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俺は彼らにフィルマルト王国へ行かなければならないと話した。
このシェアハウスは1カ月入居の契約をしていて、半月を過ぎたところだ。仲良くしてくれる彼らと、もうすぐお別れになるのは寂しいな。
まあ、旅を続けるとはこういうことだ。常に出会いと別れがある。それは理解しているのにな。
「エイトさん、いつ出発するのですか?」
マイルが尋ねてきたので、俺は日にちを計算しながら答えた。
「ああ、契約満了までは居ようかな。あと10日ほどで出発しようかと思ってる。」
「やだぁ寂しいよ。もうお別れなんて。」メイリンが泣きそうな顔で言い、他の皆も寂しそうにしている。
ホロウサに行っていたので、実質1週間くらいしか接していないのに…みんな良い子たちだな。
翌日の夕方、マイルが部屋に来た。話したいことがあるそうだ。誰とも部屋でふたりきりにはならないルールがあるので、ダイニングに移動した。
まだ皆は帰ってきていないようだ。他には誰も居ないダイニングで、マイルは俺に切り出した。
「エイトさん、僕をフィルマルト行きに同行させていただけませんか?」
彼は一体何を言ってるんだ!?お前は学生だろ!
驚いて固まる俺に、彼は話を続けた。
「以前話をしましたよね?僕は教授とフィルマルトの教授との共同研究を手伝っているって。僕のシェアメイトがフィルマルトに行くと教授に話したら、僕に行ってきてほしいと言われたんですよ。」
「ああ、そう言えば前に聞いたような。…サボテンの研究とかなんとか。」
「エイトさんはサボテンと言うと言葉を濁しますね。それはともかく、エイトさんに正式に護衛を依頼します。僕をフィルマルトに連れていってください。」
「え…でも、その間の授業はどうするんだ?受けなくてもいいのか?」
「幸い、来月から2ヶ月間は夏季休暇なんですよ。皆は実家に帰るかもですが、僕は研究しかすることないですしね。」
爽やかに笑うマイルだが、俺は悩んでいた。
この青年を俺のとんでもない旅に同行させていいのか?
「えーマイルずるい!俺も行く!!」
帰ってくるなり、俺たちの会話を聞きつけたらしいジェリコが乱入してきた。
「ええっ!ちょっと待って!?」さすがに焦る俺。
「ジェリコ、何騒いでいるの〜?」
メイリンとヒマリにユアンも揃って帰ってきた。
マイルから話を聞いた彼らは、自分たちも行くと騒ぎだした。
「だってこんな機会でもないとフィルマルトに行くことなんてないし。」とメイリンが言い、「いいよね、ヒマリも一緒に行っても。」とヒマリが便乗する。
困った俺は黙っていたユアンに目で助けを求めたが、彼は元々無口なのを忘れてた。
「……僕も興味あります。」と真剣な目だ。ユアン、お前もか!?
うーん、俺は覚悟を決めるしかないのか?
「分かった。皆、一度落ち着いてくれ。まず旅とはどんなものか説明するから、それから決めてくれ。親の許可も必要だからな。」
俺は興奮に目をキラキラさせている皆を座らせて、厳粛に説明を始めた。
部屋に戻り、ベッドに寝転んでため息をつく。
「なあ、アド。どう思う?」
『夏休みの思い出旅行の引率についてですか?旅のしおりでも作りますかね』
「……お前もか。いやそれ絶対嫌味だろ!?」
『まあいいんじゃないですか?別に急ぐ旅じゃなし。ついでだと思えば』
「相変わらず適当だな〜。」
『別に旅行なんてどうでもいいだけですよ、私には』
ふーん。ちょっと突っ込んで聞いてみよう。
「それってさ、やっぱりヤキモチ?」
『別に妬いてません。私はこの本のナビゲーターなので』
ちょっとからかいすぎたかも知れない。俺はアドに謝ることにした。
「ごめんアド、変なこと言って。前にも言ったけど、いつもありがたく思ってる。お前のこと、本当に頼りにしてるからさ。」
『…………別にいいですよ』
やっぱりこいつと他愛もない話をするのは楽しい。
俺はふふっと声を漏らした。
『なんですか、いきなり笑って。気持ち悪い』
「なんだよそれ!笑っちゃいけないのかよ!!」
それきりアドは答えなかった。
俺は明かりを消す前に、窓を開けて外を見た。
家々の明かりと夜空に浮かぶ月と星。
なんとなく、旅の楽しい予感がしていた。




