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今朝は、講座が昼から2つだけだというメイリンと、講座が休みの日だというヒマリがダイニングでお茶していたのでおじゃました。
「いろんなものに興味があってまだひとつに絞れないの。初級講座を一度にたくさん取りすぎた気はするけど後悔したくないからね。」
ジェリコのお手製クッキーをひとつ取り、相変わらずの早口で話すメイリンに、おっとりと返事をするヒマリ。
「メイリンちゃんはそれで良いと思うのよ。ヒマリは今、エルフ魔術の初級と、エルフ語の中級しか取ってないけど、気分転換に、もうひとつくらい講座を取っておけば良かったなって思うもん。」
エルフに興味か。奴らとにかく美形揃いだもんな。
「ヒマリはエルフが好きなんだな。クラスでエルフファンクラブとかあったりするのか?」
俺の質問にヒマリは目を丸くして答えた。
「ファンクラブ?なんですかそれ?そんなことやってる人いるの?」
あー…いるっちゃいるんだよ。しかもかなり濃い奴らが……
「いや、ヒマリは気にしないでくれ。で、エルフの言葉はだいぶん読めるようになったのか?」
「んー、結構難しいよ。ヒマリもう1年くらい勉強してるけど読める文章はまだ少ないかな。でも今はこれを読もうと頑張ってる!」
ヒマリが出してきたのは、なにやらイラスト付きの本。
「図書室にあったのを借りてるの。エルフのアイテムがいろいろ載っていてね。この腕輪の文字なんて、たぶんテイム関係なんだよ。」
「へーヒマリはほんとに熱心だね。このエルフの腕輪にテイムの秘密がありそうなの?ちょっと見せて。私も興味出てきたわ。」
テイムってあれだよな。テイマーが動物を従える魔法みたいなやつ。
俺とメイリンはその本を覗きこむようにした。腕輪のイラストに文字が刻んであるようだ。メイリンは、ヒマリが開いて見せているそのイラストの文字部分を指先でなぞっている。
ん…あれ?こういうの、なんか見覚えあるぞ。
ふたりにちょっと待っててと言い、俺は部屋に戻ってバッグから腕輪を取り出した。白銀のエルフの王に貰ったもののひとつだ。
「ヒマリ。これ、ちょっと似てないか?」
腕輪をヒマリに手渡すと、彼女は目をまんまるに見開いた。
「えええ!エイトさん、これ似てる!同じようなエルフ文字が刻まれてる!?もしかしてこれ本物なの?」
「ああ、あるエルフから貰ったんだ。」
興奮したメイリンがヒマリの腕をがしっと掴んで、ぐらんぐらん揺さぶるようにしてる。
「凄い!ねえヒマリこの腕輪の文字読んでみてよ。なんて書いてあるの?やっぱりテイムについて?」
「ちょっとメイリン!そんな風にされたらヒマリ読めないよ〜。」
きゃあきゃあ言いながら腕輪を見ているふたりに、ちょっと出かけてくると言った。遅くならないうちに道具屋に行ってこなきゃ。
道具屋へ向かっていると、左手にある広場になにやら人だかりができている。
なんだろ?と覗きに行くと、そこにはなんと、蒼のエルフの長アマルガリタのジュースの屋台が!?
ええ〜アマルガリタ、こんなところで店を出しているとは!
彼女は叡智を司る蒼のエルフの長でありながら、自分の研究の反応を見るため、こうして屋台を出している。
俺が彼女と出会ったのとも、彼女がムユツミで屋台を出していたからだ。
「アマルガリタ!久しぶり。また屋台出してるのか。」
「ああ、エイトじゃないか。この街に居たのか。ちょうどいい、今忙しくてね。ちょいと手伝っておくれよ!」
相変わらずラピスラズリの髪をポニーテールにし、大きな声で笑うおばちゃんエルフことアマルガリタに、無理やり引っ張り込まれ、売り子をさせられた。
「あっはっは!エイト、悪いね!」
絶対悪いと思ってないだろ。
彼女の特製ブレンドジュースは大人気で夕方前には無くなった。ほんと美味いもんな。
あー疲れた。広場のベンチにふたりで座り、アマルガリタに貰ったジュースを飲む。ふぅ、相変わらず美味い。
「アマルガリタ。あの〜…あ〜なすびは元気か?きゅうりの調子はどう?」
我ながら変なことを言ってるみたいだ。
「あっはっは。いきなりなすびときゅうりの心配かい?なすびは相変わらず姫のペット兼おやつだろうよ。きゅうりはトレーニング中だよ。」
「えっ、トレーニングなんてできてるのか?あの凶暴なヤツが?」
あの、姫の癇癪でいきなりファイエルを襲ったきゅうりがか?
「ああ、紅のエルフたちが燃えててね。あのきゅうりの素早い触手攻撃から逃げられるのは紅の奴らだけだからね。交代でトレーニングに参加してるよ。姫は遊びだと思ってるけどね。」
俺は、姫に腕?をむしられ食べられていたサボテンのなすびと、きゅうりと名付けられた蔦というか、触手というかの植物モンスターを思い出していた。
あ……遠い目しちゃう。
「まあ、姫はあのきゅうりをテイムした、って感じなのかね。きゅうりは姫の言うことなら、ちゃんと聞くようになってきた感じだよ。」
ふーん、テイムか。あ…テイム!?
「アマルガリタ!ちょっと俺についてきてくれないか?見て欲しい物があるんだ。」
彼女はにぃと笑って言う。
「へぇ、ファイエルに続いて今度はあたしを連れ込もうってか。」
「だからその話はもうやめてってば!」
あの黒歴史をほじくり返すの、ほんと勘弁して欲しい。
道具屋は後回しだ。
日差しがゆっくり傾いてゆく中、俺は近況について話しながら、アマルガリタをシェアハウスに案内するのだった。




