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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
序章 廃鋼の叛逆機
16/190

(16)水鋼決戦

 サイレンが鳴った瞬間、全身が硬直した。


 これが決勝戦の舞台——頭では理解しているのに、心が追いつかない。頭の中が真っ白で、手の震えが止まらない。操縦桿を握りしめても、汗で滑りそうだ。


 夢じゃないのは分かってる。

 でも、これが現実だと思うと、逆に体が動かなくなる——。


 目の前に立ちはだかるのは、青と白に塗られた巨大な機体——シラハマ三号。背中のクジラのヒレのような装飾が揺れ、ウォーターブラスターの砲口が、こちらをじっと捉えている。


 ただの異形なフォルムじゃない。その動きには知性すら感じられる。圧倒的な存在感が、これまでの対戦相手とは格が違うことを、嫌でも思い知らせてくる。


 「俺が…勝てるのか?」


 心の中で問いかける。

 ——でも、答えなんて出ない。


 観客の歓声が、コックピットにまで響き渡る。

 ディスプレイ越しに映るシラハマ三号の巨大な影が、さらに俺を追い詰めてくる。


 その時、奴が動いた。


 背中のヒレが波打つように動き、ウォーターブラスターがこちらに向けられる。

 その瞬間、全身に鳥肌が立つ。


 「来る…!」


 反射的に操縦桿を引いた。

 ロードラストが後退を始める——。


 でも、その動きは鈍く、ぎこちない。

 遅い——遅すぎる!


 次の瞬間、シラハマ三号が高圧水流を放った。

 視界が一瞬、真っ白に染まる。


 「っ、くそ!」


 左腕のシールドが水流を受け止める。

 ——だが、機体全体に激しい振動が走る。


 後退しようとしても、水流の勢いに押されて、まるで機体が宙に浮いているみたいな感覚がする。焦りが、胸を締め付ける。


 「動け…頼む、動いてくれ!」


 操縦桿を握り直す。

 だが、ロードラストは応えてくれない。


 水流に押され、ただもがいているだけだ。

 ディスプレイには、次の射撃体勢に入るシラハマ三号の姿。


 その動きには、余裕すら感じられる。


 再び——ウォーターブラスターが唸りを上げる。

 次の瞬間、高圧水流がシールドを叩きつけた。


 「ぐっ……!」


 振動が操縦席全体に響き渡る。

 心臓が喉の奥で跳ねる。


 「これじゃ、まともに動けねえ…!」


 苛立ちと焦りが、頭をいっぱいにする。

 どうにか反撃しなきゃいけないのに、思いつく手がない。


 シラハマ三号は水流で俺の動きを完全に封じ込め、じりじりと距離を詰めてくる。その完璧すぎる戦術に、全身が冷たくなる。


 「こいつ…完璧すぎるだろ…!」


 ウォーターブラスターで動きを封じ、次はクジラスラッシャーでとどめを刺すつもりだ。その動きには無駄がなく、全てが計算され尽くしているように見える。


 ——何とかしないと。

 このままじゃ終わる。


 分かってるのに、体が思うように動かない。

 操縦桿を握る手に、力が入らない。


 「くそっ…何とかしろよ、俺!」

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@chocola_carlyle

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