(16)雪場突破
「ヤバい、マジで機体が凍る…!」
ロードラストのコックピットは冷蔵庫どころじゃなく、氷点下の戦場に放り込まれたみたいにキンキンに冷えていた。ガラス越しに外を見れば、白銀の世界に浮かぶ巨大な影。スノーバイト――新潟チームのリーダー機。雪と氷の化身みたいなその巨体が、俺を射程に捉えている。
機体のバランスを崩さないよう慎重に姿勢を調整する。だが、周囲には完璧な布陣を敷いた敵機たち――圧倒的な包囲網が張られていた。
「…クソ、完全に詰んでるじゃん。」
冷気砲の砲口が、ゆっくりとこちらに向けられる。その瞬間、本能的に操縦桿を握りしめた。
「いくぞおおお!!」
スロットル全開!ドリルタービンMK-Ⅱが咆哮を上げ、雪を巻き上げながら敵陣に突っ込む。
ガギィィン!!
敵機の装甲にドリルが突き刺さる。摩擦熱で氷の膜が弾け、鉄の悲鳴が響く。機体が激しく揺れながら、片膝をついた。
「よっしゃ、スノーバイト撃破!」
戦いの興奮に体が熱くなる。でも――
「…あれ?おかしくね?」
視界の端で、スノーバイトが動いた。
「…嘘だろ!?」
さっき倒したはずのスノーバイトが、雪煙の中から姿を現す。
「くそっ、入れ替わってやがった!」
雪煙の裏で、他の機体とスノーバイトが位置を入れ替えていたんだ。巧妙に隠されたトリック。気づいた時には、もう遅い。
目の前のスノーバイトが、一歩、また一歩と迫る。巨体が雪を踏みしめるたび、地鳴りのような振動が響く。そして、再び砲口が俺を捉えた。
「この距離で撃たれたら――!」
その時、冷静な声がインカム越しに飛び込んできた。
「リュウトさん、私が援護します!」
次の瞬間、ルミナスフローラが雪煙を切り裂いて駆けた。
「速ぇ…!」
光の軌跡を引くような疾走。
戦場に映える流星のような動きに、一瞬、息を呑む。
キィィィン――!
高周波ブレードが一閃。敵機の装甲を両断し、切り裂かれた機体が崩れ落ちる。雪煙が巻き上がる中、スノーバイトの援護機は一瞬で無力化されていた。
「ルナ、マジで異次元の速さだな…」
だが、まだ終わらない。スノーバイト本体が動く。
巨体が傾き、冷気砲の砲口が再びロードラストを捉えた。
"WARNING: SYSTEM FREEZING"
"MOBILITY REDUCED"
"REACTOR OUTPUT DROPPING"
機体がみるみる凍りついていく。
関節部の駆動音が鈍くなり、警告音が連続して鳴り響く。
「やべぇ、このままだと完全に氷漬けにされる…!」
機体が硬直し、動けなくなる感覚。
操縦桿を押し込むが、まるで重しが乗ったみたいにびくともしない。
このままじゃ、完全に封殺される…!
その時、聞き慣れたノリのいい声が響いた。
「リュウト!粘ったね!あとはあたしがやるよ!」
雪煙をぶち破って突進してきたのは――バスターディガー!!
「よっしゃああ!行けぇぇぇ!!」
アヤカの機体が突っ込む。そのままクラッシュアームを振り下ろし――
ドゴォォン!!
スノーバイトの装甲がぶっ壊れる。センサーアイがチカチカ点滅し、巨体がゆっくりと傾いていく。
戦場が、シン…と静まり返る。
「新潟チーム、全機戦闘不能を確認!」
「関西ブロック代表、和歌山チームの勝利です!」
次の瞬間、観客席が大歓声で揺れた。
「やったあああ!!」
アヤカが拳を突き上げる。ルナも安堵の笑みを浮かべている。
俺の心臓はまだバクバクしてるけど――確かに、勝ったんだ。
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