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もう少し…なんて可愛いもんじゃなかった。
アマルガリタも合流してからの、皆の質問大会はとどまることを知らず、深夜を過ぎてからも熱い議論は続いていた。
タルスは相当博識の様子で、全く内容の違うそれぞれの質問に頷きながら、的確に回答していたようだ。さすが叡智を司る蒼のエルフ。知識は半端ないな。
しかし、驚いたのがユアンだ。初対面からほとんどしゃべらず無口な子だなと思っていたのに、一番話していたのは彼だったかも知れないと思うくらい質問に熱がこもり、顔を紅潮させていた。
参加するには話が難しかったので、俺は皆にそっと水を置いたり、キッチンと風呂をピカピカになるまで掃除をしていた。
うう…俺だって元の世界では大学3年生なんだぞ!専門が違うとはいえ、ハイレベル過ぎるだろこの学生たちは!!
マイルがようやく時間も遅いしと言ってくれ、俺は玄関からエルフふたりを送り出した。
アマルガリタは俺に笑顔を向けた。おばちゃんの笑顔は安心するな。
「エイト、連絡方法はムルーアから聞いているんだろ。何かあったらいつでも言ってきなよ。」
タルスも有意義な時間だったと微笑み、ふたりは夜の闇に消えるように去っていった。
ダイニングに戻ると、薬草茶を用意しているマイルと、テーブルに突っ伏している面々。さすがに疲れきったらしい。
「はい、皆これ飲んでから寝て。喉が楽になるから。」
そういうマイルの声もガラガラだ。いや、君たち話に熱中しすぎやろ。
お茶を飲んだ皆が「おやすみ…」とヨロヨロと部屋に帰っていく姿を見送る。明日は休みとはいえ、大変なことになってしまった。
「マイル、なんかえらいことになっちゃってごめん。」
マイルに頭を下げると、彼は恐縮したようにあわあわしながら言った。
「とんでもない!エルフと直接対話できるなんて、一生に一度あるかどうかですよ。僕も植物学についてたくさん質問できましたし。これってもう人生の財産です。皆もそう思ってます。」
そうか、そう言ってくれるなら良かった。
俺たちはおやすみを言って、部屋に戻った。
朝、日が高くなってもダイニングには誰も現れなかった。
あー、まだ起きられないか。
俺は人数分のサンドイッチを用意し、「食べてね」とメモを残してから道具屋へ向かった。
きれいにメンテナンスしてもらった旅の道具を引き取り、武器屋に回って剣を磨いてもらった。
剣や防具には聖女の加護がかかっているとはいえ、刀身や持ち手の部分の汚れは別問題だ。
ほんとは今日出発する予定だったけど、あの疲労でぐだぐだの学生たちを放ってもおけないし、しばらくとはいえ留守にするんだ。出る前に挨拶もしておきたいよな。
シェアハウスに戻ると、ジェリコが起きていた。
マイルはちょっと出かけたそうだ。
「エイトさん、サンドイッチありがとうございます。昨日はびっくりしましたよ、帰ったら伝説のエルフがふたりも居るんだもの!おかげで夕食なんて頭からすっかり飛んじゃってました。」
「ああ、びっくりさせたよな。ごめん。街でアマルガリタに会ったからさ。ちょっと来てもらってたんだ。」
ジェリコは昨夜のことを思い出すように、テーブルに頬杖ついて「しかし凄かったなー」と独りごちている。
彼らの勉強に役に立ったのなら良かった。そんなことになるとは予想外だったけど。
「あ、ジェリコ。明日からしばらく留守にするんだ。人に会う用があってさ。1週間くらいで帰ってくるんじゃないかな。」
帰ってくる、その自分の言葉に少し驚いた。俺はこのシェアハウスを自分の居場所だと思い始めている。
「えっ、そりゃ寂しいな。エイトさんが来てまだ数日なのに、俺もう何ヶ月も一緒に居るような気がしてますよ。じゃ今日は俺、エイトさんの夕食も作りますよ。」
「いやいや、いいよ。手間だろ。」
「ひとり分もふたり分も一緒ですよ。ん〜何にしようかな〜。なんかガッツリしたもんにしますかね?」
そう言ってにっ!と笑うジェリコにつられてこちらも笑顔になる。
皆が起きてきて、昨日の話をしながらサンドイッチを食べていた。
俺が明日からホロウサに行くという話をすると、メイリンは「お土産!」と言い、ジェリコに怒られていた。このふたり、ほんと良いコンビだよな。
ヒマリが俺の服の裾をちょいちょいと引いて、「昨日はありがと」と耳打ちしてきた。
ユアンは昨夜のことが嘘のように、何も言わず静かにお茶を飲んでいる。
皆、もうちょっと寝るとか、部屋で勉強するといい、ダイニングから去っていった。
俺はお茶を飲みながら、ホロウサに良いお土産あるといいな…とか考えていた。




