(7)挑発応戦
特別護送車内の食堂は、全国大会へ向かう選手たちがリラックスするための場所…のはずだった。俺たちも軽食をつまみながら次の戦いについて考えていた。だが――隣のテーブルから聞こえてきた嫌な声に気づくまでは。
「おいおい、和歌山の新参チームじゃねえか。」
挑発的な声が耳を突き刺す。顔を上げると、大分チームのリーダーらしい男がニヤニヤしながらこっちを見ていた。
「関西大会で優勝したって聞いたけどさ、ずいぶんチヤホヤされてるみたいだな。」
その隣にいた女も、薄笑いを浮かべて口を開く。
「スペースポートでバイトしながらの片手間でここまで来たんだって? すごいじゃない、まるで観光気分みたいね。」
――観光気分?
その一言が、俺の頭にズシリと突き刺さる。冗談じゃない。俺たちがどれだけ苦労してここまで来たと思ってるんだ――そう言いたかったが、言葉が喉で止まる。拳を握りしめ、冷静さを保とうとする。でも、視線だけは思わず鋭くなった。
そんな俺の横で、アヤカが椅子を引いて立ち上がる。口元にはニヤリとした笑みを浮かべていた。
「観光ついでに、あんたらを雪の中に埋めて帰るのも悪くないかもね?」
軽口っぽく見えるが、その声にはいつもの鋭さが混じっている。リーダーは鼻で笑いながら肩をすくめた。
「ぬかしやがって。俺たちのバックにはスペースポート大分がいるんだ。紀ノ國なんかとは、技術力も資金力も段違いだ。」
その言葉がさらに胸に刺さる。ああ、そうかよ――資金も技術もねぇ俺たちのことを、見下してるってわけか。
そこにルナが静かに立ち上がった。その表情には怒りなんかじゃなく、ただ静かな決意が宿っている。
「それだけでは、勝てません。」
その一言に、大分の女が鼻で笑った。
「勝てないですって? ジャンクに覚悟が宿るとでも思ってるのかしら?」
――その瞬間、堪えきれなくなった。
「じゃあ、試してみるか?」
立ち上がり、机越しに睨みつける。
「アリーナの上で、本物がどっちか見せつけてやるよ。」
リーダーはニヤリと笑い、挑発的に言い返す。
「言ったな。負けても泣き言を言うんじゃねえぞ。」
アヤカはそんな彼らを見下すように笑い返した。
「そっちこそ、スペースポート大分の名に泥を塗らないようにね!」
ピリピリした空気が周囲にも伝わったのか、他の選手たちがこっちをチラチラと見ている。その時、ルナが俺の肩に手を置いた。その手のひらは冷静そのものだ。
「今はやめましょう。結果を出せばいいだけです。」
その言葉にハッとする。ここで言い合いを続けたって意味がない――そうだ、俺たちは戦うためにここにいるんだ。
俺は唇を噛みしめ、静かに拳を下ろした。大分チームは周囲の視線に気づいたのか、鼻を鳴らして席を立っていく。張り詰めた空気を残しながら、俺たちは再び椅子に腰を下ろした。
「ほんと、調子に乗りすぎだろあいつら。」
俺が小声で漏らすと、アヤカが笑いながら肩をすくめる。
「まあまあ、試合で黙らせればいいっしょ。それが一番スカッとするからさ!」
「焦らないでください。」
ルナが真剣な目で俺を見つめる。
「彼らの挑発は、私たちを乱すためのものです。試合で実力を証明しましょう。」
俺は息をついて、深く頷いた。
「ああ、その通りだな。」
大分の連中が何を言おうが関係ない。俺たちが全力を尽くしてバトルで勝つ――それだけが、俺たちの答えだ。
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