↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/14

3-1

――サブウェル坑道――


 盗賊との戦闘以降は何事も無く、シオン達を乗せた馬車はアーゴン森林を抜ける。


 魔物や猛獣の呻く様な鳴き声も止み、馬車の中は安心感に包まれる。


「おぅい、通らせてくれんか?」


「はいよ! おーい! 馬車が通るから、道を開けてやんな!」


 サブウェル坑道の明るく舗装された道まで入ると、鉱夫達の作業する声が聞こえてきた。


 危険な区域から安全区域に入り、人の声が聞こえた時は、何にも代え難い安心感がある。


「もうそろそろハルマットだね……疲れたぁ……」


 盗賊団を相手にした上、長時間の馬車移動は疲れが溜まる。


 特に怪我を負った者にとっては、砂利や石が多い道の揺れが身体に響き、かなり辛いだろう。


「わぁ、真っ暗なのに、ここら辺は明るいですね!」


 ノアが馬車の隙間から顔を出し、外の様子を見ていた。

 落ちない様に、ノアの服を引っ張り支える。


「危ないよ。まぁここら辺は鉱夫達が夜中まで仕事しているからね。魔道具が設置されてかなり明るいし、この明るさを嫌って夜行性の魔物や猛獣が寄り付かないんだ。

 しかも盗賊達も鉱石を盗もうにも、鉱夫は採掘作業とかで鍛えられてて強いし、近くには冒険者がよく泊まる宿場町がある。

 おまけに北側には、各地にデュランド騎士団が配備されているからね。

 盗賊も悪さしにくいんだ」


「へぇ、キャメロディアは治安あんまりよく無かったですしね」


 ノアが感心したように話を聞いている。


 ハルマット宿場町はレヴァンス山道が近いにも関わらず、犯罪件数や魔物による被害が少ない。


 これはデュランド王国の政策の賜物だった。


 防壁や砦などの防衛施設や、衛兵が駐屯所が北側の各地に配備されているからだ。


 防衛意識の高さはウラノエス大陸でも随一で、国家予算の大半は防衛費と聞いた事もある。


 それを象徴するのが、規律と秩序に準ずるデュランド騎士団だ。


 デュランド騎士団は王都デュランドの中でもより優れた者を、国を守る騎士として王が選定した軍隊組織である。


 騎士は本来なら下級貴族や領主がなる、身分の高い役職だ。


 しかしデュランドは違う。

 盗賊や魔物による被害は、貴族だけの組織では片づけきれなかった。


 よってデュランド王国は忠誠心があり、国を守れるほどの実力者を毎年選抜している。


 もちろん、誰でもなれる訳では無い。

 前提として犯罪歴が無く、五年以上の兵士、または冒険者経験を物である事が必要だ。


 おまけに騎士団の入団試験はかなり厳しく、年に五人ほどしか選ばれれば上出来なほどだった。


 試験が甘くないのは、流石は規律と秩序の国デュランドと言ったところだろう。


「キャメロディアには悪い人が結構いましたからね。北側って安心なんですね!」


「いや、そうとも限らないね。犯罪が少ないとは言え、こっちは南側に比べると危険区域が多いんだ。

 ヤバい魔物もうようよいるし、なんなら敵対魔族も多いし」


「はぇぇぇ……師匠、なんでそんなに詳しんですか!?」


 ノアが尊敬の眼差しでシオンを見る。


 この子はAランク冒険者である僕を何だと思ってるんだ、と内心で思ってしまった。

 普通に尊敬の眼差しを向けられたのは嬉しかったので、何も言わずに頭を撫でる。


「魔族もですか……?」


 レイナが心配そうな声で呟く様に不安を垂らす。


「心配かい? 大丈夫だよ、街にいるのは剛矮種(ドワーフ)とか獣人種(ビーステッド)みたいに人間に友好的な種族ばっかりだから。

 耳長種(エルフェン)だったり鬼角種(オーガ)の中立派は、人間社会から離れてそれぞれの住処で生活してるね。それに話せば分かるから大丈夫だよ」


「そうなんですね……」


 レイナを諭す様に説明する。


 人間にとって、ほとんどの魔族は敵対関係にある。


 特に巨人種や竜人種などは、絶対的な敵対種族だ。


 敵対種族達は種族ごとに強い思想を持ち、完全に人間と相容れない社会を作っている。

 それに加え、人間を遥かに凌駕する力を持っているため、酷い場合には、人間に戦争を仕掛けたりもすることもある。


 敵対種族は人間には脅威の為、レイナが不安に思うのも無理はない。


 一方で、全てが全て敵対的なわけではない。


 魔術を得意とし美しい美貌を持つ耳長種《エルフェン》や、人相が悪く武力に長けた鬼角種(オーガ)などの中立派もいる。

 価値観こそ人間に近いが、それでもの思想に乖離があるため、極力人間と関わりを持たないようにしている種族達だ。


 そして人間に友好的なの種族も存在する。

 力の強い小人である剛矮種(ドワーフ)や、動物特有の身体能力と特性を持った獣人種(ビーステッド)などだ。

 この二種族に関しては思想の乖離も無く、人間社会に完全に溶け込んでいる。

 ドワーフは採掘や鍛冶仕事で、ビーステッドは狩りや農業を生業とし、人間と共生している。


「……とまぁ、こんなところだね」


 レイナに説明していると、真面目な顔をしたノアが元気に手を挙げる。


「はい師匠! 魔物と魔族の違いって何ですか!?」


 シオンは思わず頭を抱える。

 ノアには弟子にして一年以上、三回目の同じ質問が飛んできた。


 本当にノアは馬鹿だなぁ、と思うも純粋な笑顔を前に何も言えず、優しく頭を撫でてあげる。


 傍から見ていたエレナは困惑していた。


「えっとね、そうだな……レイナちゃんは分かる?」


 冒険者としての知識を調べるのも兼ねて、レイナに質問してみる。


 名前を呼ばれて少し驚くも、すぐさま姿勢を正して答え始める。


「は、はい。魔物と魔族の違いは大まかに言うと、人間と意思疎通が取れるか、ですよね?」


 百点に近い答えが返ってくる。

 弟子もこうだったらいいのに。


「ほぼ正解、いいね。ノアには改めて説明するよ?」


 ノアが姿勢を正して座り直す。


「魔物ってのは、瘴気の影響で生態や性質が変化した動物とかの総称だね。

 水を纏るスライム、昨日闘ってたグレムリンとか、瘴気に犯された魔獣種とかね。

 だから本能的で野性的、意思疎通が取れないんだ。

 一方で魔族ってのは、魔物が瘴気の影響によって人間の形を成してきて、人間と意思疎通を取れるほど知能が発達したやつだね。

 さっき言った亜人種だったりが該当する」


「なるほどぉ……そうなんですね!」


 ノアが純粋な笑顔で、感嘆の声を上げる。


 可愛さに騙されそうになるが、ノアにこの説明をするのは、これで四回目になる。


 本当にこの子は、と思うと無性に可愛く感じ頭を撫でる。

 撫でられた方も嬉しそうにしてる為、止めどなく撫でてあげる。


「えぇ……?」


 再び困惑の視線をした二人から見られる。


 その視線には、これが盗賊を倒してくれたAランクの姿か、と言ったものが含まれている気がした。




――続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。