(34)超越怪獣
「はぁ~!これ使っちゃうと、明日まで動けなくなるんだけどね!でも、今はそんなこと言ってらんないし!」
アヤカの軽口が宇宙アリーナの通信に響いた。しかし、その声にはいつもの軽快さとは違う、確かな決意が宿っていた。
次の瞬間、バスターディガー改が唸りを上げる。
機体全体が微かに震えたかと思うと、その巨体を覆う黄色の装甲がきしみを上げながら動き出す。背部に折りたたまれていた大型スラスターがゆっくりと展開し、機体の輪郭を塗り替えるように変形が進んでいく。まるで眠れる獣が牙を剥き、獲物を捕らえようとするかのようだった。
"OVERDRIVE SYSTEM ENGAGED. COMMENCING FULL POWER OUTPUT."
無機質なアナウンスが響くと同時に、機体全体を青白い閃光が包み込む。装甲の継ぎ目から滲み出る光の粒子は、高エネルギー反応が制御の限界に迫っていることを物語っていた。
「もう!エリックさん、日本語にしてって言ったじゃん!」
アヤカが画面に映る英語のメッセージを睨みつけるが、次の瞬間には笑みを浮かべ、レバーを大きく引く。
"CORE ACTIVATION IN PROGRESS…"
機体の動作音が徐々に低くなり、やがて宇宙空間に響くのは、ただ純粋なエネルギーの振動だけとなる。
スラスターが熱を持ち、周囲の空間を歪ませるほどの推進力を溜め込む。その出力は通常の倍を超え、まるで機体そのものが宇宙の法則に抗う異端の存在へと進化しようとしているかのようだった。
"BUSTER DIGGER MK-II OVERDRIVE MODE: ACTIVATED."
"WARNING: OPERATION TIME – 5 MINUTES ONLY."
「五分ね、オッケー!十分に暴れられる!」
アヤカの声と同時に、スラスターが一気に解放される。
――蒼白い炎が宇宙を裂いた。
機体の巨体が爆発的な推進力を受け、まるで雷光のごとく戦場を貫く。機体の後方には光の尾が軌跡を描き、無数の粒子が乱流を起こす。その波動に巻き込まれた無人機が不規則な軌道を取り始めた。
加速は止まらない。
この機体は、もはや"重機"の名を冠する存在ではなかった。鋼鉄の塊が理論の壁を超え、ただの競技機体が"戦場の巨神"へと変貌を遂げた瞬間だった。
「よーし、行くよ!バスターディガー改!!」
咆哮するアヤカの声を合図に、機体はさらなる速度を得て、敵を薙ぎ払うために前進する。それは破壊の化身の誕生を告げる、決定的な一撃の始まりだった。
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