(35)黄槌奮迅
「どけえぇぇぇ!」
アヤカの叫びとともに、戦場が一変した。バスターディガー改がスラスターを吹かし、宇宙の闇を裂くように加速する。その巨体が繰り出す一撃一撃は、まるで戦場のルールを書き換えるかのようだった。
マグネティックハンマーが唸りを上げ、空間を振動させる。衝撃とともに無人機の装甲が砕け、内部機構がむき出しになった瞬間、爆発が続く。金属片が光の粒となって散り、宇宙に吸い込まれていく。
「アヤカ、すげえ…!」
思わず声が漏れる。重機ベースの機体がここまでの機動性を発揮できるなんて、誰が想像しただろうか。通常のムーンギアとはまるで別次元の暴れっぷりだった。
「まだまだ行けるよ!」
アヤカの明るい声とともに、バスターディガー改がさらに加速する。スラスターが青白い炎を吐き出し、光の尾が残像のように残る。その勢いのまま突進し、無人機の編隊を突き破ると、衝撃で数機が弾き飛ばされた。
迎撃しようとする無人機がエネルギー弾を連射するが、バスターディガー改の装甲はそれを物ともせずに弾き返す。厚い装甲が焼け焦げるものの、機体の動きに衰えはない。むしろ、その巨体はますます獰猛さを増していく。
「甘いっ!」
振り下ろされたハンマーが、回避しようとした敵機を一撃で粉砕する。機体の破片が宇宙空間に漂う中、バスターディガー改は止まることなく次の標的へ向かう。その圧倒的な破壊力に、戦場全体が支配されていくのを肌で感じた。
「リュウト、ルナ、ちょっとは手伝ってよ!」
俺たちも無人機を迎撃していたが、戦場はもはやアヤカの独壇場だった。俺たちの攻撃が霞むほどに、彼女の機体は無人機の群れを蹂躙していた。
「バスターディガー改、無人機を圧倒していますね。」
セレナの冷静な解説がオープンチャンネル越しに響く。
「ルナドライブのリミッターを限定的に強制解除しているようです。驚異的な破壊力と機動力ですが、この出力は機体に多大な負荷をかけるでしょう。」
おい、セレナさん。テロが乱入してるってのに解説してる場合かよ。いや、これだけ落ち着いていられるってことは、もしかしてセキュリティチームとか、何か対策部隊がすでに動き始めたってことか?一瞬だけそんな考えが頭をよぎるけど――今、安心なんかしてる場合じゃない。
黄色い巨体が無人機を次々に薙ぎ払う姿は、戦神のごとき迫力を放っていた。ハンマーで叩き潰し、スラスターで機体を弾き飛ばし、敵のエネルギー弾を装甲で無効化する――その姿に、戦場の空気が支配されていくのを感じた。
「これで終わりよ!」
最後の無人機を叩き潰し、アヤカがスラスターを緩める。だが、その瞬間、無機質な警告音が響き渡る。
"SYSTEM SHUTDOWN IMMINENT: 5 SECONDS TO FULL STOP."
「え!ちょっともう!?持って!」
通信越しに聞こえるアヤカの焦った声。次の瞬間、バスターディガー改の動きが鈍り、そのまま完全に沈黙する。巨体が惰性で漂い、やがてスラスターの光すら消えた。
「アヤカ、大丈夫か!?」
俺は操縦桿を握り直し、状況を確認する。無人機の数は確実に減少しているが、まだ完全に包囲を脱したわけじゃない。俺たちは、ここで終わるわけにはいかない。
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