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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
第二章 双月の覚醒機
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(10)白銀覚悟

 翌日の寒冷地テストは、予想以上に順調だった。いや、順調すぎて拍子抜けするくらいだった。アヤカの重機ベースの機体 「バスターディガー」 は、雪原の中でその存在感を存分に見せつけていた。鮮やかな黄色いボディが雪景色に映え、まるで無骨な怪獣が大地を蹴散らしているようだった。


「どんなもんよ!」

 操縦席からアヤカの声が響き渡る。その自信満々な顔を見ると、思わず苦笑いが漏れた。いや、本音を言えば、マジでかっこいい。この突き抜けた自信と行動力には、本当に頭が上がらない。


 そこからは作戦会議の連続だった。全国各ブロックの代表チームを徹底的に分析し、戦略を練る。アヤカを中心に議論が白熱し、煮詰まったら温泉で頭をリセットして、また会議に戻る。このループで時間がどんどん溶けていった。気づけば、大会当日が目の前に迫っていた。


 大会当日――。


 運よく快晴。昨夜の雪が朝日に照らされ、白銀に輝いていた。まるで世界そのものが祝福してくれているみたいだった。送迎車に揺られながら、広大な雪原を背景にした会場が近づいてくると、少しずつ緊張がこみ上げてくる。


 会場に到着すると、全国から集まった機体がずらりと並び、その迫力に思わず圧倒された。巨大な機体が整然と並ぶその光景は、まるで映画のクライマックスシーンのようだった。各チームのムーンギアは、どれも独自の設計思想が盛り込まれていて、見ているだけでその戦闘スタイルが垣間見える。


「アヤカさーん!」

 聞き慣れた声に振り向くと、オンラインで寒冷地仕様のアドバイスをくれていた 北見が駆け寄ってきた。遠路はるばる釧路からわざわざ来てくれたらしい。


「オフライン最高!」

 アヤカが叫ぶと、北見も「やっぱり直接会えるのが一番です!」と満面の笑みで応じる。二人はガッチリとハグを交わし、微笑ましい空気が流れた。


 だが、その視線の先――会場の片隅で、異様な光景が広がっていた。


 アイドル衣装を着た三人組の女性パイロットが、カメラに向かってポーズを決めている。満面の笑みで手を振る姿に、思わず目を疑った。


「…なんだあれ?」

 思わず呟くと、隣でアヤカが冷静に答える。

「関東ブロックの茨城代表よ。アイドル活動とムーンギアバトルを両立してるんだってさ。」


「いやいや、色仕掛けで勝ち上がったんじゃねぇだろうな?」

 つい口をついて出た言葉に、アヤカが即座に肩を小突いてきた。


「アンタさぁ、そういう考えしてると負けるわよ? 見た目だけでここにいるわけじゃないんだから。」


「…でもさ、ムーンギアバトルがアイドルショーみたいになってるのは納得いかねぇ。」


「それがビジネスってもんよ。スポンサーも観客も楽しませなきゃ。逆に言えば、彼女たちを倒せば 私たちが目立てる ってこと! そして あたしとルナちゃんでデビュー、なんて未来もあるかもね!」

 ニヤリと笑うアヤカに、俺は苦笑いを返す。簡単に割り切れたら苦労しない。でも、なんだか説得力があるのがムカつく。


「ったく……派手に目立てってか。まあ、やるしかねぇよな。」


 その時、会場全体に響く事務スタッフのアナウンスが鳴り響く。


 「まもなく開幕です! パイロットの皆様は所定の位置へお進みください。」


 いよいよだ。胸の奥で小さな緊張が膨らむ。

 深呼吸をして、視線を前に向けた。

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@chocola_carlyle

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