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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
序章 廃鋼の叛逆機
11/190

(11)機魂覚醒

 ルナの父親らしき男のメッセージが終わった。

 だが、俺の頭の中はまだ混乱したままだ。うまく整理がつかない。

 しかし、そんな迷いも、会場全体に充満する熱気が押し流していく。


 「いや~、すごい時代になりましたよね!」


 司会者のテンション高めな声が、アリーナ中に響き渡る。


 「声を変えずに完全同時通訳が自動でできるなんて! まるで未来そのものじゃないですか!」


 ……まあ、確かに便利な技術だ。

 でも、この場面でそれを強調する必要あるか?


 観客席がざわつく中、司会者はさらに軽口を挟む。


 「僕が子供の頃なんて、英語がわからない時には、とりあえず『ニーハオ!』って言ってたもんですよ。あっ、それ中国語でしたね!」


 観客席から笑い声が広がる。俺もつい苦笑い。いや、そのネタ、無理がありすぎるだろ。けど、この雰囲気に飲まれかけている自分がいるのも事実だった。


 拍手と笑いが一段落すると、司会者が話を切り替える。


 「さて、それでは気を取り直しまして、第一回戦! 登場するパイロットと機体をご紹介しましょう!」


 スクリーンに映し出されたのは——

 俺たちのロードラスト。

 そして、対戦相手となる赤と黒の派手な機体。


 「まずは、赤と黒のツートンカラーが目を引く——マルドウィング!」

 「パイロットは、地元の老舗商家の跡取り、荒田選手です!」


 観客席から拍手が起こる。

 だが、その中には笑い声も混じっている。

 ……派手な機体と「跡取り」という肩書きが、何か面白いのかもしれない。


 「さて、マルドウィングのスペックを見てみましょう。全高8.3メートル、重量8.8トン!翼状パーツが特徴的で、遠目には鮮やかで目を引く外観ですが、実戦向きの性能かどうかは未知数ですね!」


 スクリーンに、次は俺たちのロードラストが映し出される。


 「一方の対戦相手は、高校二年生の若き挑戦者——リュウト選手!」


 俺の顔がスクリーンに大映しになると、観客席から歓声が湧き上がる。

 その反応に、少しざわついた雰囲気も感じた。


 ……観客たちは俺をどう見ている?

 単なる高校生が挑戦するから面白がってるのか?

 それとも、「ジャンクから生まれた機体」がどこまでやれるのか興味を持っているのか——。


 ……にしても、アヤカが俺の登録名を下の名前にしてたのが気に食わない。

 苗字でよかっただろ、苗字で。

 「リュウト!」とか大声で呼ばれるの、正直、ちょっと恥ずかしい。


 「こちらのロードラスト、全高8.5メートル、重量9.7トン!」

 「スペースポート紀ノ國の職人たちがジャンク品から修復した機体です!」

 「月面採掘用のドリルをそのまま流用している点も興味深いですね!」


 観客の視線が、一斉に俺たちへと向けられる。

 期待と熱気が、肌に突き刺さるように感じた。


 ——そして、試合開始のカウントダウンが始まる。


 スクリーンには、大きな数字が映し出される。

 観客席の歓声が、さらに大きく膨れ上がっていく。


 「5、4、3——!」


 俺は操縦席で拳を握りしめる。


 ロードラストが静かに唸り始めた。

 その振動が、全身に伝わってくる。


 「さあ、行こうぜ、ロードラスト。」

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@chocola_carlyle

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