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夕方、突然エルフを連れて帰ってきた俺に、そこに居たヒマリとメイリン、マイルはびっくりしていた。
それはそうだろう。世界の神秘であるエルフと知り合いになることなんて普通はない。それが街頭でジュースを売るような、変わり者のぽっちゃりエルフだとしてもだ。
俺はアマルガリタに彼らを紹介し、マイルはさすがに驚きながらも、彼女にどうぞと椅子を勧めて、俺の友人としてもてなしてくれた。彼女はこのシェアハウスの内部と、ダイニングに集う面々に、興味深いような目を向けている。
「ところでエイト。あたしをここまで連れてきた用ってなんだい?何か見てもらいたいとかなんとかって。」
俺は、ヒマリに貸していたエルフの腕輪をアマルガリタに差し出した。
「これなんだ。王に貰った物のひとつだけど、ヒマリによるとテイムに関するものかもしれない。どういう物かを見て確認してもらいたいと思って。」
アマルガリタはそれを手に取ると、嬉しそうににぃっと笑った。
「へぇ、こりゃちょい懐かしいもんだね。まさしくこれはテイムの腕輪だよ。対象にかざしてキーワードを言えばそれを従えることができるんだ。」
ヒマリが興奮して叫ぶように言った。
「やっぱりね!ヒマリそうじゃないかと思ってたの。アマルガリタさん、ヒマリの研究ノート見てくれる?」
ヒマリはアマルガリタに図書室の本と、その本の文章について書かれたノートを差し出した。
そのヒマリのひたむきな遠慮の無さに、アマルガリタは優しい目を向けてから、ヒマリの手の中のノートを覗きこんだ。
「へぇ…面白いね。訳すだけじゃなくて、あんた独自の解釈も書いてある。人間の発想も興味深いもんだ。」
アマルガリタはヒマリをひたと見つめた。
「あんた、才能あるよ。ちょっと待ってな。」
アマルガリタは立ち上がり、ダイニングの隅の方に行ったかと思うと、突然なにやら唱え始めた。ファイエルの時とは違うが、やはり言葉というより旋律のような響きだ。
するとそこに水鏡のようなものが浮かび、その中からひとりのエルフが姿を現した。蒼のエルフの男性だ。
目の前の信じられない光景に皆言葉を失った。
俺もこんな、大掛かりな手品のような光景を見るのは初めてだ。驚いて固まってしまった。
アマルガリタはひとり愉快そうな顔だ。
「あっはっは!なんだいあんたたち。びっくりしちゃったのかい?」
彼女の大きな笑い声で、皆硬直していたのがふっと解けた。
「長…普通びっくりしますから。私だっていきなり召喚されてびっくりですよ。」
エルフの男性は穏やかに、しかし呆れたように言った。
「悪い悪い、タルス。ちょいとこの子のユニークな研究を見てやって欲しくてね。あんたがやっているエルフ魔術のアレンジ研究に役立つかもしれないよ。」
「もう……貴女は本当に自由人なんだから……」
タルスと呼ばれたエルフは、アマルガリタに呆れた視線を向けながらも、言われたままにヒマリのノートに目を通した。ふっと目を細める。
「なるほど…これは良きアイディアですね。我々エルフには考えつかなかったヒントですよ。」
彼はヒマリに笑顔を向けて、これについて意見交換をしたいと言い出した。
あ、なんかヒマリが真っ赤になってる。
分かる。間近でエルフの笑顔なんて攻撃力は相当だ。奴らはそんな自覚なんてこれっぽっちも無いけど。
「きゃあ、それって凄い!」「やったなヒマリ!よし、僕たちも聞こう!」メイリンとマイルも大興奮だ。
マイルはタルスにダイニングの椅子に座るよう勧め、彼らはタルスとヒマリを囲むようにして椅子を動かし、熱心に話を聞いていた。
アマルガリタはダイニングのテーブルに置いていた腕輪を、俺に渡して言った。
「これは、これからあんたに必要なものになるだろう。どんな動物だろうが魔獣だろうがテイムできる、強力な代物さ。ただしこれは一度しか使用できない。慎重に使うことさね。」
「アマルガリタ、いつもありがとう。」
俺は彼らの方を見た。熱っぽくタルスに質問していて、タルスも穏やかに答えている。
「彼を呼んでくれたのも感謝してる。彼らはこの地で勉強している学生たちでさ。いつも真剣に学んでいるんだ。」
「いいってことさ。タルスも楽しそうだ。あたしらには新しい刺激ってもんがあんまりないからね。」
アマルガルタは真剣な目を向けて俺に言った。
「前にも言ったろ?あたしはあんたが気に入ってるんだ。なんたってあんたは…」
「いやまたあの黒歴史のこと言う気だろ!もうやめて!!」
爆笑するアマルガリタと頭を抱える俺。
そこへジェリコとユアンが帰宅し、目の前の光景に固まり、マイルに声をかけられて議論に合流していた。
ふたりのエルフを囲んで議論が続く夜の時間はもう少し続きそうだ。




