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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
序章 廃鋼の叛逆機
17/190

(17)機鋼一閃

 ロードラストがウォーターブラスターの水流に押され、地面を軋ませながら後退する。そのたびに、コックピット全体に響く振動が全身を痺れさせ、体の感覚がどんどん鈍くなっていく。


 操縦桿を引いて体勢を立て直そうとするが、ウォーターブラスターの勢いは想像以上で、まるで巨大な手で押さえつけられているみたいだ。


 「なんや、その程度か? そんなんで決勝まで来れたんが不思議なくらいやわ!」


 通信越しに、シラハマ三号のパイロット——ユイの声が飛び込んでくる。


 「スペースポート? ルナリウムの恩恵受けまくった温室育ちがイキってるだけやろ!こっちは地元の中小企業が総力挙げて作った技術の結晶や!なめんなよ!」


 画面の端に映るユイの顔は、勝ち誇ったように余裕たっぷりで、

 その煽りが、胸に鋭く突き刺さる。


 ——悔しい。

 でも、言い返す余裕すらない。


 「くそ…。動け、頼むから!」


 操縦桿を握りしめる手に、自然と力がこもる。だが、ウォーターブラスターの水圧は重く、シールドがギリギリで耐えているだけ。


 このまま押し込まれたら終わる。絶望感が、胸から喉の奥までせり上がり、頭の中が真っ白になりそうだった。


 その時——ふと視線がパネルに落ちる。

 武器のアイコンが、煌めくように映り込んだ。


 AIR BURST CANNON


 その文字が、心をぎゅっと掴む。


 「エアバースト…!」


 その言葉を口にした瞬間、アヤカの声が頭の中に蘇る。


 『エアバーストキャノンはね、衝撃波を広範囲に出せるから、相手の攻撃の流れを一瞬断ち切るのに使えるよ。ただし、エネルギーの消耗が激しいから乱発は厳禁!ここぞってときに狙って使うのがポイント!』


 ——あの自信満々な笑顔。


 間違いない、今が「ここぞ」だ。


 「頼む…!」


 迷わずエアバーストキャノンのスイッチを叩く。

 その瞬間、ロードラストの肩部が輝き、轟音とともに衝撃波が放たれた。爆風が空気を裂き、水流を弾き飛ばす。視界がクリアになった瞬間、ディスプレイに映るユイの顔が驚きで固まるのが見えた。


 「やるやんか! ちょっと見直したで!」


 ユイの煽り交じりの声が聞こえる。

 だが、今の俺には関係ない。


 ウォーターブラスターの圧力を切り抜けただけで、まだ勝利には程遠い。

 ただ、確かに反撃の糸口は掴んだ。


 「ここからだ…!」


 操縦桿を握り直し、ドリルタービンのスイッチに手を伸ばす。


 これだってアヤカに叩き込まれたばかりだ。

 彼女の真剣な言葉が、また頭の中に浮かぶ。


 『ドリルタービンはね、相手の装甲に風穴を開ける一撃を狙う武器。攻撃する瞬間、フルスロットルで回転数を上げれば、どんな硬い装甲も貫ける…はず!ただ、タイミングが肝心。外したら大損だからね!』


 ——外せば大損、当たれば逆転。

 ピッタリすぎるくらい俺向きの賭けだ。


 「行くぞ…ロードラスト!」

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@chocola_carlyle

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