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俺たちはダイニングテーブルを囲んで座っていた。
彼らは、このシェアハウスに住んでいる学生たちだ。
このクヌルギには大学のような学術施設がある。バルマス王国の都市には必ずあるものだ。
やたらと南北に長いこの国は、首都で勉強しようにも遠すぎて通えない人が多い。そのため各都市に施設を置き、現場の教授から学び、首都の大学からの遠隔の水晶スクリーンでも勉強することができる。
ここにいる学生たちは、家から通うには遠すぎて無理があるのでこのシェアハウスに住んでいるという訳だ。
「なるほど。エイトさんは冒険者としてずっと旅をしているのですね。」
俺の自己紹介が終わり、マイルが頷いて言った。
「では僕から最初に。改めて、僕はマイルといいます。植物を使った薬学の勉強を続けていて、最近は教授の手伝いもさせて貰っています。」
「マイルはね、ここに一番長くいるからリーダーみたいなものなの。あ、あたしはメイリン。当然学生よ。入学したばかりだから今はいろいろ講座を取っているの。でも今一番興味があるのは火魔法ね。」
「ユアンです。僕は工学科です。」
「ヒマリです。私はエルフの魔術に興味があって入学したの。今はエルフ文字を習ってます。」
「ジェリコです、よろしく。俺は農耕中心に研究しています。実家を継ぐのは決まってるんだけど、勉強はしとけって、親がさ。」
メイリンが口を挟む。早口でかなりおしゃべりなようだ。
「ジェリコはね、米粉を使ったお菓子をよく作るの。このテーブルに置いてあるのは彼が実験で作ったものだから食べていいのよ。」
「あ、でも食べたらそこのボックスにご寄附お願いします。米もタダじゃないので。」笑いながらジェリコが言う。
寄附と聞いたらクーリガルド思い出すな。ターラント様や聖女テレンツィアは元気にしてるだろうか。
「今夜は自己紹介だけですが、明日の夜にエイトさんの歓迎パーティーをしましょう。皆、17時には帰ってきてくださいね。」
マイルがそういうとメイリンがはしゃぐ。
「やったー!ジェリコのご飯楽しみ!」
「は?俺だけ作るの!?当然メイリンも手伝うの!」
「はぁ〜い。」とメイリン。
「ヒマリも手伝うね。」ヒマリも手を上げた。
ユアンは黙って頷いていた。無口な子なんだな。
「皆ありがとう、明日楽しみだな。」
シェアハウスの仲間として快く迎えてくれていることに、なんだかじーんとしてしまった。
その後、明日の準備や復習をするという皆は部屋に戻り、残ったマイルに共同生活のルールを教えてもらった。
共用部の掃除当番、食材の保管庫、風呂のことなどだ。
「俺はここにずっと居るわけじゃないし、ホロウサに行く用もあるので、掃除は居る日の昼間にしておくようにするよ。あのメッセージボードに書いておいたらいい?」
そう言うと、マイルはそれは助かります、とにっこりした。
大学が忙しいと言って家じゃ掃除は親任せだったが、元の世界に戻ったら、少しは親の手伝いもしなきゃな。
「食事は各自で用意しますが、学生は食材を安く買えるので、当番がまとめ買いをしています。エイトさんも保管庫の物を使うようでしたら、保管庫上のボックスにお金を入れてくださいね。ひと月分の30シルバーを入れてくださると助かります。」
もちろん使わせてもらうこともあるだろう。俺は二つ返事で早速入れた。
風呂は順番とのことだが、俺は昼間に温浴施設に行って入るから大丈夫と言っておいた。皆、少しでもゆっくり入りたいだろうからな。
「分からないことがあったら、誰にでも聞いてくださいね。あ、あと、誰とでもふたりきりになるような場合は、部屋ではなくこのダイニングでお願いします。客を迎える場合は、家族は問題ないですが、友人はふたりまでで静かにお願いします。」
なるほど、大事なことだ。俺は分かったと返事をした。そもそも連れてくるような友人などいないのがちと寂しいが。
聞くとマイルが最年長で23歳、あとは10代後半とのこと。そうだよな、あまりに若いと親もシェアハウス住まいは許さないだろう。
「また改めてゆっくり話をしたいですね。これからしばらく一緒に暮らすことになりますし、よろしくお願いします。」
穏やかに微笑むマイルに、再度こちらこそよろしくと言って、お互いの部屋に戻った。
「なあ、アド。ありがとな。」
『なんですか、エイト。いきなり』
「お前が家を買えなんて変なこと言ったけど、おかげでここに住むきっかけになったからさ。」
『変なことって…まあいいですよ。』
俺はベッドに寝転び、明日からの生活に思いを馳せるのだった。




