(6)託宣列車
そして、気づけば全国大会開催の一週間前になっていた。
俺たちはトレーラーの荷台に揺られながら、新京都駅へ向かっていた。目的は護送列車への機体搬入。この列車は全国各地の主要駅から出発し、各チームのムーンギアを一括輸送する。
「まあ、こんな時代だしな。」
アヤカが肩をすくめる。最近はテロ予告や過激派の動きがニュースで取り沙汰されることも多い。ルナヴァルド社がメインスポンサーの大会となれば、厳重な警戒態勢が敷かれるのも当然だろう。
新京都駅に到着すると、貨物ヤードには全国から集まった機体がずらりと並んでいた。その光景に、俺は思わず息を呑む。これだけのムーンギアが一堂に会するなんて、まるで映画のクライマックスシーンだ。
「…すげぇ。」
自然とその言葉が漏れる。あちこちから聞こえる作業員たちの掛け声や、重機の音。これから始まる戦いへの緊張がじわじわと湧いてきた。
俺たちのトレーラーの荷台も、作業員たちの手で慎重に列車へと積み込まれていく。その様子を見守る間、手汗で滑る操縦桿の感触がリアルに蘇る。いよいよだ――その言葉が頭の中をぐるぐる回る。
「リュウト、あれ!」
アヤカが指差した先を見て、俺は思わず目を丸くした。そこにいたのは、関西大会の初戦で戦った西園寺と藤堂だった。
相変わらずの豪華絢爛っぷり。ただ立っているだけなのに、なんでこんなに絵になるんだよ。俺、同じ大会に出てたよな……? なんか場違い感がすごいんだけど。
西園寺が優雅に扇子を傾け、一歩前に出る。
「関西の名を、全国で知らしめてきておくれやす。」
その一言と仕草に、思わず目を見張る。何なんだこの貫禄。同じ高校生とは思えない。
「君たちには圧倒されてしまったよ。」
藤堂が穏やかに微笑む。
「悔しいが、あれ以来、西園寺が君たちの大ファンになってしまってね。」
「と、藤堂はん! それは秘密や言うたやろ!」
西園寺が顔を赤くして抗議する。そのやり取りに、俺は少し肩の力が抜けた。こんな奴らと戦ったんだよな…不思議な気分だ。
藤堂は笑顔を崩さず、俺たちをじっと見つめる。そして、ふと真剣な表情になった。
「勝ってきてくれ。かつて『観光でしか食えない』と言われた関西は、月面産業の発展を契機に成長を遂げた。そして今、君たちがその象徴となる時だ。廃材から這い上がり、可能性を形にしてきた君たちの物語は、次の世代に希望を与える。君たちなら、それができると信じている。」
藤堂が拳を差し出してきた。その目の奥に宿る純粋な期待。俺は喉の奥が熱くなるのを感じながら、その拳に自分の拳を合わせた。
「ああ、行ってくる。」
改札を抜け、護送列車へ向かう。振り返ると、西園寺と藤堂が手を振っていた。その姿がやけにまぶしく見えた。
列車の車両に乗り込むと、低い振動が足元から伝わってくる。この列車に乗った瞬間、もう後戻りはできない。でも、不思議と怖くはない。
全国大会。この先には、俺たちが目指す新しい景色が必ず待っている。いや、絶対に手に入れる――そうだろ、ロードラスト?
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