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いよいよ旅立ちの朝が来た!
荷物の最終確認後、11時にダイニングに集合し、お昼ごはんを食べてから出発することになった。
俺は彼らが、リュックひとつにまとめた荷物を背負っているのに満足していた。旅は身軽に、が基本だからな。
リュックに入りきらなかったりすぐに使わない必需品は、名前を書いた袋に入れて、俺のマジックバッグに預かっている。
マイルの持っていた、シンラ教授から預かったというお土産や資料の数々もマジックバッグの中だ。彼のあのバッグ5つを見た時は、最初どうしようかと焦った。
シェアハウスの鍵を無くさないよう、不動産屋のハスマに預けて出発だ。
俺はまず皆を森へと連れて行った。
いつものように、エルフの指輪をはめてハクを呼び出す。
「これがユニコーン!?」
「わ、デカい!」
「目が可愛い〜!」
皆ハクを囲んで大騒ぎ。ハクは、あれ?いつもと違う?という感じで見回してキョトンとしているが、ハクはユニコーンでしかもばん馬サイズだ。驚かれて当然。
そしてハクに皆でリンゴをあげる。たくさんもらえたのでご機嫌だ。
俺は皆がハクをなでている間に背中に乗り、ハバンに聞いた通りに、右の首の付け根の辺りを押してみた。
「きゃあエイトさん!いきなり馬車が出てきたわ!」
メイリンが騒いでいる声に、俺はハクの背中から後ろを振り返ってみた。
お!ちゃんと馬車だ。しかも御者?みたいなのが居る。ということは、俺が御者をやらなくてもいいのか。
ハクの背から降りて、馬車を見てみた。20名は楽に乗れそうな、しっかりした作りだ。エルフの国の物だからか、少し形の雰囲気が違うようだな。
で、御者はと見てみたら、これはなんだか人形のような?サイズは成人の人間くらいだが、ピノキオっぽいというか、まるっきり木でできた人形のようだ。
『エイト殿、聞こえますか?ハバンです。』
いきなりその人形がしゃべりだしたので、皆軽く悲鳴をあげた。俺もびっくりした。
「うわっハバンか。びっくりした〜。」
『あ、すみません。馬車を使うようですのでちょっと説明を。ダイハクリョクに行き先を言う時みたいに、この人形に目的地を伝えてもらえば大丈夫です。森の中でもほとんど揺れませんので、皆さん安心して使ってください。』
「分かった。いつもありがとう、ハバン。」
『いえいえ、通信だけでなく、また会えるといいですね。では失礼します。』
俺は皆に、さっきのはエルフのハバンで、いつもやり方を教えてくれるんだと説明した。
「よし、俺いっちばーん!」
ジェリコが馬車に乗り込み、メイリンとヒマリが乗るのを手伝っていた。ユアンとマイルも乗ったので、俺は御者にホロウサまで行きたいんだと伝えた。
木製の御者は、首をカクッと曲げて頷いた。
俺はハクの首をぽんぽんと叩いて、よろしくなとお願いしたら、ハクはぶるると鼻をならした。お、気合い入ってるな。
俺が乗り込んだら、馬車はぎしっと音をたて、ゆっくりと動き始めた。
ほんとにほとんど揺れないな。皆は外を見て、木々が馬車を通すように避けてゆくことに大興奮だ。
「皆、ハクは1日に1時間しかこちらに来られないけど、いつの間にか凄い距離を移動するんだ。降りたら、お疲れ様のリンゴをあげてね。」
「はーい!」
「もちろん。可愛いし!」
皆、こんなに乗り心地の楽な馬車は初めだと喜んでいる。いつも無口なユアンも、隣のジェリコに小声で熱心に馬車の感想を話しているようだ。
マイルが俺に話しかけてきた。
「これは確かに早く着きそうですね。エルフのユニコーンとは。エイトさんといると、驚くことばかりです。」
「そうだな。俺もびっくりすることが多いよ。エルフの王がくれた指輪が、ユニコーンを召喚する物だなんて思わなかったし。」
馬車がゆっくりと止まり、ハクがいななくのが聞こえた。もう1時間になるのか。
俺は皆に馬車を降りるよう促して、ハクに飛び乗り、馬車を格納するためまたハクの首の付け根を押した。すると、現れた時と同じように、瞬時に馬車は消えた。
「ハクちゃーんありがとねーーー!」
森にメイリンの声が響く中、皆でハクにリンゴをあげて、帰っていくのを見送った。
「さて、どのくらいまで来れたかなー。」
俺が地図を開こうとすると、ユアンが俺の腕にすがりつくようにしてきた。
「ん?どうしたのユアン。」
ユアンは少し俺を見あげるようにして、森の切れる辺りを震える指で指さした。
「あれは僕の村。ホロウサから馬車で2時間くらいのところ。」
ええっ!ほぼホロウサまで移動してるじゃん!
前回は中間地点くらいまでだったから、もっと手前で野宿したのに。
皆もびっくりして、「1時間でこんなところまで!?」「ユニコーン凄い…」と口々につぶやいている。
さてはハク…リンゴをたくさん貰ったし、ご機嫌でカッコいいところを見せようと張り切ったんだな。俺とふたりだと、しょっちゅう止まってのんびり草をもしゃもしゃ食ってるのに。
まあそんなハクが可愛いんだ。
「ユアン、せっかくだから家に寄る?」
聞いてみると、「皆も一緒に…」と頷いた。
「よし、じゃあユアンのご両親にご挨拶に行こうか。」
俺たちはその村に向けて、森を抜けていったのだった。




