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夜明け前に俺はシェアハウスを出た。
昨夜、マイルは遅くまで帰ってこなかったみたいで挨拶ができなかった。まあ、どうせ1週間くらいで戻ってくるしな。
街中から小一時間ほど歩いて森の中に入る。久しぶりにハクと会えるんだ〜!
俺はいつものように指輪をはめて、エルフのユニコーン、ダイハクリョクを呼び出した。
毎日のように会っていたのに、ここ数日会えなかったからかハクは全力で甘えてくる。ぐりゅぐりゅと力強く顔をすりつけるパワーが凄い。
軽く吹っ飛ぶように、ととっ…と転びかけた俺を心配してしゅんとするハク。可愛いな。
「ハク!いいよいいよ、大丈夫だから!!」
声をかけてリンゴをあげるとパクリ。
もう〜相変わらず可愛いしかない。
ハクの顔をぎゅーと抱きしめたりしていると、首に何かぶら下がっているのに気がついた。俺の手のひらサイズの、木造りの箱のようだ。
「おーい、ムルーア居る?ハクの首についてる、この箱は何?」
ハクを通じてエルフに聞いてみる。
『エイト殿。ハバンです。ムルーアは留守なので変わりにお答えします。それは荷台や馬車に変化するアイテムなのです。重い物を運ぶ時や、誰かを乗せる時に使ってください。』
「へー、それは便利そうだな。使う時はどうしたらいい?」
『はい。ダイハクリョクの首の付け根の右側を押さえたら馬車が、左側だと荷台が現れます。機会があればどんどん使ってみてください。』
「オッケー!ありがとう、ハバン。」
へぇ、荷台と馬車か。そのうち使わせてもらおう。
俺はハクにもうひとつリンゴをあげてから、背中に飛び乗って行き先を伝えた。
ハクにの〜んびり揺られながら、ギルドで貰ってきた地図を眺めていた。この辺りにも幾つかダンジョンがあるようだ。
「なあ、アド。ダンジョンはできるだけ潜っておいた方が良いって、前に言ってたよな。」
『え?そんなこと言いましたっけ?』
「言ってた!超、言ってた!」
『そうですか?最近私のことはお見限りのようだったので、すっかり忘れてましたよ』
なんだ?もしかしてまたすねてるのか?
「ごめんごめん。シェアハウスの生活に慣れるのが大変でさ。忘れてた訳じゃないから。」
『ふぅん、大変な割には超〜楽しそうでしたけど?』
ぐっ、これは根に持ってるのか?アドは、俺だけ楽しそうにしているのが嫌だったんだろうか。
「そうだな。アドの声も皆に聞こえるようなら、一緒に盛り上がれたのに。」
『別に気を使っていただかなくて結構です。私はこの本のナビゲーターなので。ところで先程の質問ですが、ダンジョンの攻略は行きでも帰りでもお好きなように。どちらでも変わりませんから』
「そっか、サンキューアド。」
『どういたしまして』
そうだよな、ハクとアドとのこの冒険の時間も、同じくらい大切にしなきゃ。
「ところでさ、アド。あの……」
『まだ何か?私は超忙しいんですけど〜』
「もー!いいかげん機嫌直してくれよ!大体、本のくせに忙しいってなんだよ!!」
『はぁ、やっとエイトらしくなりましたね』
「なんだよ!お前はまた俺をからかってたのかよ!?」
俺が脳内のアドとどれだけ騒いでいても、ハクは時々止まっては草をモリモリ食べている。
アドもハクも、ほんとマイペースで笑える。
ふたりとも、これからもよろしくな。
ハクのおかげで、ホロウサにはなんと2日で着いてしまった。もう1回野宿が必要かと思ってたけど、さすがだ、俺のハク!
この世界で唯一、湖に面している都市ホロウサは、岸に近い島々を巡る豪華なクルーズ船で有名だ。
預言者のおばばが住むイルー島へは小さな直行船しかないけど、いつかあのクルーズ船にも乗ってみたい。
イルー島への船は今日の午後乗れるとのこと。ナイスだな。まだ数時間あるけど、湖岸に行ってみた。
太陽の光で輝く湖面。
風が起こす穏やかな波。
遠くに見えるクルーズ船。
平和だな。
うーん、と身体をのばしてみる。
おばばに会うのが楽しみだ。




