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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
第一章 蒼白の月鋼機
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(17)月機解禁

 俺は一歩前に踏み出し、目の前の男を睨みつけた。

「どうやって信じろって言うんだよ?証拠もなしにさ。」


 自分の声がやけに低く響く。

 こんな話、証拠なしで信じるほど単純じゃない。


 男はゆっくりと頷き、低く静かな声で言った。

「当然の疑念です。しかし、これを見ても同じことが言えますか?」


 カチリ。アタッシュケースのロックが外れる音が夜の静寂を切り裂く。

 次の瞬間、青白い光がふわりと溢れ出し、夜の闇を押し返すように周囲を照らした。


「……なんだ、これ……?」


 思わず口をついて出た俺の言葉に、誰も返さない。男が慎重に両手で取り出したのは、透明な筒状の物体だった。内部の流体が静かに渦を巻き、まるで生命を宿しているかのように滑らかに輝いている。


「……ルナドライブ……!」


 隣でルナが小さく息を飲む。その声に、俺もアヤカも思わず釘付けになった。


 男はわずかに目を細め、筒の中で脈動する光をじっと見つめながら静かに言った。

「これはムーンギアの心臓部。精製されたルナリウムから生まれた、究極のエネルギー機関――だが、ただの動力源ではない。」


「……どういうことだ?」


 俺は青白い光に目を奪われながら、続きを待つ。


 男はゆっくりと視線を筒に落とし、静かに続けた。

「ルナ様……貴女のお母様、レイラ様は、この技術をすべての人へ解放しようとしていました。ルナリウムを力ではなく希望として。私は、その志を共にした者の一人です。」


 ルナの肩がわずかに震えた。


 男はさらに言葉を紡ぐ。

「しかし……この力を独占しようとする者たちがいた。」

「そして――あの『事故』が起こった。」


「……それは、本当に事故だったのか?」

 胸騒ぎが収まらない。俺は無意識に問いかける。


 男は深く息をつき、静かに首を横に振った。

「私は今もそうは思えません。レイラ様は理想を抱きすぎていたのかもしれない。しかし、それが理由で命を落とす道理はない。」


 ルナは拳を握りしめ、低く囁くように言った。

「じゃあ……母は……?」


 男は静かにルナの目を見据えた。

「貴女がこの戦いに踏み込むのならば、知るべきことがあります。ルミナスフローラの力…ルナドライブが秘めた真の性能。そして、それを封じる『枷』の存在です。」


「枷…?」


 ルナが眉をひそめる。


「ルナドライブには、ムーンギアの性能を極限まで引き出す機能があります。しかし、その力はあまりに大きすぎる。暴走すれば、制御不能の破壊を引き起こす可能性がある。」


「破壊…?」


 アヤカの声がかすかに震えた。


 男は淡々と続ける。

「だからこそ、ルナヴァルド社はリミッターを施した。しかし、それが果たして『安全のため』なのか、『貴女の力を封じるため』なのか――どちらだと思いますか?」


 その言葉に、ルナが拳を強く握りしめる。


 夜の静寂に包まれる中、彼女は小さく息を吐き、静かに、それでいて力強く言った。

「そこに希望があるなら…私、やります。」


 その目には、一片の迷いもなかった。


「ルナ、本気なのか…?」


 俺の問いに、彼女は静かに頷く。その頷きがやけに重く感じた。


 男はルナの決意を受け止めるように深く頷くと、静かに言葉を紡いだ。

「……貴女の意志が、その答えならば。」


 冷たい夜風が吹き抜ける。


 その言葉の重みが胸に染みたが、返す言葉が見つからない。

 そんな中、アヤカが腕を組み、軽い調子で言った。


「ま、何にせよルナドライブが手に入ったんだから、これで全国大会の三機目、決まりじゃない? あたし、張り切っちゃうよ!」


 おいおい、なんでそんな楽しそうなんだよ。俺は苦笑しながら頷く。こういう図太さ、本当に助かる。


「……よし、やるぞ。」


 操縦桿を握る感覚が手の中に蘇るような気がして、自然と拳を握りしめる。

「これが、俺たちの全国大会への第一歩だ。」


 未来なんて分からない。

 でも、このチームでなら――きっと、掴める。

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@chocola_carlyle

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