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2-4

――レヴァンス山道、アーゴン森林――


 マッシュ達が傷を負い不利な戦況の中、弟子に押され決断の付いた足を前に出す。


「はっ! なんだい、やる気か? 手ぶらのくせに、アタシ達とやろうってかぁ!? えぇっ!?」


 マーニがナイフを突きつけ、執拗なまでに挑発を続くける。


 マッシュ達の相手をしていた盗賊達もこちらに加勢し、囲んでいる盗賊の数は十人以上になる。


「手ぶら?大丈夫だよ、今から作るから」


 シオンは魔力を腕に集中させる。

 放出するためではなく、留めて形にする様に。


 盗賊達から困惑の声が漏れ出て、傷を負ったマッシュ達からも心配の表情が浮かび上がる。


 そんな窮地に置かれた状況の中、人を守る為、師匠の戦いが見れると期待している愛弟子の為――武器を錬成する。


――多数戦、イメージするのは手数。舞い踊る様な刃。


 錬金術を体内で展開する。

 自分の魔力を媒体に武器を錬金術で生み出していく。


 青い稲妻に似た光の中から、シオンの両手に剣が何処からとも無く現れる。


「な、なんだ、テメェ……何してんだ!?」


 異様な光景にマーニが叫ぶ。

 他の盗賊団員達や、馬車の中から顔だけ覗かせていた御者、ノアを除く冒険者達まで、異質過ぎる光景に唖然としていた。


 光が止むとシオンの手には、蒼く輝く二対の双剣を手にし構える。


 錬金術と言うのは本来どんな形であれ、媒体にした素材より多くの物質が出来ることは無い。


 しかしシオンは違った。

 自信の有り余る魔力を無理矢理体内で圧縮する。

 それの圧縮された魔力を媒体に、鑑識に出せばA+ランクが付く様な武器を無理矢理錬成した。


「す、すげぇ……」


「ぶ、武器を……錬成した、だぁ……?」


 圧倒的に神々し術に、盗賊や冒険者は目を引かれる。


 ノアに至ってはすごいでしょうと、自分の手柄の様に誇らしげにしている。


「ちっ……武器を出したからなんだ! こっちには数があんだ! やっちまいな!」


 マーニの圧のある号令と共に、盗賊達が襲い掛かってくる。


 シオンは身軽さを利用して、盗賊の攻撃を掻い潜る様に捌いて進む。

 一人一人を手早く、それでいて的確に、わざと急所を外し切り込んで仕留めていく。


「なっ!? こいつ……!」


「大丈夫、死にはしないよ。超痛いけど」


 あまりの戦力差に慄き、いきがっていた盗賊団達も仕掛けるのをやめ、シオンの動きを警戒する。


 シオンもなるべく馬車から離れる様に移動し、剣を構えながら周囲を見渡す。


 見渡す限りでは木の上に二つ、矢じりだけが見えていた。


 警戒していた最中、射手から矢が放たれる。


「あぶな」


 飛んでくる矢を剣で弾き落とし、下っ端盗賊団員達に格の違いを見せつける。

 下っ端も今の芸当を見て、完全に腰が引けていた。 


 下っ端を十人近く討ち、多人数を逆に圧倒し形勢が逆転する。

 シオンは勝ち誇ったように、剣先をマーニの方に突き付ける。


「さてと、まだやる?」


「このぉ……舐めるなぁ!」


 怒りが頂点に達したマーニは、他の盗賊とは比較できない程のナイフ捌きを浴びせてくる。


 怒涛の連撃は双剣で応戦しているはずなのに、こちらの反撃を許してくれない。


 先程までの余裕は消え、焦りを感じた。


「くっ、やるね本当に……! こっちは二刀流だよ……?」


「てめぇ……なんなんだよ……アタシのナイフが、当たらねぇって……」


 お互いに焦りが出ていた。


 決定打は無いのに集中力だけが削られていく。


 一瞬でも気を抜けば、それで決着がつくだろう。


「おいお前! これを見ろ!」


 構えたままの睨み合いの最中、後ろからの声に気が取られ振り向く。


 目線の先にはボロボロながら動ける下っ端の一人が、レイナを人質に取っていた。


 ボロボロのマッシュとアルトは倒され、地に伏していた。

 こちらの戦闘に気を取られた隙に倒されたようだ。


「あ……ぐっ……」


 魔力が尽きかけ意識が薄れているレイナの首に、下っ端がナイフを突き当てる。


 抵抗しようにも、魔術師の腕力では引き剥がせず、身体を押さえ付けられ呻く。


「あっ、汚いぞ!」


「はっ、ざまぁねぇな……!動くなよ?今から心臓にブスリと、いやメッタ刺しで殺してやるからな……」


 動けなくなったのをいい事に、マーニが罵詈雑言を浴びせながら歩み寄ってくる。


 ここで自分が動けば、当然レイナは首を切られて死ぬだろう。


 地に伏して倒れてるマッシュ達も動こうとする。

 しかし出血が思ったより酷いのか、倒れたまま手を伸ばすだけで動けないでいた。


 ここは一先ず、降参のフリだけする事にした。


 シオンは武器を魔力として回収し、両手を上げる。


「はっはっはっ!大人しくなったか?今更おせぇよ!死にな!!」


 ナイフを振り下ろそうとした瞬間、馬車の後ろから勢いよく人が飛ぶ。

 棒術を使って宙を舞うノアは、レイナを掴んでる下っ端の脳天を目掛け棒を振るう。


「はぁぁぁ!」


 頭頂部に棒が当たり、下っ端は悲鳴も上げずに倒れる。


 明らかに砕けた音がしたが大丈夫か?


「なっ!? 何不意打ち食らってんだ雑魚!」


 マーニの意識がノアの方に向いた瞬間、再び武装錬成で短剣を錬成し、マーニのうなじに突きつける。


「形勢逆転。どうよ?」


「……ムカつくねぇ……いいさ、引いてやるよ……クソが」


「引けるの?」


 マーニを逃がすまいと身体を押さえようとする。


 しかし、そこは大陸一の盗賊団だった。

 木の上に潜伏していた射手がシオンに何かを投げてきた。


 それに反応し、思わず後ろにステップで躱す。


 投げ付けられたそれは地面にぶつかると、粉塵と共に煙を上げ目くらましとなる。


「煙幕か……! ノア、みんなは大丈夫!?」


「はーい!マッシュさん達は大丈夫です!」


 煙幕が徐々に晴れていくと既にマーニの姿は無く、他の盗賊の気配も無かった。


 倒れた下っ端を見捨てて、動ける盗賊だけで逃げた様だ。


 周囲を警戒し安全を確保しマッシュ達を馬車に運ぶ。


「……ふぅ、マリーちゃん。マッシュ君とアルト君の治療お願い」


「はい!」

 



 マリーにマッシュ達の治療をお願いし、シオンは倒れてる盗賊団の下っ端達を近くの木に縛り付ける。


「ノア、手伝ってくれ」


「はい!」


 ノアと一緒に合計二十人、武装を外して次々に木へと縛り付ける。


 犯罪者を捕まえたら、本来なら憲兵のいる屯所まで連れていくのが一番いい。

 だがこの人数を運ぶには馬車は二台しかなく、乗せる余裕も無い。


 その為自分で運ぶのではなく、近くの屯所に連絡を入れ憲兵に連行してもらう。

 冒険者達ならよくする手法だ。


「よぉし、縛り終わったぁ」


 下っ端達を縛り終え、一息つく。


 怪我人を抱えた今、このまま何もない事を願うばかりだった。




――続く

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