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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
第二章 双月の覚醒機
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(12)緊張万丈

 ゼファーの荘厳すぎる挨拶が終わり、会場がようやく静けさを取り戻した。なんだか息苦しかった空気が、少しだけ和らぐ。でも、まだ心のどこかに彼の言葉が引っかかっている。すげぇのはわかるけど、やっぱりあれ、プレッシャー与えるためにやってるだろ。


 「続いて、この全国大会をより深く楽しんでいただくために、解説者をご紹介します。」

 司会者の声が響く。

 「深野真司氏。彼はかつてルナリウムやルナドライブの基礎研究を手掛けていた研究者でもあります。」


 スクリーンに映し出されたのはスーツ姿の男性。穏やかな微笑みを浮かべているが、知性のオーラが滲み出ている。

 …なんか、この大会、本気で敷居高くないか?


 「特筆すべきは、深野さんが研究の最前線で触れてきた『理論』の深さです。ルナリウムには、まだ解明されていない多くの謎が眠っています。」

 「深野さんは、その奥深い知識を視聴者の皆さまに分かりやすく、そして興味深く伝えてくださるでしょう。」


 分かりやすく…って言うけど、大丈夫か?

 この人、めちゃくちゃ専門用語使いそうだぞ。


 深野が画面越しに一礼し、落ち着いた口調で語り始める。

 「ムーンギアバトルがここまで進化し、世界的に注目を集める理由。それは、技術と競技が一体となり、人類の未来を示すショーケースだからです。」

 「この大会を通じて、皆さまにその一端をお伝えできればと思います。」


 …うーん、なんかすごそうだけど…難しそうだな。

 つい漏らした俺の声に、隣のアヤカがちらっとこちらを見る。


 「リュウト、ぼーっとしてる場合じゃないよ。ほら、トーナメント表確認して。」

 「わかってるよ!」


 画面に目を戻すと、初戦の相手、新潟チームの名前が目に飛び込んでくる。

 長岡の高専生がパイロットって話で、アヤカはすでにテンション高めだ。技術系のチームが相手だと、彼女の闘志はいつも以上に燃える。


 トーナメント表の下へ目を移す。


 もし初戦を突破すれば、列車で煽ってきた九州・沖縄ブロックの大分チームか、アイドルユニットで構成された関東ブロック茨城チームとの対戦になる。そしてさらにその先――準決勝を越えれば、待ち受けているのは…。


 「月面都市ルナフロントで兄に勝った人は、私が知る限りいません。」


 ルナがポツリと言っていた言葉が頭をよぎる。

 俺たちが本当に勝てるのか…?


 「やるしかねぇよな…!」

 自分に言い聞かせるように小さく呟き、気を引き締める。

 どんな相手だろうと、下を向いてる場合じゃない。

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@chocola_carlyle

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