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俺は冒険者ギルドで、ホロウサからの船便について確認してもらっていた。
このクヌルギから南に位置する都市のホロウサからしか、預言者のおばばがいるイルー島へは渡れないからだ。
「エイトさん、その船便は3日に一度ですね。予約は不要なので、その日に行けば乗れるようです。」
「そうか、ありがとう。じゃあ前に乗った時と変わりはないみたいだ。」
「そうなんですね。乗船時間も決まってますが、念の為、あちらのギルドまたは乗り場で確認してくださいね。」
受付のメリアにはすっかり覚えられてしまったようだ。まあことあるごとに質問に来てるからな。
「ところでエイトさん。冒険者登録証のポイントが溜まっているので、ポイントでも船に乗れますよ。その場合はホロウサのギルドでチケットに交換してください。」
「そうなんだ。いろいろありがとう。」
そうなのだ。この本の中の世界、何故か冒険者登録証にポイントが溜まるポイ活システムがあったりする。当然のように、俺の中にある勇者の記憶にもあるんだけど、そうは言ってもなんか違和感だよな。
道具屋でメンテナンスして貰っている旅の道具は明日午後にならないと引き取ることはできないし、今日は先に旅用の食材を仕入れておこう。
買い物が終わって店を出ようとした時、マイルにばったり会った。彼も今日は食材の買い出し日だったのか。
「あ、エイトさん。買い物ですか。もし今からハウスに戻られるなら、荷物を持って帰るのを手伝っていただけませんか?」
「もちろんいいよ。ひとりだと大変だろうし。」
俺はマイルの買い物に付き合い、彼が荷物を持つのを手伝った。俺のマジックバッグに入れて持ち帰ってもよかったけど、彼はそれをやんわりと断った。
「一度楽することを覚えちゃうとね。その癖が抜けなくなるから。もちろん今日みたいに手伝いを頼む日もあります。エイトさんが居たから、重たい物をたくさん買えましたよ。」
そう言って微笑むマイルに、俺は眩しいものを感じた。
大きなバッグをふたりで抱えて歩き、ハウスに戻ってキッチンの保管庫にしまっていった。確かに米やジャガイモ、玉ねぎなんかは一度にひとりで運ぶのは重いよな。
帰ってきたジェリコが俺たちを見て、作業を手伝ってくれた。保管庫の管理は彼が担当のようだ。それぞれの置き場所を指示してくれる。
片付いたので、ダイニングで皆でお茶を飲む。
雑談がてら、俺はマイルに尋ねてみた。
「マイルは植物を使った薬学をやっているといってたよね。どんな植物を使ってるんだ?」
「そうですね〜、教授にブームがあるのでその時々で変わりますが、今はサボテンですかね。フィルマルト国の教授と共同研究として、サボテンの薬効について検証してます。」
「…え?……サボテン?」
「ええ、サボテンです。フィルマルト王国には自然に生えていますが、この辺りではまず見ないですよね。僕の部屋には教授がくれたのが一鉢ありますけど。」
サボテン…あまり聞きたくない言葉だ。
どうしてもあの記憶が頭をよぎる。
「マイルはそのサボテンを食ったりしてないよな?」
「食べる?いいえ、そんな人いるんですか?サボテンを食べるなんて聞いたことないですけど……」
そうだよな、サボテンをむしって食うなんて人、普通はいないよな。普通は。
「食べるといえば、サボテンの中には水じゃなく、油のようなものを含んでいる種が見つかったんですよ。それをうまく栽培したら、動物の油より良いものが採れるようになるかもしれません。」
へー、サラダ油のようなもんかな。それだと確かに動物から採れるのよりヘルシーだ。
「マイル。その研究をやってみるべきだよ。たくさん採れるようになったら、販売すればいいんだし。」
俺がそう言うと、マイルは困ったような笑顔を見せた。
「うーん、損得じゃなくて、皆の役に立つようになるといいですよね。」
ああ…俺はなんて人間が小さいんだ。この人には絶対勝てない。そう思った。植物研究者というより、聖職者のほうが向いてるんじゃないか?
話を聞いていたジェリコが身を乗り出すようにして言った。
「マイル、それ採れるようになったら実験につき合わせてくれよ。ぜひ調理に使ってみたい。」
「いいけどさ、ジェリコがお腹壊しても責任持てないよ?」
そう、軽口を言い合うふたりを見ていると、俺も大学に戻ったらしっかり勉強しなきゃなと思えてきた。
俺は街の中央部にある温浴施設に行き、その近くの飲食店で夕食にした。
帰ってくる皆がキッチンを交代で使うんだ。勉強で疲れてるだろうから邪魔しちゃいけないしな。
道具を引き取ったらホロウサに向かおう。ハクに乗せてもらえば3日もかからないかな。
しかし俺のその予定は、翌日のある出来事のおかげですっかり変わってしまうのだった……




