(14)鋼巨撃破
ロードラストの操縦桿を引くが、脚部はピクリとも動かない。
「くそっ、完全に止まった…!」
焦りで心臓がバクバクと鳴る。手汗で滑りそうな操縦桿を、必死に握り直した。視界を巡らせると、遠くでルミナスフローラに向かってじわじわと歩を進めるタイタンギアの巨体が見えた。圧倒的な存在感。あれが襲いかかるのを、俺はただ見てることしかできねぇのか?
「俺は眼中にねぇってか…!」
悔しさが喉の奥で熱く渦巻く。そんな時、通信越しにタイタンギアのパイロット、御影の低く響く声が届いた。
「造船で鍛えた技術力、舐められては困るな!」
その言葉と同時に、プラズマランスが青白い閃光を纏い、静かに構えられる。次の瞬間、それが振り下ろされた。
「ルナ、避けろ!」
喉の奥から叫びそうになる。が、その前にルミナスフローラが左手を突き出した。
――掴む気かよ!?そんなの正気じゃねぇ!
刹那、青白い火花が散る。ルナは、その一撃を力で受け止めていた。
「おい、何やってんだよ!」
俺の心の叫びが届くはずもない。プラズマランスの圧力で、ルミナスフローラの機体がギギギと悲鳴を上げる。その中で通信が繋がり、ルナの静かな声が響いた。
「リュウトさん、これが最後のチャンスです。」
その言葉と同時に、ルミナスフローラのレバーが引かれる。
"AUXILIARY ENERGY MODULE: MAXIMUM OUTPUT ENGAGED"
警告音が響く。背部ブースターから青白い閃光が噴き出し、機体が唸りを上げた。ルナは、プラズマランスを左手で押さえ込みながら、動かない右腕をゆっくりと前へ突き出していく。
「まさか…体ごと突っ込む気か!」
ディスプレイ越しでも、ルナの決意が痛いほど伝わる。右手のブレードはもう動かねぇ。でも、全重量をかけた突撃なら、刃が動かなくてもタイタンギアの胸部装甲を貫けるかもしれない。
「援護する!」
俺はロードラストの唯一動く左肩のリペアドリルを展開する。狙いを定め、タイタンギアの胸部装甲に向けて射出。
――鋭い音と共に、装甲が砕けた。
「行きます!」
ルナの声と同時に、ルミナスフローラの補助ブースターが全開になる。加速した機体がタイタンギアへ突撃し、停止した右手のブレードをその胸部に突き刺した。
鋼鉄が裂ける音とスパークが戦場を包む。
タイタンギアの巨体が青白い閃光を放ちながら膝をつき、そのまま地面に崩れ落ちる。巨体が完全に沈黙するのを確認した瞬間、俺は全身の力が抜けるのを感じた。
観客席が一瞬静まり返る。
次の瞬間――轟音のような歓声がアリーナを包み込んだ。
「決まったああああああ!」
「関西ブロックの頂点に立ったのは――スペースポート紀ノ國、リュウト&ルナのタッグだあああ!」
司会の興奮した声が響く。
ボロボロになったルミナスフローラが、静かに立ち上がる。その姿は、まるで戦場に咲く一輪の花のようだった。
通信越しにルナの声が届く。
「リュウトさん、勝ちましたね。」
疲れが滲む声。でも、そこには確かに笑顔が感じられた。歓声に包まれる会場の中で、俺たちはこの勝利を全身で受け止め、心に刻み込んだ。
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