(33)覇王圧倒
リバティガーディアンが無人機を次々と撃破するたび、観客席から沸き上がる歓声。その音が通信越しにも届き、俺たちも思わず見入ってしまっていた。アメリカ代表チームの力強い戦いぶりは、まるで映画のワンシーンのようで、心を奮い立たせるものがあった。
「競技用機体で、テロ機を圧倒してる…!」
アヤカが思わず感嘆の声を漏らす。俺もディスプレイ越しに映るリバティガーディアンの姿に釘付けだった。自分の手に汗が滲むのが分かる。
けれども、その一瞬の安堵はすぐにかき消された。
「親玉機、動き出したぞ!」
ライアンの冷静な声が通信に割り込む。その一言が、場の緊張感を一気に引き締めた。
ディスプレイに映し出されたのは、圧倒的な威圧感を放つ漆黒の巨体。旭川で対峙した軍用機の比ではない、その姿。無重量空間を悠々と滑るように移動するその動きは、巨体とは思えないほどの精妙さを見せていた。
「Whoa! これぞ本物のボスキャラってやつかよ!ヒーロー魂が燃えるぜ!」
通信越しにジャックの声が響く。その声は、さっきまでと変わらず自信に満ちていたが、どこか焦りの色も混じっているのを感じた。
「Jonathan, 親玉機を確認したわ!」
冷静なサラの声が続く。
「All units, 全力でフォーカスするわよ!」
「Roger that! 了解!行くぞ、フォーメーションE!」
アメリカ代表チームの三機が再びフォーメーションを組み直し、親玉機へと突撃する。その動きは、これまで数々の戦場をくぐり抜けてきた経験を感じさせる完璧な連携だった。
だが――その巨体は単なる的ではなかった。
「No way…なんだ、このシールドは…!」
ジョナサンが放ったエネルギー弾が親玉機に届く寸前、灰色の装甲が光を帯び、一瞬でシールドを展開した。放たれた弾は虚しく弾かれる。
「Unbelievable…効かないの?」
サラの声が通信越しに響く。その調子には明らかに動揺が滲んでいた。そして、その言葉が終わる間もなく、親玉機から放たれた高出力ビームがリバティガーディアンの一機を正確に捉えた。衝撃波とともに機体が大きく弾き飛ばされ、スラスターが一瞬制御を失う。
「Damn it! 立て直せ!」
ジョナサンの指示が響くが、その声には焦燥が隠しきれない。親玉機は巨大な体をまるで自分の一部のように動かし、精密な動きでアメリカチームを圧倒し続けていた。その火力とスピードの両立は、通常の競技用機体では到底かなわないものだった。
「お兄様をも圧倒した…あの機体と同じ…!」
ルナが息を呑みながら呟いた。彼女の言葉が、俺の胸に重く響く。
俺は操縦桿を握り締めた。無力感が全身を襲う中、怒りがじわじわと胸の奥から湧き上がる。アメリカチームを助けに行きたい――だが、それは簡単ではなかった。周囲には無数の無人機が取り囲み、俺たち自身の身も危うい状況だった。
「くそ…ここで足止めを食らうなんて…!」
俺たちは無数の無人機に包囲され、もがいていた。灰色の機体が途切れることなく襲いかかってくる。ワイヤードリルアームを駆使して一機ずつ撃破するが、息つく間もなく次の無人機が間合いを詰めてくる。
「くそっ、これじゃ援護どころか、身動きもままならない!」
歯を食いしばりながらスラスターを吹かし、一機を貫いたその瞬間、通信越しにアヤカの怒声が響いた。
「もう!ムーンギアバトルで見せたかったのに!」
その言葉とともに、コックピットで何かを叩きつける音が通信に混じる。何を――そう思う暇もなく、アヤカの叫びが響いた。
「行くよ!オーバードライブモード!」
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