(30)星条機影
試合開始の号令が響くと同時に、戦場が一変した。
宇宙アリーナにアメリカチームのリーダー、ジョナサン・クルーガーの声が堂々と響き渡る。その声は舞台の主役を独占する俳優そのものだ。
「Hey, Team Japan! よくここまで来たな! だが、これ以上先には行かせない!」
言い切った後、少し間を置いてから、さらに続ける。「Justice always wins. それを証明するのが、俺たちアメリカだ!」
……くそ、言うに事欠いて「正義」かよ。
ジョナサンの言葉に呼応するように、アメリカチームの三機が動き出す。そのフォーメーションは完璧で、一糸乱れぬ隊列のまま迫ってくる。まるで、これはもう決まった勝ち筋をなぞるだけの儀式だとでも言わんばかりだ。
ジョナサンの声が通信越しに響く。
「Especially you, Ryuto! テロ機を破壊するような危険な力を持つ者は、まず最初に排除する。それが正義だ!」
その瞬間、全身に緊張が走る。
「くそっ、どいつもこいつも正義正義! 俺たちはただ――」
言葉を飲み込む間もなく、ストライカー担当のライアンが陽気な声で続けてきた。
「Roger that, Leader! よし、一気に片付けるぞ!」
さらに、ナビゲーターのサラが落ち着いた口調で指示を飛ばす。
「Stay focused. 相手はテロを打ち砕いた人物。ただのパイロットじゃない。」
言葉が終わるや否や、アメリカチームの三機が一斉に攻撃態勢に入る。青白いエネルギー弾が放たれ、まっすぐに俺の機体――ロードラストへ向かってくる。
「くっ…!」
スラスターを全開にし、ぎりぎりで回避する。しかし、逃げた先で光線の余波が炸裂し、アリーナ全体が振動した。
ディスプレイには警告表示が赤く点滅する。敵の動きは異様なまでに正確で、まるで俺の逃げ道すら計算済みであるかのようだった。
「くっ…!」
ディスプレイには赤い警告表示が次々と点滅する。アメリカチームの動きは精密機械そのもので、俺を逃さないよう計算され尽くしている。
「リュウト、あんたを狙ってる! 避けて!」
アヤカの声が焦燥感を滲ませながら響く。だが、彼女のバスターディガー改が援護に動こうとした瞬間、その動きさえアメリカチームの計算に組み込まれているように感じた。
ライアンがスラスターを吹かし、あっという間に距離を詰める。その動きには迷いがない。まるで、俺たちの反応すら織り込み済みであるかのように。
「リュウトさん、落ち着いてください!」
ルナの冷静な声が通信に割り込む。「彼らの動きはパターン化されています。注意深く観察すれば、必ず隙が見つかります。」
――パターン化?
俺はディスプレイに映るアメリカチームの動きを凝視した。確かに…奴らの動きは完璧すぎる。まるで、無駄の一つもない人工知能の演算のような動きだ。しかし、そういう「完成された動き」には、逆に脆さがあるはずだ。
「What’s wrong, Japan? お前らの力、見せてみろよ!」
ジョナサンの挑発的な声が再び響く。
スラスターを全開にし、ロードラストを鋭く動かす。こちらが動けば、敵の三機も即座に反応してくる。その動きには迷いがない。だが、その正確さがむしろ彼らの弱点になるに違いない。そう簡単には終わらせない。
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