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俺とマイルはダイニングのテーブルに大きな地図を広げていた。教授から借りてきてもらったものだ。
アドの言う旅のしおりじゃないが、段取りはしっかり決めておきたい。しかも俺は護衛任務でメンバーのひとりとして参加したことはあるが、ひとりでの護衛というのは初めてだ。ちょっとドキドキする。
今いるのがクヌルギ。ホロウサ、首都のビンスタス、そしてスクロの順に南下していく。
スクロを過ぎると、フィルマルトの国境はすぐだ。
都市間の距離が長いので、もしかすると都市間での1〜2泊は、よく村に併設されているキャンプ場での野宿になる。大人数で泊まれる宿は見つからないだろうし、俺だけだと森で野宿するが、森は危ないからな。
そういうとマイルが目を丸くした。
「エイトさん、都市間は馬車で1週間近くかかるところもありますよ。それが3日で到着が目安なんですか?」
彼は2ヶ月の夏休みをフルに使い、フィルマルト滞在が1週間できるかどうかと考えていたらしい。まあ普通はそうだ。でも俺にはハクがいる!
「うん、俺の予想ではフィルマルトの国境まで10日あれば行けると思う。ただ、皆観光もしたいだろうし、行きと帰りでビンスタスとかスクロで1泊か2泊してもいいんじゃないかな。どうだろう。」
「凄い、エイトさん。それだけ時間が取れれば、皆喜びますよ。」
「もちろんメインはマイルの研究だからな。それに1カ月近くは使えるんじゃないかな。俺もフィルマルトで用事はあるが、それ以外の日は首都だけじゃなく、観光地にも連れていこうと思うし。」
実はフィルマルト王国には俺、というか俺の記憶にある勇者の元冒険者仲間で、夫婦になった友人がいる。彼らに皆の観光を頼んでみようか。
「そうなんですね。エイトさんのご友人がフィルマルトにいらっしゃるのか。そういえば、エイトさんはどの国の出身なのですか?」
「それが俺、小さい頃の記憶が無いんだよね。」
嘘ではない。本当に無いのだ。
とある場所で倒れていたのを拾われて、勇者になる修行は10歳になった頃からだったというのは覚えている。でもそれ以前の記憶が無い。おそらくその設定自体が無いんだろうと思う。
「え…申し訳ありません。嫌なことを聞いてしまったようです。」
恐縮するマイルに「大丈夫だよ。」と答えておいた。まあ俺には元の世界の生活や親もいるし、この勇者の記憶にも友人たちはいるからな。
とりあえず、方針は決まったので、後は細々した経費をどうするかを決めていくことにした。
これはマイルが担当し、野宿用の食材管理はジェリコが良いだろうとなった。
元々シェアハウスで暮らしているメンバーだ。全員での移動に、特に問題は発生しないだろう。
だんだん具体的になってきたな。高校卒業旅行を企画してくれた佐藤もこんな感じでやってたんだろうか?
出発は夏休みに入る7日後だ。俺もしっかり準備を始めよう。




