(5)宿命兄妹
全国大会に向けた怒涛の準備の最中、スペースポートの小さな会議室にアヤカの勢いある声が響いた。
「リュウト!ついに全国大会の詳細が出たよ!」
工具を置いて振り返ると、アヤカがパソコン画面を覗き込みながら興奮気味に続ける。
「出場者リストに『スポンサー枠』ってのがあるんだけどさ……」
「スポンサー枠?」
気になって画面を覗き込む。その瞬間、視線がある名前に釘付けになった。
「…ゼファー・ヴァルド?」
その名前を口にした途端、背後でガサッと音がした。振り返ると、ルナが手に持っていた書類を床に落としていた。彼女は俯いたまま、震える声で言う。
「兄です…私の兄、ゼファー・ヴァルド。」
アヤカが驚きで目を丸くし、画面とルナを交互に見比べた。
「えっ、兄ってことは、あのルナヴァルド社の…!? マジで? ちょっと待って、これって超ヤバいやつじゃん!」
ルナは静かに頷き、言葉を絞り出すように続けた。
「兄は父の後継者として育てられました。彼がスポンサー枠で出場するということは…全国大会で、私たちと戦うことになります。」
兄妹で戦う――そんな展開、ドラマでもそうそう見ない。
「ってことは、ルミナスフローラみたいな最新式のムーンギアが出てくるってことか。」
俺がポツリと漏らすと、ルナの表情がさらに曇る。
「いいえ…エリックさんも言っていましたが、母の機体は基幹部分が旧式です。けれど、兄の機体は…すべてが最新式です。」
場の空気が一段と重くなる。なんだよそれ、勝ち目なんてあるのか? じわじわと不安が広がる。でも、そんな中でルナがふと目を閉じ、深呼吸をした。そして、震えを押し殺すように、はっきりと言葉を紡いだ。
「けれど…逃げるつもりはありません。兄が何を考えているのか、直接、確かめます。」
その決意に満ちた瞳に、俺は息を飲んだ。
そして気づけば、拳を握りしめて言葉を返していた。
「なら、俺たちは勝つだけだ。」
その瞬間、アヤカがふっと小さく笑い、肩をすくめる。
「そうだね。ゼファーとかいうボンボンに負けたら、関西代表の名折れだからね。」
冗談交じりのその言葉に、張り詰めた空気が少しだけ和らいだ。簡単じゃないのは分かってる。でも、ここで逃げるなんて選択肢はない。
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