(31)侵略戦火
俺たちがアメリカチームへの反撃を試みようとしたその時――。
通信越しに、耳をつんざくような爆発音が響き渡った。それは宇宙アリーナのバーチャル再現音響なんかじゃない。本物の、冷たい宇宙空間で聞こえるはずのない音だった。何が起きた?戸惑う暇もなく、コックピットのモニターが警告を発し始める。
"UNKNOWN SIGNATURES DETECTED."
英語の警告音が途切れることなく鳴り響き、モニターには見慣れない信号が次々と表示される。視界の外――アリーナの周囲で、宇宙そのものが歪むように異質な動きが現れ始めた。
「リュウト、これって…!」
通信越しに聞こえるアヤカの声。普段の明るさが影を潜め、緊張と動揺が混じる。その瞬間、モニターに映し出された光景に、俺も息を飲んだ。
無数の灰色の機体がアリーナを取り囲んでいる。その異様なフォルムは、今まで見たどのムーンギアとも違う。無骨で冷酷。闇に溶け込むような外装は、明らかに競技用じゃない――軍用機だ。
「…まさか、あれは…!」
ルナの声が震える。その刹那、オープンチャンネルが唐突に開き、不気味な音声がアリーナ全体に響き渡った。
「我々は月を支配する暴君ルナヴァルドに正義の鉄槌を下すために来た。月は企業のものではない。人類のものであるべきだ。」
その声は低く加工され、聞くだけで不快感を覚える。けれど、聞き覚えがあった。
――まさか!
「ネザーファング…!」
ルナが呟く。その名が口にされた瞬間、全身が一気に緊張で硬直した。全国大会の北海道でも、俺たちを苦しめたテロリスト。そいつが、この世界大会に現れるなんて――いや、狙いは最初からここだったのか?
「これが…奴らの目的かよ…!」
怒りが湧き上がり、操縦桿を握る手に自然と力が入る。コックピットの中で、アリーナの試合会場は一瞬で戦場へと変わっていくのを肌で感じた。
「All units!!!! 警戒態勢をとれ!」
通信越しに響くのは、アメリカチームのジョナサンの声だ。正義感に満ちたその叫びが、これほど頼もしく思えたことはなかった。
「リュウト、奴ら動き出すよ!」
アヤカが緊迫した声で叫ぶ。それに呼応するかのように、灰色の機体群が一斉に動き始めた。その動きは統制が取れていて、まるで生物のような流動性と正確さを持っている。
「なんて数だ…!」
アヤカの声が震える。モニターに映る敵機の数――あまりにも多すぎる。試合どころじゃない。この場を守らなければ、宇宙アリーナにいる観客たちが巻き込まれる。
「…行くぞ、ロードラスト!」
迷う暇なんてない。俺はスラスターを最大出力にし、まっすぐに灰色の機体群へと突撃した。冷たい宇宙空間が、今まさに戦場として炎を上げようとしていた。
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