(13)氷雪戦場
専用車の揺れに身を任せながら、スタッフがフィールドの説明を始める。
「今回の全国大会は、旭川の大雪山を舞台に戦っていただきます。観客はドローンによる戦場撮影をドーム内でホログラム中継し、臨場感あふれる観戦をお楽しみいただきます。」
ホログラム中継って…金かけすぎだろ。
いや、全国大会だし当然か。そんなことを考えているうちに、車が止まる。
ドアを開けて外に降りると、目の前に広がるのは雄大な雪山…のはずだった。だが、すぐに違和感に気づく。クレーターのような凹地、湯気を吹き出す巨大な穴、高低差の激しい崖…。これ、完全に人工じゃないか。
「やりすぎだろ…これ、戦う場所なのか?」
呆れつつ周囲を見渡す俺をよそに、隣のアヤカは腕を組みながら得意げな顔をしている。
「何言ってんのよ! こういう見せ場があるからムーンギアバトルは盛り上がるんでしょ!」
…戦術どころか、まずこのフィールドでまともに動けるかが問題だろ。
アヤカの言葉に釣られて少し冷静になりつつも、胸の奥にじわじわと不安が広がる。
「ほら、ぼけっとしてないで早く準備するわよ!」
アヤカに急かされ、俺も覚悟を決める。
ここで悩んでいても仕方ない。やるしかないんだ。
司会が進行を始め、各チームと機体の紹介が淡々と進む。
俺は少しずつ気持ちを落ち着けていた――
が、次の瞬間、司会者の声が弾けた。
「関西代表チームの三体目、バスターディガー…えぇ!?これは、重機がベースなんですか!?」
「そうよ! もっと言っちゃって!」
隣でアヤカが満面のドヤ顔。いや、確かに目立つけど、本当にこれで大丈夫なのか?冷や汗がじわりと滲む。
「なんということでしょう。ムーンギアバトル史上初ではないでしょうか。深野さん、この機体、一体どんな可能性を秘めているのでしょう?」
スクリーンに映し出された深野は、明らかに興奮した表情で解説を始めた。
「ルナドライブの高出力を重機に適用するという発想自体が、まず破天荒です。通常の機体構造では耐えられない負荷がかかるはず。しかし、もし駆動系とルナリウム装甲を連携させ、エネルギー負荷を効率的に分散させていると仮定すれば――非常に挑戦的な設計ですね。」
彼の声に力がこもる。
「技術者として、この機体の設計思想には強く興味を惹かれます。これを実現するための試行錯誤や技術的工夫がどれほどのものか、ぜひ伺ってみたいですね。」
…やっぱ普通じゃないんだな。俺は心の中で呟く。注目されるのはありがたいが、本当にこれで戦えるのか?不安が顔に出ていたのか、アヤカが肘で俺を軽く突いた。
「何ビビってんのよ。これで勝つから、ここにいるんでしょ?」
「あ、ああ…そうだな。」
その一言に、少し肩の力が抜けた。そうだ、俺たちはこのためにやってきたんだ。
相手チームの紹介も終わり、ついに試合開始のアナウンスが響く。
俺は深呼吸をして、視線をまっすぐ前に向けた。
「さて、やるか…!」
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