どう見ても競技用じゃなくて、違法に軍事転用されたヤツだよね…!」
アヤカの声が震えている。無理もない。
俺だって、心臓が握りつぶされそうだ。
ネザーファングが“鉄槌”と呼ぶ機体。それは、ただの兵器ではなかった。全てを踏みつぶし、支配しようとする圧倒的な暴力そのもの。重厚な装甲、異常なまでの武装。それらが、すべてを物語っている。
その時、通信越しに低く冷たい声が響いた。
「……許しがたいな。」
ゼファーの声――。
だが、いつもの冷静さとは違う。
そこには、鋭い怒りが滲んでいた。
その言葉が、戦場全体に突き刺さる。
「私の命を狙うのは構わない。」
静かに、しかし確かな威圧を帯びた声音。
「人と人が織り成す人生で、私を恨む者がいないなどとは言わない。それは仕方のないことだ。」
ゼファーの機体、ソレイユヴァンガードが黄金の光を纏いながら前進する。その姿は、まるで戦場に降り立った王。圧倒的な存在感を放ちながら、彼は続けた。
「だが――お前たち、テロリストよ。」
空気が張り詰める。
「我らルナヴァルド社が技術を管理し、軍事転用を禁じている理由を知らないのか?」
ゼファーの声が鋭く響く。
「お前たちのような愚か者が、過去にどれだけの悲劇を生み出したかを!」
息を呑む。
冷たい怒りと、揺るぎない信念。
その重みが、心臓に突き刺さる。
「ルナドライブがブラックボックスだと言うが、それは世界の平和を守るための選択だ。」
ゼファーの語る言葉は、揺るぎない確信そのもの。
「技術が全ての手に渡れば、それは必ず暴力と破壊に利用される。歴史がそれを証明してきた。自由という名の無秩序が、人類をどれだけ破壊してきたか――お前たちは何一つ理解していない!」
ゼファーの言葉には、ただの怒りだけではない。
覚悟と信念――そのすべてが込められている。
「平和は、ただの言葉ではない。それを築くためには、どれだけの犠牲と努力が必要か――その重みを知る者だけが未来を語る資格を持つ。お前たちの行為は、ただの破壊と混乱だ。未来への希望を踏みにじる行為以外の何物でもない!」
ソレイユヴァンガードがさらに輝きを増す。
その威圧感に、場の空気さえ完全に支配されていく。
「ムーンギアは、ただの機体ではない。競技に昇華させた理由を知るがいい。それは、月面開発の象徴を希望の象徴に変えるためだ。この競技は未来への挑戦であり、平和の象徴だ。それを汚すお前たちを、決して許さない!」
ゼファーの言葉が、胸の奥に熱を灯す。
その情熱が、俺の迷いを一つずつ切り崩していく。
「リュウト、アヤカ。」
ゼファーの声が、通信越しに響く。
「この状況は我々だけでは突破できない可能性がある。共に戦え。そしてルナ、お前もだ。この競技の未来のために、そして平和を守るために!」
ゼファーが俺たちに共闘を呼びかける。正直、信じられなかった。けど、今はそんなことを考えている余裕なんてない。テロリストの好きにはさせられない。ルナを守るためにも、俺たちが動かなきゃならないんだ。
「……あぁ、もちろんだ!」
深く息を吸い込み、操縦桿を握り直す。
迷いを振り払うように力を込めた瞬間――
全身に再び熱が巡るのを感じた。
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