(12)巨鋼決戦
決戦の舞台が整った。
九月の三連休、真ん中の日曜日。
神戸港のコンテナ群が夕陽に染まり、赤銅色に輝いている。
その中で、俺はロードラストのコックピットに身を沈めた。
歓声や司会の声が遠くから聞こえてくる。
けど、なんか他人事みたいに感じる。
ここが決勝戦だ。ここまで来たんだ。
そう思うと、自然と拳が震えた。
けど、これって緊張してるからなのか、それとも興奮してるからなのか、
自分でもよく分からなかった。
相手は御影和臣――神戸重工業の御曹司。
そして奴の機体、「タイタンギア」は正真正銘の巨人だ。
9.8メートルの巨体、14.8トンの重量――規定限界ギリギリ。
司会がそのスペックを読み上げるたびに、
背筋がじわっと冷たくなる。
これまで「重い」って思ってたロードラストが、
急に軽量級のちびっ子に見えてくるのが不思議だ。
重装甲。高出力プラズマランス。広範囲EMPフィールド。
……こっちの武装が効くのかどうかすら怪しい。
「リュウト、いけそう?」
通信越しにアヤカの声が届いた。
軽い口調だけど、その裏に張り詰めた空気を感じる。
「いけるかどうかなんて、考える余裕ないだろ。やるだけだ。」
強がり半分の返事。
でも、そう言うとアヤカがくすっと笑ったのが分かった。
ディスプレイに映るタイタンギアがやたらと目につく。
重心が低く、まるで動かない山みたいなやつだ。
だけど、その動きは洗練されていて、
巨体のくせに隙がない。
プラズマランスの先端が淡い光を放っている。
それが何かを暗示してるみたいに、不気味だった。
「準備完了。」
静かに割り込む声はルナだ。
ディスプレイの隅に映るルミナスフローラが、
青白い光をまとってスムーズに起動を終えている。
その光は、薄暗くなり始めた会場で一際鮮やかだった。
画面に映るルナの顔はいつも通り冷静で、
迷いなんて微塵も感じられない。
その姿に、俺の心が少しだけ軽くなった。
「さぁ、皆様お待ちかね!関西大会の決勝戦が今、始まります!」
「神戸の至宝タイタンギアと、その挑戦者、スペースポート紀ノ國のリュウト選手とルナ選手のタッグが激突します!」
観客席から湧き上がる歓声がコックピットにまで届いてくる。
熱気が空気を震わせているのが分かる。
だけど、不思議と心臓は規則正しく動いていた。
この緊張と覚悟が混じった感覚――これが勝負の瞬間なんだろうな。
「リュウトさん、勝ちましょう。」
ルナの声が静かに響く。
その一言が、妙に胸に刺さった。
「もちろんだ。」
操縦桿を握り直し、正面のタイタンギアを睨みつける。
巨人が動き出す。
全身に緊張が走る。
でも、同時に頭の中が冴え渡っていくのを感じた。
やるしかない。ここで負けるわけにはいかないんだ。
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