(17)激闘準備
翌日、準決勝の相手として現れたのは、あの大分チームだった。護送列車の中で俺たちを煽ってきた連中だ。初戦でアイドルチームを倒したと聞いた時は「やるじゃん」なんて思ったが、実際に戦ってみると地獄のような戦いだった。
勝てたのはいい。でも、代償がデカすぎる。
バスターディガーはクラッシュアームを破壊され、ルミナスフローラの高周波ブレードも完全に使用不能。そしてロードラストのブレイククローも、限界を超えて崩壊。関西大会からずっと支えてくれた武器だったのに…。一進一退の攻防、俺たちは紙一重で勝ち上がった。
「口だけじゃなかったな…」
思わず呟く。あいつら、本当に強かった。俺たちが勝てたのは、戦略の妙か、それともただの運か――。
だが、そんな俺の内心とは裏腹に、アヤカはまるで気にしていない。
「でもさ、内容はどうあれ、勝ったんだからそれでいいじゃん!」
負傷した機体を前に、彼女はどこか楽しげに目を輝かせる。
「明日に向けて、急ピッチで武器と装甲の付け替えね!」
もう次の準備を考えてる。この切り替えの早さには、本当に頭が下がる。
その時、運営のアナウンスが響いた。
「決勝戦進出者は、ルナヴァルド社よりスポンサー枠で参加のルナフロント代表に決定しました。決勝は明日十三時より開催予定です。」
――ルナの兄、ゼファー・ヴァルド。
ついに、俺たちはあいつと戦うことになる。
ルナが小さく呟いた。
「お兄様…やはり、私たちと戦うのですね…」
その声には、不安と決意が入り混じっていた。
「さぁ、お兄ちゃんをボコって心のうちを吐かせましょうか!」
軽いノリで場を明るくするアヤカ。
こういう時の彼女は、本当に頼もしい。
俺は拳を握り、深く息をつく。
「ともあれ、装備を取り替えたらホテルに戻って作戦会議だな。しっかり休んで、ゼファーがどんな戦い方をするのか、試合を見返して研究しないと。」
ホテルに戻り、俺たちはゼファーの試合のリプレイを見返した。
しかし――何も参考にならなかった。
理由は簡単だ。どの試合も秒で決まっているからだ。
「なんだこれ…」
俺は思わず画面に食い入る。信じられない速さ、そして無駄のない動き。相手チームが抵抗する暇もなく終わっている。
「これ…選手たちがスポンサー様に忖度したわけじゃないよな…?」
冷や汗が滲む。こんな戦い方、見たことがない。
ルナは、静かに首を振った。
「機体だけではなく、お兄様の操縦技術も段違いです…」
言葉の端々に、深い敬意と恐れが滲む。
「ルナフロントでは仮想技術で訓練を積むのですが、お兄様は『実地こそ全て』と言い、常に機体に乗り込んで研鑽を積んでいました。それこそ、幼い頃から。」
その言葉に、俺の全身が粟立った。
――相手は、機体性能だけじゃない。
パイロット自身も、桁違いに強い。
無理だろ、こんなの。まともに戦って勝てる相手じゃない。
…でも、だからこそ――俺たち三人で全力を尽くすしかない。
明日、全てを懸けて戦う。
勝って、ゼファーの本心を聞き出すために。
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